キヤノンEOS Rシステムのローエンドモデル「EOS R100」は、APS-Cミラーレス「EOS R50」の機能をさらに誰でも分かりやく、かつ使いやすいよう絞り込み、リーズナブルな価格としたモデルです。ただし、写りに関して手を抜いているところはなく、EOSを名乗るにふさわしいカメラに仕上げています。今回の実写レビューでは、写りをチェックしたいと思います。

  • ローエンドモデルながらピクチャースタイルやスペシャルシーン、クリエイティブフィルターなど、仕上がり設定は上位モデルと変わらないキヤノン「EOS R100」。もちろん生成する画像も上位モデルと同じです。同社オンラインショップでの価格は、ボディ単体モデルが82,500円、標準ズームレンズ「RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM」が付属するレンズキットが97,900円

基本性能は上々、固定式の液晶モニターは賛否分かれそう

まずは、簡単にEOS R100のスペックを確認しましょう。イメージセンサーは有効2420万画素CMOS。もちろんフォーマットはAPS-Cで、EOS R50に搭載されるものと同じです。画素数に不足は感じず、ファミリースナップのような手軽な撮影から、じっくりと被写体と対峙する作品撮りまで幅広く対応できます。プリントにしても、この画素数であればA3ノビサイズも余裕で楽しめます。

映像エンジンは「DIGIC 8」を採用。世代的には一世代前の映像エンジンとなりますが、それゆえ安定した結果が得られます。撮影コマ速は、ワンショットAF使用時で最高6.5コマ/秒、サーボAFで3.5コマ/秒と、若干物足りなさを感じますが、連続撮影コマ速を重視する被写体の撮影でなければ問題になることはないでしょう。感度については、ベース感度ISO100、常用最高感度ISO12800、拡張機能によりISO25600相当での撮影も可能。暗闇以外で撮れない撮影シーンはないと述べてよく、こちらも不足は感じないと思われます。

  • ▲ISO800

  • ▲ISO1600

  • ▲ISO3200

  • ▲ISO6400

  • ▲ISO12800

  • ▲ISO25600

  • パソコンのモニターで50%拡大した状態で確認してみました。ISO800からわずかですが、輝度ノイズが現れ始めます。以降ノイズが徐々に増していきますが、それでも被写体や写りによっては気になることは少ないように思えます。ISO6400となると若干シャープネスが低下し、ノイズも目立ちはじめます。ただし、画面の拡大率が小さかったり、スマートフォンで見る分には低感度の画像と大きな違いは見当たらないでしょう。常用の最高感度ISO12800になると明らかにノイズが目に付くようになりますが、解像感の低下は小さく、十分実用として使える感度のように思えます

AFはキヤノンご自慢の高精度で高速の「デュアルピクセルCMOS AF」。AFによるストレスはシングルAFでもサーボAFでも皆無です。測距範囲も広く、画面の横88%、縦100%のエリアをカバー。ピントを合わせたい被写体の位置を問うことはありません。顔優先AFと瞳AFは搭載されていますが、動物や乗り物などといった被写体検出AFは残念ながら省略されています。

ほかのEOS Rシステムのミラーレスとの大きな違いといえば、液晶モニターが固定式ということ。バリアングルタイプのようにヒンジがないため、ボディ左側面がすっきりとしています。ただし液晶モニターが回転しないため、自撮りやハイ&ローアングルの撮影では少々不便なこともありそうです。液晶モニターを除けば、外観自体は大きさ重さも含めEOS R50に準じたものとしています。軽量でコンパクト、バッグに入れてどこへでも持っていけそうなサイズ感です。

スマホとの連携を図る通信機能も充実しています。専用アプリ「Camera Connect」をインストールしたスマホへの画像転送も簡単。EOS R100で撮影した写真を友人と共有したり、SNSなどへの写真のアップも手間がかかりません。このアプリではライブビューによる遠隔撮影も可能としているほか、Bluetoothでの接続では、カメラ側の操作なしでカメラ内の画像をスマホで閲覧できます。

ローエンドモデルながら上位モデルに迫る画質

そのようなEOS R100ですが、写りは紛れもなく他のEOS Rシステムと寸分違わないものです。ピクチャースタイル「スタンダード」の場合、白トビはよく抑えられ、階調豊かな写りであるのに加え、適度な色のりのよさで、オールラウンドで使える仕上がりが得られます。レンズの描写特性に依存する部分もありますが、イメージセンサーにローパスフィルターを搭載するカメラながら解像感が高いのも特徴。ローエンドモデルながら上位モデル同様デジタルレンズオプティマイザなどレンズ光学補正機能を搭載しており、それが功を奏しているようです。

高感度域におけるノイズレベルも小さく、輝度ノイズおよび色ノイズとも良好に抑えています。さらに高感度ノイズリダクションが影響する解像感の低下を最小限に抑えているのも魅力です。クラスを超えた写りが得られる、そう述べても言い過ぎでないミラーレスのように思えます。

  • 露出補正は十字キーの露出補正ボタンを押したあと、シャッターボタンの後方にある電子ダイヤルで設定します。直感的な操作感とは言い難いものですが、慣れれば比較的速やかに設定できそうです。写真はマイナス2/3EV露出補正を行ったのちに撮影しました EOS R100・RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM・絞り優先AE(絞りF4.5・1/80秒)・ISO250・WBオート・JPEG

  • 明暗比の極めて高いシーン。黒ツブレや白トビしているところもありますが、むしろこのレベルで収まっていることに驚かされます。あえて明暗比を生かすなら、「オートライティングオプティマイザ」をOFFにしてみるとよいでしょう EOS R100・RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM・絞り優先AE(絞りF8・1/250秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • 逆光ながら、薄陽のためコントラストが低く柔らかい写りが得られました。露出の決定が難しいシーンでもありますが、そのようなときはAEB(オートエクスポージャーブラケティング)機能を使うのがオススメです。なお、本モデルはAEBを設定しても電源をOFFにすると自動的に解除されますので、撮影の際は注意が必要です EOS R100・RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM・絞り優先AE(絞りF5.6・1/800秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • ミラーレスのEVFは視野率100%であるものがほとんどです。EOS R100も例外ではなく、ファインダーの表示見たままの画像を記録します。また、露出の状況もリアルタイムで把握できるため、露出を切り詰めるような撮影も容易です EOS R100・RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM・絞り優先AE(絞りF6.3・1/80秒)・ISO640・WBオート・JPEG

このところ、多くのカメラメーカーが電子部品の不足などを理由にカメラ、レンズの値上げを相次いで発表しています。メーカーによっては、利益率の低い廉価モデルの製造販売を終了するところもあります。そのような状況のなか、スマホの写真では満足できない、あるいはさまざまな画角のレンズで撮影しんでみたいと思うミラーレスユーザー予備軍に強く訴求するロープライスのモデルの登場は、ある意味メーカーの挑戦と述べてよいでしょう。このカメラが存在することで、EOS Rシステムユーザーの裾野が広がるとともに、新しい同社のファンや長く同社のカメラを愛用するファンが生まれてくると思われます。

もちろん肝心の写りについては、EOS Rシステムの上位モデルとの違いを見つけるのが難しいほど高品位。操作性もカメラ任せでの撮影を得意とするもので、誰でも手軽にカンタンに楽しめます。そのようなEOS R100は、極めてコストパフォーマンスの高いミラーレスであるように思えてなりません。

  • ピクチャースタイルは「スタンダード」で撮影。その名のとおりキヤノンの標準とする絵づくりで、極端な派手さはなく適度な色のりで被写体を選ばない仕上がりとなります EOS R100・RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM・絞り優先AE(絞りF6.3・1/320秒)・ISO640・WBオート・JPEG

  • 手ブレ補正機構は備わっていませんが、キヤノンのAPS-C用のRF-Sレンズはすべて手ブレ補正機構を内蔵しているので、不安に思う必要はないと思います。作例もテレ端210mmでの撮影ですが、手ブレを抑えシャープな写りが得られました EOS R100・RF-S 55-210mm F5-7.1 IS STM・絞り優先AE(絞りF7.1・1/400秒)・ISO400・WBオート・JPEG

  • AFフレームの選択は、マルチコントローラーが搭載されていないため、AFフレーム選択ボタンを押したあと、十字キーで行います。素早く思った被写体にピントを合わせるには、操作に慣れが必要に思えます EOS R100・RF-S 55-210mm F5-7.1 IS STM・絞り優先AE(絞りF8・1/540秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • AFは「SERVO」を選択。動く電車をカメラで追いながらアングル的によいと思った瞬間にシャッターを切っています。いわゆるコンティニュアスAFでの撮影ですが、被写体追従性は高く、シャープな画像が得られました EOS R100・RF-S 55-210mm F5-7.1 IS STM・絞り優先AE(絞りF7.1・1/320秒)・ISO400・WBオート・JPEG

  • こちらもAFは「SERVO」としています。被写体認識AFは非搭載ですが、通常のAFフレームでも問題なく被写体を捕捉し続けることが可能です。SERVO設定時の連続撮影コマ速は3.5コマ/秒と、動きものの撮影では厳しいこともありそう EOS R100・RF-S 55-210mm F5-7.1 IS STM・絞り優先AE(絞りF7.1・1/640秒)・ISO400・WBオート・JPEG

  • 実際の被写体の動きと、EVFに表示される画像のタイムラグはクラスとして小さいほうですが、それでも被写体の動きの速さによってはタイミングを外すことがありそうです。そのことを考慮してシャッターを切るとよいでしょう EOS R100・RF-S 55-210mm F5-7.1 IS STM・絞り優先AE(絞りF8・1/125秒)・ISO400・WBオート・RAW(明るさを調整したのちJPEGに変換)