スリープテック市場の今後の方向性とは

2020年の約30億円に対して、2025年には105億円まで市場規模が拡大することが予測されるスリープテック市場だが、今後の方向性として、笠木氏は第一に「睡眠の質を高める手段の多様化」を挙げた。

これまでは、マットレスや枕、布団といった一般的な寝具を変えることで睡眠の質を変えていくという動きが中心だった。しかし昨今では、さまざまな産業との組み合わせによって睡眠の質を高めていく製品やサービスが登場している。

例えば、空調とマットレスを連携することで、寝ている間も快適な温度を保つような製品、枕とロボットを組み合わせることによって寝返りをうっても自動で高さが変わる製品などの開発も進められている。睡眠は個人の好みに依存するところが大きいことから、より個人の好みに即したパーソナライズ化も大きなポイントになるという。

また、笠木氏はもう一つの方向性として、「睡眠の“価値”にフォーカスした方向性」を挙げた。例えば、企業の生産性を上げることにフォーカスして、従業員の睡眠の管理や睡眠の改善を支援したり、アドバイスしたりするようなソリューション展開も行われているが、これは、質の高い睡眠そのものの価値や効果を狙った製品・サービスと考えられる。

そして、こうした製品やサービスが、教育、美容、ウェルビーイング、健康増進、介護予防といった観点でも広がっていくのではないかという予測のもと、この2つの軸によって、スリープテック市場は今後拡大していくとの展望を笠木氏は示した。

「ZAKONE」1周年の成果を報告

続いて、ZAKONE事務局の梅田貴大氏が登壇し、「ZAKONE」1周年の成果と新たな取組についての紹介を行った。

  • ZAKONE事務局の梅田貴大氏

「ZAKONE」立ち上げの背景には、上述したように、世界一寝ていない国「日本」という現状がある。中でも、「寝れないと“悩んでいる”日本人」が大きな課題であり、年代問わず、全体の49.2%が悩みを抱えており、男性は年齢が上がるにつれて、女性では若年層でその割合が大きくなっているという。

しかし梅田氏は、「悩んでいるが“対策をしない”」という点こそが問題と指摘した。約40%の人は何もしておらず、対策をしているという人でも、適度な運動や入浴といった程度で、梅田氏は「日本人の間では睡眠不足の対策手法が確立していない」との見解を示した。

国内の既存睡眠市場は1.2兆円規模だが、潜在市場は3~5兆円と言われており、ZAKONEでは、さらなる睡眠市場の拡大を重視。さまざまな業界との接続によって生まれる新製品や睡眠改善の文化が、さらに市場を伸ばす要因になるという。

そして、ZAKONEでは質の良い睡眠のための手段を増やし、価値を高めることによって、睡眠市場も広がり、一人ひとりの睡眠に対する価値観や行動も変わってくるのではないかと予測。また、現在のところ、睡眠に関する製品はだいたい夜9時から12時くらいの製品がメインビジネスゾーンに集中しているが、今後は、夜の良い睡眠を取るための朝や昼の製品やサービスが増えていくとの展望が示された。

こうした展望に向けて立ち上げられた「ZAKONE」は、睡眠産業自体をもっと大きくして、今までになかった製品を増やしていくことがメインの取り組みとなっている。1年前の立ち上げ時は14社だったが、そこから月平均6社が加入。企業だけではなく、団体や研究機関も加入しており、現在は70社が参加するコミュニティとなっている。

個人向け睡眠改善コミュニティ「ZAKONE LAB」をオープン

睡眠市場のさらなる活性化をメインテーマに、その中で、「つなぐ」「創造」「啓蒙」という活動を行う「ZAKONE」。睡眠を中心に、さまざまな企業をつなぎ、新たなコラボレーションを生み出し、さらにイベントなどを企画することで新たなムーブメントを作り出していく。

これまでも、月1回のミートアップイベント「ZAKONE NIGHT」の開催や、「香り×睡眠」「本×睡眠」といった掛け合わせによる実証実験、効果検証、ビジネスマッチングや「寝落ちする演奏会」などの啓発イベントが実施されてきた。

こうした取り組みを重ねることで、企業を通じてモノ・コトを増やしても、「睡眠市場の真の活性化にはまだ不足がある」と話す梅田氏は、新規参入や会社規模によって販促面に課題があることを痛感したという。

それは、いい製品・サービスを開発しても、顧客まで届かないという課題だ。そして、顧客側の抱える睡眠課題や好み、解決手段も十人十色であることから、「ZAKONE」では、新たな個人向け睡眠改善コミュニティ「ZAKONE LAB」を8月23日よりグランドオープンした。

「ZAKONE LAB」のコンセプトは、「みんなで睡眠改善を。学ぶ、試す、測る。そして睡眠を楽しむ」。これまでは企業中心で展開してきた「ZAKONE」だが、「ZAKONE LAB」は顧客中心のユーザーコミュニティだ。

その特徴として、「睡眠改善に関する質の高いコンテンツを無料で掲載」「匿名で参加可能なユーザーコミュニティ+専属スタッフ」「多種多様な製品やサービス紹介やコンテンツの提供」「睡眠計測を活用した効果が見える実践方式」の4つが挙げられた。

「ZAKONE LAB」は、Webブラウザでも閲覧可能だが、専用のアプリケーションも準備。料金無料で、子供からお年寄りまで直感的で利用しやすい、マルチデバイスなレスポンシブルデザインとなっている。

オープン時は、現代人の特徴に合わせた動画中心の睡眠改善コンテンツ「ルーティン」、専門スタッフが常駐し、匿名で気軽に相談できる「知恵袋」、睡眠改善に取り組む人同士のコミュニケーションの場となる「トーク」、独自システムによる改善効果の見える化を実現する「計測室(β版)」などが用意されるほか、企業専用ルームも手配中で、今後順次拡充していくという。

梅田氏は最後に、「2025年に会員数100万人、日本最大の睡眠ユーザーコミュニティ化を目指す。日本から睡眠不足をなくし、経済損失約15兆円の解消に向け、ZAKONE、そしてZAKONE LABを通じて取り組んでいきたい」と決意を新たに、講演を締めくくった。

参画企業による発表や製品・サービスの展示も

記者発表会では、第2部としてZAKONE加盟企業から、ブレインヘルスラボ、ユーグレナ、TENTIAL、SleepLIVE、CyberneX、ディープレス、バランスド、NTTPARAVITAが登壇し、製品やサービスの新発表を実施。そのほか、会場には参画企業による製品・サービスの展示も行われた。

  • ユーグレナから“睡眠の質”改善をうたうドリンク2種を展示

  • バランスドからは睡眠をサポートするブランド「Pillow」のCBDを配合したナイトドリンクを展示