2023年9月21日から24日までの4日間(21日、22日はビジネスデイ、23日、24日は一般公開日)、幕張メッセにて「東京ゲームショウ(TGS2023)」が開催されました。

今年は9~11ホール、イベントホールまで、幕張メッセ全館を利用。昨年のような小学生以下の入場制限はなく、コスプレエリアやファミリーゲームパークも復活しました。

  • 久々のフル開催となったTGS2023

一般公開日に残る海外出展社が増加?

出展社数は過去最大。44の国と地域から787の企業や団体が参加しています。会場の大きさは以前フル開催していたときと変わらないうえ、大手企業は相変わらず広い面積を使ってブースを出展していたので、細かいブースの数が増えたと言えます。

とりわけ、海外からの出展が増加。これまでの海外出展社は、ビジネスソリューションのコーナーで展示することが多く、ビジネスデイが終わると撤収するメーカーがほとんどでした。

しかし、今年は半数くらいのブースが一般公開日にも残っており、このあたりもちょっと変わった印象です。円安で予算に余裕が出て、出展日を伸ばしたのでしょうか。それとも日本のパブリッシャーだけに頼らず、自らユーザーへの接触をはかろうとしたのでしょうか。どちらにせよ、海外タイトルが日本でますます展開されていきそうな予感がしました。

  • ビジネスソリューションコーナーに出展していたマレーシアブース。一般公開日も残っていました

大型タイトルの出展多数、整理券がすぐ配布終了になった試遊も

今年は「何が何でも見ておきたい」キラータイトルがなく、大手メーカーのメインタイトルがそれぞれ人気を博した状態と言えました。

カプコンは『ストリートファイター6』や『ドラゴンズ ドグマ』、KONAMIは『メタルギアソリッド マスターズコレクション Vol.1』、セガは『龍が如く7 外伝』『龍が如く8』、バンダイナムコゲームスは『鉄拳8』、スクウェア・エニックスは『FINAL FANTASY VII REBIRTH(ファイナルファンタジーVII リバース)』などのFFシリーズ、コーエーテクモゲームスは『三國志8 Remake』や『信長の野望』など歴史シミュレーションなどに人が集まっていました。

  • バンダイナムコブースには、『鉄拳8』の新キャラクター「パンダ」の発表と共に巨大パンダ像が出現。風間仁とシャオユウは、コスプレしたモデルさんです

  • セガブース『龍が如く7 外伝』には、セクシーな“生キャバ嬢”たちの姿も

  • 『三國志』シリーズをはじめ、さまざまなタイトルを展示していたコーエーテクモブース

  • TGSには久々のブース出展となったレベルファイブ

  • 大型モニターがブースの至るところに配置されたスクウェア・エニックスブース

人気は分散したものの、一般公開日には、開場早々プレイアブルの整理券がなくなるタイトルもありました。大手ブースの広いスペースでも、各社複数タイトルを展示しており、人気のタイトルの試遊待ち時間は軒並み1時間オーバー。幕張メッセをフルに使っているものの、もはや来場者の数に対して会場が狭いと言えるかもしれません。

ソニー、MS、任天堂のハードメーカーは軒並み出展していませんでしたが、その影響か、そもそも業界的に移行が進んでいるのか、PCゲームが存在感を高めていました。

大手メーカーのメインどころのタイトルでも、コンシューマ専用タイトルではなく、PC版をリリースするものが多く、PCをプラットフォームの選択肢の1つに加えることが当たり前になりつつあるでしょう。

モバイル系も活況です。Google Playが出展しているほか、各メーカーブースでもモバイルタイトルが目立ちました。ゲームにおいて、プラットフォームは以前ほど大きな意味は持たなくなってきたのかもしれません。

  • 唯一のプラットフォーマーと言えるGoogle Play。他社を巻き込んで、スタンプラリーをやっており、8カ所以上スタンプを押してもらうと豪華景品が当たるゲームにチャレンジできました

PCメーカーの試遊で多かった『ストリートファイター6』

また、PC系の展示ブースの多くが試遊タイトルとして『ストリートファイター6』を採用しているのも驚きでした。試遊するのに適した短時間の対戦、スペックの良さを体感できる仕様など、PCやその周辺機器を試すのに最適なタイトルの1つではあることはわかります。

しかし、これまで対戦格闘ゲームは、廃れたジャンルと言われ、覇権ジャンルからほど遠い存在だっただけに、『ストリートファイター6』の人気の高さがうかがえます。

カプコンブースに展示してあった『ストリートファイター6』では、新キャラクター「A.K.I.」を先行試遊することができました。TGS時点では未実装のキャラクターとはいえ、ゲームは発売されていますし、ほかに発売前のタイトルが綺羅星のごとく並ぶ会場において、ビジネスデイで60分待ち、一般公開日で120分待ちを記録することは、異常事態だと言えます。

  • サムスンブースのステージでは女性プレイヤーが『スト6』で対戦するイベントを開催

  • インテルブースでは、『スト6』のオフラインコミュニティイベント「Fighters Crossover」のTGS出張版を開催

復活したファミリーゲームパークとコスプレも盛況

4年ぶりに復活したのは、ファミリーゲームパークとコスプレエリア。小さい子ども向けのファミリーコーナーは、TGS全体と比較するとかなり人口密度低めですが、それでもオープンを待つ列ができていましたし、子どもに人気のストリーマーが登壇するステージは大盛況でした。子どもが1日中楽しめるスペースとしては、やはり重要度が高いと感じます。メーカーとしても、子どものころから自社のゲームに親しんでもらえるきっかけとなるので、復活して良かったコーナーです。

コスプレコーナーも大盛況でした。9ホールにはクロークと更衣室を用意し、9ホール脇の広場で撮影などを楽しめます。コスプレは海外でも人気が高く、ゲームメーカーがイベントで公式コスプレイヤーとして採用することも増えています。復活を望んでいた人も多かったでしょう。

  • ファミリーコーナーが復活。たくさんの親子が訪れていました

  • 9ホール脇の広場。コスプレイヤーの撮影スポットとなっており、コスプレイヤーとカメラマンがごった返していました

「ゲームを観る文化」定着の象徴か、参加型eスポーツ大会は復活ならず

残念ながら、今年復活しなかったのはeスポーツのステージ「eスポーツX(クロス)」でした。TGSといえば、過去には『ストリートファイター』シリーズの公式大会「Capcom Pro Tour ジャパンプレミア」や、『鉄拳』シリーズの公式大会などがありました。どちらもオープン大会で、多くの人が参加していました。

その代わりと言えるかわかりませんが、今年は、招待されたストリーマーやコスプレイヤーたちと、プロゲーマーのみが参加できる『ストリートファイター6』のインビテーショナルイベント「TGS2023×CR CUP」がイベントホールにて実施されました。

大会に参加するだけでなく、観戦する文化が根付いた証拠でもあるので、これはうれしいところですが、やはり参加型がなくなってしまったのは残念です。「Capcom Pro Tour ジャパンプレミア」は、プロツアーの中でも大きな大会だったので、海外からの強豪も参加しており、そのハイレベルな戦いを間近で観られる機会が減ってしまいました。

「CR CUP」を観ていて感じたのは、出場メンバーの本気度です。プロゲーマーをコーチに迎えたストリーマーやコスプレイヤーからは、本気で取り組んでいる気合が伝わりましたし、プロゲーマーからも「メンバーのがんばりを無駄にしないために勝たなければならない」という気概を感じました。

ある種、プロ選手のみのチーム戦や、個人で参加する大会よりもプレッシャーがあったのではないでしょうか。プロとアマチュアが融合する大会としては類を見ない完成度と盛り上がりでした。

  • 23日、24日の2日間、18時よりイベントホールで開催された「TGS2023×CR CUP」。プロとストリーマーがチームを組み、『ストリートファイター6』で対戦しました。プロはSFLでも活躍するトッププロ、ストリーマーはSHAKAさんやk4senさん、もこうさんなど、超有名人を起用します

要素の詰め込みすぎは逆効果!?

ただ、大会前に30分のライブがあったのは賛否が分かれるところです。以前にも音楽ライブとゲーム大会を融合したものはありましたが、そのほとんどが成功したとは言い難い結果でした。

イベントにさまざまな要素が入ってくると、お得感が増すどころか、蛇足に感じてしまいます。特に音楽は嗜好性が高いので、好き嫌いが分かれるのではないでしょうか。ハイクオリティであっても、価値があるかは来場者に委ねられるので、誰を連れてきても結果は変わらないでしょう。

せめて、オープニングとエンディングで書き下ろしのテーマソングをそれぞれ1曲ずつ披露するくらいが落としどころかと思います。もしくは大会終了後に第2部としてライブを行うとか、フェス形式で好きなものを観られるような選択肢があればよかったのかもしれません。

また、同じ会場では、ファッションブランド「AZUL BY MOUSSY」といくつかのゲームタイトルのコラボによるファンションショーも行われていました。

コラボしたゲームは『TEKKEN8』『パックマン』『ストリートファイター6』『ボンバーマン』『NieR:Automata』です。基本となるパーカーは、どのタイトルとのコラボでも同じ真っ黒なパーカー。ゲームファンとしてはあまり食指が動きそうにない印象でしたが、「AZUL BY MOUSSY」のファンはどう感じたのか気になるところです。

  • ゲームキャラのワンポイント刺繍やイラストのプリントが施された真っ黒なパーカーがメイン。パーカー自体はどれも同じもののようでした

ゲームの価値を上げるために、ファッションブランドとのコラボや音楽との融合を考えているのであれば、その手法自体がもはや使い尽くされたもののうえ、あまり成功していません。「CR CUP」自体が本当に素晴らしいものだっただけに、その一点は残念です。

ともかく、久々のフル開催となり、特に大きな問題もなく盛況に終わったことは朗報です。ビジネスデイ初日には、空調の設定が悪く、1日中暑かったトラブルもありましたが、一般公開日でなかったのが救いでしょう。

3年の間にいろんなところで担当が変わって、ノウハウが継承されていない部分もあったと思います。それでもこの規模のイベントが滞りなく行えたことで、自信と経験を得たのではないでしょうか。来年の開催日程も発表されましたし、次の開催も楽しみになりました。