HoYoverseが新規IPとして2024年にリリースする予定の、完全新作ゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』。これまで提供してきたタイトルよりも大幅に“アクション要素”を強めている点が特徴で、アート・シナリオ面ではファンタジー色を薄めつつ近現代的なテイストに仕上げられています。
今回HoYoverseから、11月末にスタートした第2回クローズドベータテスト「吸音テスト」の招待を受けたので、『原神』『崩壊スターレイル』を毎日プレイしている筆者も参加してきました(崩壊3rdは未履修で申し訳ありません)。すでにイントロにおけるざっくりした第一印象については周知されつつあり、凝った世界観の説明については公式がHoYoLabに大量の情報を公開しているので、この記事では筆者自身の『ゼンレスゾーンゼロ』におけるプレイ体験のインプレッションや、『原神』『崩壊スターレイル』のプレイヤーが気になるところに切り込んで一挙にご紹介しようと思います。
忙しい方向けにまとめておくと、いわゆる“聖遺物”をはじめとするキャラ育成システムは『ゼンレスゾーンゼロ』でも健在。“樹脂”は「バッテリー」と名付けられており、シナリオ進行にも必要です。戦闘はかなり楽しく、過去作では満たせなかったアクション欲を充足させてくれました。個人的に、これまでとは全然違うテイストのシナリオもかなり気に入っています。
新エリー都にようこそ!
今回プレイヤー、もとい「プロキシ」が扮するのは、新エリー都の一角・六分街でレンタルビデオ屋「RANDOM PLAY」を営む兄妹です。大規模な侵食を伴う自然災害「ホロウ」の最前線になっているこの街では、それでもホロウ内での活動が行われています。しかし内部での活動には数々の制限が伴うため、内部環境への耐性を持った人員をサポートするプロキシが必要。レンタルビデオ屋の兄妹の裏の顔は、「インターノット」でその名を知らぬ者はいない凄腕プロキシ、「パエトーン」だった……というイントロになっています。
世界観やアートスタイルはHoYoverse過去作とは大きく方針転換が図られており、ファンタジー色を薄めて現代っぽいライトなテイストになっています。全体的にグラフィックの彩度が控えめになっている点が、かなり流行りを抑えた仕様で格好いいです。街並みは割と現代の日本そのもので、大都市圏の郊外のように雑居ビルが立ち並んでおり、路地裏では、室外機の上でくつろいでいる野良ネコを眺められます。
プレイしていて印象的だったのは、すさまじい量のイラストがゲーム内に使われていた点です。インターノットに掲載されている記事のサムネイルから、エリア内におけるポスター、さらに何といってもシナリオにおける大量のコミック風カットシーンには本当に驚かされました。
また、これまでHoYoverse産ゲームといえば3Dモデルが数パターンのモーションを順繰りに行って話す会話シーンがよく見られましたが、『ゼンレスゾーンゼロ』ではこの演出にも強力なテコ入れが図られています。もちろん3Dモデルの会話シーンも存在していますが、コマ割りされた画面に複数人が映りこむようにレイアウトされている点がポイント。身振り手振りのモーションもブラッシュアップされており、従来作よりもクオリティが高められています。
六分街で雑用、ホロウ内ですごろく、イベントマスで戦闘
ゼンレスゾーンゼロは、オープンワールドゲームではない点も大きな特徴かもしれません。古式ゆかしく、ミッションを自宅の「H.D.D.システム」で受注して進行していくスタイル。プロキシである主人公はホロウ内での荒事解決にあたって、ロボット的な「ボンプ」を用いて現地作業員に随伴します。他のプロキシとは異なり、このボンプに五感を憑依して操作するところが凄腕プロキシたる所以……なのですが、設定面については割愛。
なので、主なゲームの流れとしては会話・SNS等でミッション発生→H.D.D.システムでミッション受注→ホロウを探索→イベントマスで戦闘→ゴールしてクリアという感じ。ホロウの探索はすごろくのような、ボードゲームのようなスタイルで表現されている点が特徴的です。すごろくとは言いましたが、サイコロを振るような要素はなく、スティック操作でほぼ自由に動けます。
ホロウ探索は、正直に表現するとだいぶ大変です。序盤はマス目の数も多くなく楽ですが、進行度に伴って強烈に複雑なエリアを体験することもありました。ホロウを25分駆けずりまわって5分くらい戦ってクリア、みたいなミッションも存在。プレイヤーの体力をごっそり持っていきます。
しかも収集要素や隠しマス、ぱっと見ではすぐにクリアできないほどだいぶ凝ったギミック、満たすべきクリア条件など、ホロウにはプレイを煩雑にする知育要素のような仕掛けが盛りだくさんです。
筆者はかなりシナリオ要素にゲームプレイの主眼を置いていることもあり、正直、自分でプレイするとしたら初見でも攻略サイトや動画を眺めつつこなしていきたいかもな……と感じるレベル。戦闘シーンで体験するホロウ内部の様子はかなり素晴らしいのに、手間がかかりすぎる印象が拭えません。戦闘アクション目当てでこのゲームを始めた新規プレイヤーにとっては、このホロウ探索がネックになるかもしれないと感じます。
戦闘アクションはHoYoverse史上最高に超爽快!
ホロウ探索はちょっと大変ですが、「危」マスで体験することになる戦闘アクションは本当に素晴らしく楽しいです。一般的にこういう戦闘シーンは面倒なために避けたくなるものですが、もはや逆にストレス解消の清涼剤として機能しているレベル。ハイクオリティなモーションでキャラがグリグリ動きまくり、ヒットストップ重めの攻撃アクションで敵を薙ぎ払う快感は、『原神』や『崩壊3rd』とは一線を画しています。
あえて説明のために正式名称を使わずに表現すると、戦闘アクションは弱攻撃と強攻撃、必殺技の3種類のみです。弱攻撃連打でゲージをためると強攻撃が強化され、ゲージをためるとカットシーン付きの必殺技を発動可能。
さらにゼンレスゾーンゼロでの戦闘体験が素晴らしいのは、キャラ交代によるパリィ・ドッジができる点です。しかも攻防一体のアクションとして機能しており、敵の攻撃に合わせてキャラ交代「極限回避」を行うことで、交代先のキャラクターが強力な攻撃「連携スキル」を発動できます。戦闘ではまず敵の攻撃をパリィ・ドッジして連携スキルを発動し、属性が付与された通常攻撃で押しながら必殺技を狙っていく、という流れが強力でした。
ちなみに、必殺技ゲージが全員で共有されている点がユニーク。『原神』のように行秋、ベネット、香菱で元素爆発を使って……のような戦術はとれません。
シナリオはかなり好き。ローカライズは神
肝心のシナリオですが、筆者はプレイしていてだいぶ楽しく感じました。この記事では内容についてあえて触れませんが、過剰に陰鬱だったりキャラの動作が意味不明だったり、ライターのセンスを疑うようなわけのわからないセリフにイライラさせられることもなかった点が本当に好印象。キャラクターの個性も、みんなとても上手に表現されていると思いました。
筆者的にはやっぱり「ニコ」がお気に入り。初めて主人公と邂逅するグループ「邪兎屋」の親分を務めるピンク髪のキャラクターで、アウトローながらも邪兎屋メンバーのことを強く思う責任感の強さや、経済的に困窮しつつも仁義を通す誠実さがとっても魅力的でした。キャラクターボイスを務める芹澤優さんの明瞭な声による演技もぴったりはまっており、プレイヤーが初めて会うキャラとして的確な配置だったと思います。
また、シナリオを読んでいるとローカライズのクオリティが強烈に引き上げられていることをひしひしと感じられます。正直、HoYoverseが展開するゲームには日本語ローカライズのクオリティが「やや厳しい」から「だいぶ厳しい」くらいにまで該当するシーンが散見されるように感じていますが、ゼンレスゾーンゼロはトーンを統一しつつ、それでいてほぼ日本語ネイティブが書いたようなクオリティに近づいているとさえ感じました。テキストを読んでいても目が滑りにくく、読みやすくなっていると思えるはず。ストーリーテリングへの没入感が格段に高く、筆者が存外ゼンレスゾーンゼロのシナリオを気に入った要因の1つだと考えています。
ただ、懸念しているのは、今回体験できたコンテンツが「日本っぽい」エリアだったからなのかという点です。筆者は中国のゲーム会社が作ってくれる中国舞台のシナリオが大好物なのですが、どうしてもローカライズの品質問題が付きまとう印象。中途半端に日本語でも漢字を使えるために読めないワードを連発されたり、微妙にローカライズされて日本語ではありえないような固有名詞のネーミングが行われることもしばしば。ゼンレスゾーンゼロでは上手に取りまわしてほしい……! と強く念じています。
聖遺物・模擬宇宙「来ちゃった……。」でもデイリーは楽
次に、ゼンレスゾーンゼロにおけるデイリー・育成要素についても紹介しておきましょう。お詫びしておくと、この部分は『原神』『崩壊:スターレイル』をプレイしたことがないとだいぶわかりにくいかもしれません。
ゼンレスゾーンゼロでは、一般に言うスタミナとして「バッテリー」という概念が導入されています。プロキシが「H.D.D.システム」でホロウに入る際に使うボンプや、「VRゴーグル」の動作時に使う模様。メインミッションの進行にももちろんH.D.D.システムを使うので、ストーリーを進めるのにもスタミナが必要です。ちなみに六分街にあるコーヒーショップ「COFF CAFE」でコーヒーを飲むと、特殊効果と一緒にバッテリーを60回復できます。
要は、180あるバッテリーを使って各種リソースを確保していきたいというわけ。用途としてはメインミッション、サブミッションの進行に加えて、育成素材収集用ダンジョンにアクセスできる「VRゴーグル」と、いわゆる“聖遺物(後述します)”生成用素材収集用ダンジョン……であるところの「バトルラリー」が存在します。
このうち、「VRゴーグル」がかなり画期的。トレーニングメニューを自分で編集して任意の素材を集められるというもので、経験値素材やディニー(お金、“モラ”のことです)、キャラ突破素材、武器突破素材を自由に集められます。選んだ敵に応じて素材を選定でき、この時選んだ敵に応じてバッテリーの消費量も変化。つまり、バッテリー消費の多い強敵を選んでさくっと倒せば、一日分のバッテリー消費がかなり短時間で終わるというわけ。
また、HoYoverseがゲームシステムにおいて発明した画期的、かつ悪魔的システム“聖遺物”も例に漏れず、ゼンレスゾーンゼロに登場しています。ゼンレスゾーンゼロではその名も「ドライバディスク」と命名されており、6スロットを用意。2点セット・4点セットの発動効果を駆使して、キャラクターの性能を引き上げていくことになります。
ドライバディスクは「バトルラリー」をクリアすると共通の素材アイテムが入手でき、これをCDショップ「吟遊ニードル」に持っていくことで入手可能です。6スロットありますが、『崩壊:スターレイル』における“次元界オーナメント”のようなものは存在しておらず、共通で6スロット分が出現する模様。
今回ゼンレスゾーンゼロでドライバディスク周りの育成を体験していて、ドライバディスクの生成素材と育成素材が共通している点が困りました。序盤のシビアな育成リソースでドライバディスクをレベル上げすると、厳選に回す分はほぼなくなってしまうので、メインオプションだけ狙うのが精一杯。おそらく素材収集→ドライバディスク生成→ハズレを分解→育成に回す、のようなフローが最適になるものとみています。
また、ドライバディスクは部位によってデザインに変化がなく、ぱっと見でどの部位のドライバディスクなのかわかりにくいのも不便でした。一応どのスロットかわかるように模式化されたアイコンがついていますが、『原神』等と比べれば全然わからないです。装着画面ではいちいちひとつ前の画面に戻る必要があり、UIもまだ洗練されていない印象です。
さらに、『崩壊:スターレイル』ではおなじみの“模擬宇宙”のようなものがゼンレスゾーンゼロにも「零号ホロウ」として登場。入場にあたってバッテリーは必要ありませんが、面倒なホロウの探索とややこしいギミックに対処しつつ、特殊効果「レゾプレム」のよくわからない説明書きも相まって慣れるまでは苦労しそう。“模擬宇宙”よりも入り口がだいぶわかりにくく、見落とすこともありそうだと思いました。“次元界オーナメント”もないので、プレイヤーにクリアさせるための動機付けも弱く感じます。
他にも、スキル素材が日替わりの店売りだったりしていてこれも厄介なのですが、全部紹介すると果てしなくなるので割愛。育成周りのシステムは『原神』や『崩壊:スターレイル』をだいたい踏襲してはいるのですが、HoYoverseタイトル新規プレイヤーも含めて、一度HoYoLabのナレッジベースに目を通しておいたほうがスムーズだと思います。
HoYoLAB - プレイヤーコミュニティ
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『ゼンレスゾーンゼロ』正式ローンチが楽しみ。CBT「吸音テスト」概観
ここまで『ゼンレスゾーンゼロ』の各要素について、かんたんに紹介してきた本記事。最後にこのクローズドベータテスト「吸音テスト」そのものについて振り返りたいと思います。
さすがHoYoverseというべきか、ログイン時間ぴったりに参加しても全く安定感を損ねないサーバーに感動して始まったこのベータテスト。紹介用に素材を収集しつつプレイし続けていて感じたのは、信じられないほどのコンテンツ量の多さでした。正確に計測したわけではありませんが、体感でいうと『原神』の璃月編まではゆうにクリアできるほどのボリューム感。いわゆる伝説任務のようなキャラストーリーも用意されている大盤振る舞いでした。
これがバージョン1.0なのか、1.1くらいある? と思わされたほど。しかも期間限定イベントもドンドン開催されており、おそらく1.0のローンチを丸ごと先行体験するものだったのではと推測しています。筆者は『原神』の“魔神任務”そっちのけでCBT実装分を駆け抜けました。
また、ベータテストでたくさんのキャラを体験してほしい! というポジティブな運営理念が存分に発揮されていた点も本当に好印象。ガチャ石の配布も精力的に行われたほか(課金機能は無効化されていました)、なんとキャラクター・モチーフ武器の開放アイテムも配布しまくる太っ腹運営。ありがたかったのですが、正直いうと育成リソースのほうが足りなくなる始末だったので、バッテリーもあわせて配布してほしかったです。
莫大なコンテンツを浴びるように堪能できた、クローズドベータ「吸音テスト」。進行度含めて全データの削除が本当に惜しく感じるほどで(当然消されるべきなのですが)、それはそれとして再び初めからプレイするのも楽しみ。基本プレイ無料、モバイルデバイスとWindows、PlayStaiton 5向けの提供が2024年に予定されている『ゼンレスゾーンゼロ』、正式リリースが待ちきれません。