シャープと東北大学は12月19日、大規模な物流倉庫ではたらく自動搬送ロボットの最適経路を瞬時に計算する、高速計算機の開発に取り組むと共同で発表。量子コンピューティング技術の一種を応用するもので、2024年度中に試作機を用いた実証実験を行い、2025年度中の実用化をめざす。

  • 自動搬送ロボットの多台数同時制御のイメージ

物流業界では、ネット通販などEC(電子商取引)の拡大等を背景に、取り扱い量や品種が増加。さらに、物流・運送業界をとりまく「2024年問題」によって人手不足の深刻化も見込まれ、より多くの台数の自動搬送ロボットを活用した省人化・効率化へのニーズが急速に高まっている。

一般的に、自動搬送ロボットが一台増えると、最適経路の計算量は指数関数的に増大する。1,000台規模を一元管理するための計算には数日を要してしまうため、実用化は困難だった。

今回開発を目指す高速計算機では、量子コンピューティング技術の一種である量子アニーリングの計算方法を、汎用コンピューター上で疑似的に再現する「シミュレーテッド量子アニーリング」(SQA)技術を応用。汎用コンピューターによる通常の処理と比べて数百から数千倍速く計算でき、1,000台規模の自動搬送ロボットの最適経路も瞬時に計算。大規模倉庫における自動搬送ロボットの多台数同時制御を追求し、さらにピッキングの順序や商品配置、倉庫全体のレイアウト設計などにも応用することで、倉庫運営効率の大幅な向上に寄与するとしている。

シャープでは20年以上前から、自社および他社の生産設備の開発で培った技術をベースとした自動搬送ロボットの開発を手がけており、独自の集中制御システム「AOS(AGV Operating System)」で最大500台までの自動搬送ロボットの同時制御を実現済み。

東北大学は、膨大な組み合わせパターンから最適解を高速で導き出すのに適した計算技術である量子アニーリングをはじめ、量子コンピューティング分野における有数の研究・教育機関として、さまざまな社会課題解決に向けた実装化への取り組みを推進している。

今回、両者の強みを融合することで、物流倉庫での生産性向上に寄与する技術を共同開発することで合意。東北大学からは量子アニーリングの応用技術や、計算高速化技術に関する知見を提供し、シャープが自動搬送ロボット制御システムへの量子アニーリング技術の実装と、実機試験を行う。