子どもから大人まで、多くの人を魅了してやまない「恐竜」。かつて地球上に存在したこの生き物を大きく取り上げたイベント『恐竜ミュージアム ―科学で紐解く恐竜の世界―』が、「ソニーストア 名古屋」で10月7日からスタートします。

  • ゴルゴサウルスの全身骨格標本の前で説明する“恐竜くん”こと⽥中真⼠⽒。「ソニーストア 名古屋」の報道陣向け内覧会にて

全長7m・高さ3mにも及ぶ巨大な恐竜「ルース」の全身骨格など計20点の骨格標本や、最新の研究結果に基づくCG映像を展示するほか、さまざまなワークショップ(事前申込制)も用意。入場無料です。

開催に先がけて報道陣向けに展示内容を先行公開するということで、ソニーマーケティングから招待を受けて取材してきました。イベントの見どころや注目ポイントをのちほどじっくりお伝えします。

なお、今回は報道陣向けに写真・動画撮影が許可されたほか、展示物に触れて説明している様子を写した写真が一部ありますが、一般の来場者は撮影や手を触れることが禁止されている展示が数多くあることをあらかじめお伝えしておきます。

  • 『恐竜ミュージアム』の特設コーナー

  • ゴルゴサウルス「ルース」の展示。世界で初めて脳腫瘍の痕跡が確認され、全身にわたる激しいけがや病気による変形の痕が数多く発見された希少な個体だ

  • ソニーの「空間再現ディスプレイ」を使った、3DCGモデルの恐竜3体の展示

  • 幼いトリケラトプスの全⾝⾻格を再現した標本(手前)

会場は名古屋市の中心部、栄にある商業施設「BINO栄」(東山線・名城線「栄駅」直結)の3階「ソニーストア 名古屋」で、営業時間は11時~19時。開催初日の10月7日のみ、開店時間が11時30分となります。恐竜ミュージアムの内容は以下の通り。

  • 骨格標本展示:ゴルゴサウルス全身骨格標本など 約20点展示
  • 映像展示:
    • 白亜紀体験シアター(CG映像約3分間上映/使用機材:ソニー「Crystal LED」)
    • 3DCGモデル3体展示(使用機材:ソニー「空間再現ディスプレイ」)
  • ワークショップ(会期中の土日祝日に開催、参加無料・事前申込制)

初日の10月7日にはイベントの企画・監修に携わった、“恐竜くん”ことサイエンスコミュニケーター・恐竜イラストレーターの田中真士氏によるトークショーも予定されていますが、こちらは満席のため参加募集終了となっていることにご注意ください。

なお会期中は、店内からルースの夜間ライトアップを行い、栄交差点からそのシルエットが見られるそうです(毎日20時~翌8時まで)。

  • 栄交差点から見るBINO栄。ソニーロゴが見える3階部分が「ソニーストア 名古屋」

  • BINO栄の入口。NiziUとソニーのワイヤレスイヤホン「LinkBuds S」のコラボビジュアルが目印

  • 会期中、ルースの夜間ライトアップを店内から実施。全身のシルエットを栄交差点から見られる(毎日20時~翌8時まで)

ワークショップでは、木製のハンマーとノミを使って石膏プレートに埋められた化石の発掘体験ができる「トレジャーハンター」、恐竜の実物化石を封入したガラスボトルを作れる「ダイナソーボトル」、ソニーのカメラで骨格標本や店内の様子を動画撮影して恐竜ミュージアムのCM制作を体験できる催しが、会期中の土日祝日に開催されます。参加費は無料。事前申込制のため、詳細はソニーストア 名古屋のWebサイトを確認してみてください。

  • 「トレジャーハンター」の体験コーナー

  • ノミとハンマーで化石発掘を体験

  • 「ダイナソーボトル」の作成例

  • ボトル作成の様子

  • ルースを撮影してCM制作を体験。用意されるのはソニーのVLOGCAM「ZV-E10」

全身ボロボロの恐竜「ルース」に何が? ナゾを解くカギは「頭」にあった

「恐⻯ミュージアム」は既報の通り、白亜紀末期に息づいていた恐⻯たちの骨格標本を展示するだけでなく、生き物として科学的視点でとらえ、恐⻯たちの世界を精緻に再現したCG映像や3DCGモデルを使って紹介。「今までにない恐⻯×体験型エデュテインメント(教育+エンタテインメント)」と位置づけています。

  • 「ルース」の全身骨格標本の見どころを紹介する“恐竜くん”

“恐竜くん”ことサイエンスコミュニケーター・恐竜イラストレーターの田中真士氏は、ソニーグループ9社が結集して2021年にパシフィコ横浜で開催したイベント『DinoScience 恐竜科学博』からソニーの恐竜イベントに携わってきており、“理想の恐竜展”を目指した同イベントのエッセンスを抜き出して今回の『恐竜ミュージアム』を企画・監修したとのこと。

  • “恐竜くん”こと田中真士氏のプロフィール

最大の注目展示は、巨大なゴルゴサウルスの全身骨格標本。通常は失われやすい小さな指先や尾の先端部なども含めて、高い完成度で発見された貴重な標本ということですが、実は世界で初めて脳腫瘍の痕跡が確認され、全身にわたる激しいけがや病気による変形の痕が数多く発見されたことでも知られているそうで、その希少性の高さがうかがえます。「ルース」の愛称で呼ばれているこの標本は、前出の「DinoScience 恐⻯科学博」で既に公開されており、今回初めてソニーストア 名古屋の店内に“襲来”しました。

もっとも、それほど恐竜に詳しくない人にとって、ゴルゴサウルスは聞き慣れない名前だと思います(このレポートを執筆している筆者も初めて聞いた名前です)。どんな種類なのか、恐竜くんの解説に耳を傾けてみましょう。

「ものすごくざっくり言うと、有名なティラノサウルスの親戚で、同じグループの恐竜。ティラノサウルスがライオンであるなら、ゴルゴサウスはチーターみたいな非常に近い関係で、より小型でスリムな分、スピードに特化した恐竜です。足がとてもすらっと長く、重さ数トン以上にもなる大型の肉食恐竜タイプの中ではおそらく最も足が速い、パワーとスピードを両立したような存在。ビジュアル的にも本当にシュッとスリムで、個人的には一番造形が美しい恐竜なんじゃないかなと思います」(恐竜くん)

  • ゴルゴサウルスの解説コーナー。「おそらく相当恐竜が好きな人でないと、なかなかピンと来ないと思う」と“恐竜くん”は話す

  • ティラノサウルスの“親戚”にあたるゴルゴサウルス。いわれてみれば確かに、横顔の雰囲気が似ている

重量級の肉食恐竜がケガをしていること自体は珍しくないそうですが、聞けば聞くほど生前の姿はボロボロであったことが分かってきます。なぜそんな姿であったのか、そのナゾを解くカギは頭骨の中に奇跡的に残った、脳幹にほど近い「小脳」にある、と恐竜くんは指摘しました。小脳は平衡感覚やバランス感覚を保つ役割を果たしますが、ここにクルミ〜ゴルフボール大の腫瘍があり、まっすぐ立ったり、歩いたりすることが困難な状態でフラフラしながら生きていたのではないか、と分析しているそうです。

恐竜くんの説明は大変分かりやすく、初めてゴルゴサウルスの全身骨格を目の当たりにした筆者も、ここでさまざまな学びを得ることができました。以下、写真とキャプションで紹介します。

  • 恐竜の化石は断片的にしか見つからないことが多いが、ルースはほぼすべての骨が完全に近い状態で残っていた、奇跡的な化石なのだという。下あごの先端部分の骨はただれたような状態になっていて、「おそらく何らかのケガだったり、細菌感染が原因でやられてしまった痕だと考えられる」とのこと

  • 細長い肩甲骨。本来は薄くてツルツルの骨だそうだが、ルースの場合は誰が見てもひと目でわかるほど骨が変形して大きく膨れ、おかしな状態になっている

  • 近くに寄ってみてみると、本当に痛々しく見える。現在は研究の現場で積極的にCTスキャンを行っており、この化石もスキャンしてみたところ、中で1回完全に骨折し、それが治っていく過程で大きなコブ状の形に膨れてしまったことが分かったという

  • 尻尾の骨(尾骨)にも骨折と治癒の痕が見えるとのこと。2本の骨がくっついてしまっているのだそう

  • 腓骨(ひこつ)という、すねの細い方の骨も変形して折れ曲がって飛び出している

  • 近づいてみてみると、中央左のあたりの骨の形状が正常でないように見える。「おそらく生きていたときは、本当に外に骨が飛び出すような状態になっていたと考えられる」(恐竜くん)

  • 大腿骨(だいたいこつ)の上外方にある突起、大転子(だいてんし)を外す恐竜くん。解説用にあえて取り外せるようにしているそうだ

  • 大転子は、体を支えるための重要な筋肉がついているはずの骨ということだが、外れてしまってほとんど治癒した痕跡がなく、このままの状態で発見された……つまり、大ケガを負ってからそれほど時間がたたないうちに死亡したことが分かるという

  • なぜこれほどボロボロなのか、その理由は脳にできてしまった腫瘍が影響しているのではないか、と説明する恐竜くん

細部にこだわった3DCG恐竜映像、見どころが満載

今回の『恐竜ミュージアム』は副題に「科学で紐解く恐竜の世界」と冠しているとおり、恐竜の姿を誇張することなく、現代の科学的知見に基づいて描き出すことを大事にしている点に注目です。

たとえば、ソニーストア 名古屋に入ってすぐの特設エリア奥にある、110型フルHD画面の「Crystal LED」(型番:ZRD-CH12D)では、恐竜たちが地球上を支配していた白亜紀の様子を描いたCG映像(約3分間)が上映されています。

  • 110型フルHD画面の「Crystal LED」を使った白亜紀体験シアター

そこではダイナミックなカメラアングルとともに多彩な恐竜たちが登場しますが、彼らの動き方からまばたき、皮膚のシワ、背景として映り込む平原や森林の植生にいたるまで、「細部のすべてのディテールに至るまで手を抜かずに作った」(恐竜くん)というこだわりぶり。「恐竜のCG映像としては、現時点で世界最高のものになっていると断言できる」(同)と仕上がりに自信を見せました。

  • 急峻な崖を駆け上がり、大草原を飛び越えて森林地帯へ。疾走感ある映像だが、一瞬の描写にもこだわって作り込んでいるという

  • トリケラトプスの親子連れを狙う、ラプトルと呼ばれる小型の恐竜たち。このあと襲ってくるティラノサウルスの動きを事前に察知して一目散に逃げるのだが、ラプトルは現在の鳥類に近い鋭敏な感覚を持っていたと考えられており、それを再現したのだという。一方、トリケラトプス親子は聴覚や方向感覚が鈍いという研究結果を踏まえ、この映像でも反応が遅いように描かれている

  • ティラノサウルスが画面奥から獲物(親トリケラトプス)に襲いかかるシーン。映画などでは大見得を切って吠えてから襲いかかる描写が少なくないが、吠えるのは威嚇行為、つまり追い払う行為であって襲う方がやることではなく、「動物の行動から考えて不自然な行為」なのだそうだ。無言でいきなり襲いかかる一瞬のシーンも、きっちり作り込んだことがうかがえる

  • ティラノサウルスと親トリケラトプスの戦いは、近くで偶然倒れた樹木によって気をそらされ、流血沙汰にならずに終了。親子は仲間のトリケラトプスたちと無事に合流する。「野生動物は想像以上に臆病で慎重。まわりの風景が急に変わったり、大きな音が立ったりというのはとても苦手で、あれ(倒木)が起こったことによって落とし所がうまくついたので、ティラノサウルスが自然に去って行った」(恐竜くん)という流れに仕上げている

  • 映像解説をする恐竜くん。Crystal LEDの画面にフチがなく、大きな映像だけが自然と浮かんでいるように見える点も注目

また、Crystal LEDによる体験シアターの脇には、27型4K画面を搭載したソニーの「空間再現ディスプレイ」(型番:ELF-SR2)が3台用意されています。ここでは3DCGモデルの恐竜3体の展示が行われており、メジャーな恐竜である「ティラノサウルス」、「トリケラトプス」と、恐竜のなかでもかなり繁栄した種類である「エドモントサウルス」(ただし、子どもにはあまり人気がないそう)の3体を、上下左右からじっくり眺められます。

  • ソニーの27型4K「空間再現ディスプレイ」(ELF-SR2)

空間再現ディスプレイは、ユーザーが頭を前後左右に動かしても、見ている場所に合わせた映像表示をリアルタイムで行える点が、一般的なディスプレイとの大きな違いです。技術的な説明は製品発表時のニュース記事に譲り、ここでは実際に恐竜たちがどのように見えるかを、以下の動画でチェックしてみてください。

会場にはこの他にも、幼いトリケラトプスの全身骨格を最新の研究を踏まえて“復元”した標本や、ティラノサウルスの頭骨の実物など、東海初公開を含む計20点の骨格標本が展示されており、それぞれの見どころを恐竜くん自ら紹介していました。

  • ティラノサウルスの頭骨の展示

  • エドモントサウルスの頭骨。この恐竜は、巨大な群れを率いて移動しながら生きていたと考えられている

  • トリケラトプスの子どもの頭骨を再現した展示も

  • エドモントサウルスの皮膚の化石展示も。ティラノサウルスの歯形が残ったものもある

  • 子どものトリケラトプスの全身骨格は、実は存在しないそうで、最新の科学的知見に基づいて“復元”した標本なのだという

  • ピョンと跳ねているように見える可愛らしい姿だが、ワニに下から襲われてあわてて逃げた姿勢を模した展示になっている

  • 過去のイベントでは、ワニに襲われている様子をイメージした展示が行われていたようだ

  • 「スタン」というあだ名のついた、ティラノサウルスの頭骨標本。噛む力が強いことや、歯並びが悪いことで知られているが、実は1本の歯につき2年以上もかけて大きく育てているのだという

  • 噛む力の強さゆえに、上あごに歯が貫通していた痕があることを示す恐竜くん

  • 首を骨折した痕や、別のティラノサウルスに噛まれた痕も残っている。同種同士で激しく争ったり、場合によっては共食いしたりという習性があるようだ

  • 一部の穴はケガではなく、感染症などの病気によって骨にまで達してしまったものだという

  • ティラノサウルスという恐竜は、研究が進めば進むほど、とても恐ろしい生き物だということが判明しているそうだ

「恐竜がいた世界と地球を知り、持続可能な社会を考えるきっかけに」

報道関係者向けの内覧会では冒頭、ソニーストア 名古屋をはじめとする、「ソニーストア」を担当しているソニーマーケティング リテールセールス&マーケティング本部 本部⻑の新宮俊⼀氏が挨拶。「長くソニーに勤めているが、恐竜をバックに話をするのは当然ながら初めてだ」と前置きし、「ソニー」と「恐竜」の関係性や、企画のねらいなどについて説明しました。

  • ソニーマーケティング リテールセールス&マーケティング本部 本部⻑の新宮俊⼀氏

国内の大手電機メーカーでは数少ない、全国主要都市に実店舗の直営店を展開するソニー。同社は祖業であるオーディオ・ビジュアル機器をはじめ、デジタルカメラを含むエレクトロニクス製品だけでなく、映画や音楽といったコンテンツ、金融までさまざまな事業を展開しており、それら各事業から生まれた製品・サービスと消費者をつなぐ役割を果たしているのがソニーストアです。

ソニーは2019年から「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」を存在意義(Purpose)として掲げており、さらに長期環境計画「Road to Zero」のもと、2050年までに環境負荷をゼロにすることも目指しています。はるか昔、陸上の覇者であった「恐竜」を科学とテクノロジーのチカラで再現し、現代に生きる我々が体験したり学んだりできるようにすることも、ソニーの企業活動にとって必要なピースだと考えているようです。

実際、新宮氏は次のようにソニーと恐竜の関係について語っています。

「恐竜はこの地球上、私たちが今立っている地球のこの場所にもかつていた、我々の大先輩にあたる生き物だが、残念ながら今は見られない。(ソニーを含む)我々人類が持つ科学技術、英知や知恵を結集して、リアルな存在として再現、再構築し、恐竜が生きていた様子を感じられるようにすることで、皆が大きなワクワクや感動を覚えるはず。そこでソニーが届けたい『感動』と、恐竜という存在がたくさんの人に与える『感動』が結びつくのだと思う」(新宮氏)

ソニーストア 名古屋には、同社のさまざまなAV機器やデジタルカメラなどの製品が多数用意されていますが、今回のイベントではそういった製品を通じて、恐竜をリアルかつ鮮明に感じられる仕掛けがふんだんに盛り込まれていると感じました。筆者は取材やプライベートでソニーストア 銀座を訪れる機会が多いのですが、恐竜の全身骨格標本を店内に“招き入れる”ほど、ここまで気合いの入ったイベントは初めて見た気がします。この企画を実現したソニーストア 名古屋を気軽に訪れられる東海エリアの人々がちょっと羨ましいです。

新宮氏は最後に、「ソニーの技術を使って再構築された、我々の先輩である恐竜の世界、かつての地球を多くの来場者に感じてもらいたい。そして持続可能な社会について、皆が考えるきっかけになってもらえたら本当に嬉しい」とも語っていました。イベントの会期は10月22日までと比較的短いですが、名古屋を訪れる機会がある人は、ぜひ訪問先のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。

  • 左から恐⻯くん(⽥中真⼠⽒)、ソニーマーケティングの新宮俊⼀氏