VAIOから、12.5型液晶ディスプレイを搭載したモバイルノートPC「VAIO SX12」が登場した。薄型軽量ボディに第13世代 Intel Coreプロセッサや長時間バッテリーを搭載し、出先でも快適に使用できる。
カラバリが充実しているのも特徴で、ファインブラックをはじめとした6色のほか、ヒンジや天板のロゴまで“漆黒”で統一した「ALL BLACK EDITION」、濃い藍色とゴールドの組み合わせが目をひく「勝色特別仕様」なども用意されている。
今回、そのうち「勝色特別仕様」の実機を借りられたので、外観や使い勝手、パフォーマンスなどを詳しく紹介していこう。
色だけじゃない、質感の高さも魅力の勝色特別仕様
自宅やオフィスだけでなく、出先で使用する機会も多いモバイルノートPC。製品を選ぶ際は、性能や使い勝手だけでなく“見た目”にもこだわりたいと考えている人は少なくないだろう。とくに本体カラーは“自分らしさ”につながりやすいポイントだけに、気に入った色を吟味して選びたいところ。
VAIO SX12の場合、ベーシックモデルはファインブラック、ファインホワイト、ファインレッド、ブライトシルバー、アーバンブロンズ、ローズゴールドの6種類が用意されている。
それだけでも選びがいがあるが、プレミアムエディションとして「ALL BLACK EDITION」と「勝色特別仕様」もラインナップ。これだけ豊富だと、選ぶ際に「どれにしよう」とつい迷ってしまいそうだ。
今回試した「勝色特別仕様」は、その名の通り伝統色である「勝色」を本体カラーに採用しているのが大きな特徴。勝色というのは布の染め方に由来する色名で、藍を濃く染み込ませるために叩く=搗つ(かつ)ことが「勝つ」につながり、濃い藍色が勝色と呼ばれるようになったという。
VAIOの勝色も、そんな黒に近い藍で日本人には馴染みの深い色だ。寒色系のカラーではあるものの、ヒンジや天板のロゴに温かみのあるゴールドが採用されていることもあってか、全体としては落ち着いた雰囲気なのに華やかさも感じられるという、不思議な佇まいになっている。
色だけでなく素材にもこだわりが見られ、天板にはカーボンが、キーボード面には高輝度アルミニウムが使用されている。そのうち天板の方は塗料にパールパウダーを加えたものを塗装しているそうで、光沢を抑えたマットな質感でありながら、光の当たり具合によって表情が変わるのがかっこいい。
ちなみにキーボード面とパームレストは一枚板になっており継ぎ目や凹凸が見当たらない。またアルミの表面にはヘアライン加工が施されていて質感が高いのも好印象。手触りもいいが、色が暗いこともあって指紋などの油分の汚れは若干目立ちやすいようだ。もっとも、布などで拭けば簡単に汚れを取ることはできる。
キーボードやタッチパッドのカラーはブラックだが、キートップの文字はBTOで2種類の刻印を選択可能。通常刻印は白色の文字で、隠し刻印は黒色の文字となる。今回試用したのは隠し刻印版で、黒地に黒文字で刻印が目立たないためごちゃごちゃした感じがなく無刻印キーボードのようで最高にクール。ただし、そのぶんパッと見でキーを区別しにくいので、刻印を見ながらタイピングする人の場合は白文字の通常刻印を選んだ方がいいかもしれない。
ただ、キーボードバックライトを点灯すれば隠し刻印でも文字が白色に発光してキーの区別がしやすくなる。タッチタイピングに慣れた人や、見た目のかっこよさを重視する人は、ぜひ隠し刻印を検討してみてほしい。
本体サイズは幅287.8mm、奥行205.0mm、高さ15.0~17.9mm、質量は最軽量構成時で約899gと非常に薄型軽量。本体底面もフラットでゴム足以外に凹凸がないため、バッグなどに収納する際もスムーズで気軽に持ち運べる。アメリカ国防総省制定MIL規格に準拠した落下や衝撃、振動などの品質試験もクリアしており、出先でも比較的安心して使用可能だ。
インタフェースは、本体左側面にセキュリティロック・スロット、USB 3.0 Type-A(5Gbps)、ヘッドフォン出力端子を、本体右側面にUSB 3.0 Type-A(5Gbps、給電機能付き)、USB Type-C(Thunderbolt 4、USB Power Delivery、DisplayPort 1.4対応)×2、HDMI、LAN端子を搭載している。
電源コードはUSB Type-Cに差すようになっているが、ふたつあるポートのうち片方が本体奥側に搭載されているため、コンセントにつないで使う場合でもコードがジャマになりにくいのは嬉しい配慮だ。
モバイルワークに役立つ機能が盛りだくさん
VAIO SX12が搭載しているディスプレイは、画面サイズが12.5型ワイドで解像度がフルHD(1,920×1,080ドット)のアンチグレア液晶パネル。視野角や色域は広めで、筆者が普段使用している外付けのクリエイター向けディスプレイと比べても遜色ない色再現性だった。
ディスプレイを開くと、キーボード奥側が持ち上がりキーボード面に角度がつく機構になっている。そのためタイピングする際の手首の負担が軽減し、長時間の文字入力が快適に行える。
また膝の上に本体を置いて作業する際に本体の熱を感じにくく、不快感が少ないというメリットもある。ディスプレイの角度は最大180度まで開くことができ、対面での打ち合わせや商談の際、相手に画面を見せて情報を共有したいときなどに役立つ。
ディスプレイ上部には約207万画素のフルHD撮影に対応したWebカメラが搭載されている。このカメラはWindows Helloの顔認証もサポートしており、あらかじめ顔を登録しておけばパスワードをキーボードで入力することなしにログインできて便利。またカメラプライバシーシャッターが搭載されているため、未使用時は物理的にレンズを覆って機能をオフにすることもできる。
プリインストールされているユーティリティ「VAIOの設定」を使うと、カメラの映りを細かく設定可能。背景をぼかしたり、顔の位置がちょうどよくなるようフレーミングしたり、逆光を補正したりできる。美肌効果をオンにすれば、肌のアラを目立たなくすることも可能。Web会議前にメイクする時間がないときや、男性でも画面越しの顔色を良く見せられるだろう。
「VAIOの設定」にはAIノイズキャンセリング機能も搭載されており、マイクで拾った音やスピーカーから出力される音からノイズを除去して聞き取りやすくできる。実際に試してみたが、家電の稼働音やタイピング音、車の走行音など、音声以外のノイズを効果的に低減することが可能だった。
このほか、人感センサーを利用して離席時に自動的に画面をロックしたり、逆に席に戻ってきたときにウェイクするような設定もできる。カフェやコワーキングスペースなど、人目が気になる場所で作業中にちょっと離席するようなときに便利だ。
ちなみに生体認証は顔認証以外にも指紋認証を利用できる。電源ボタンに指紋センサーが内蔵されており、事前に指紋を登録しておけば、指を置くだけでパスワードレスでログイン可能。まだまだ場所によってはマスクが必要なこともあるので、指紋認証にも対応しているのはありがたい。
キーボードはキーピッチが19mmあり、キーストロークも約1.5mm確保されている。一部の修飾キーがやや幅狭になっているが、文字キーや数字キーなどの主要なキーはサイズが均一で打鍵感がよく、タイピングはかなりしやすい
タッチパッドはクリックボタンが独立して設けられており、ドラッグ&ドロップなどのボタンをホールドする操作がしやすく感じた。
写真・映像編集もできるパフォーマンスと長時間駆動
VAIO SX12シリーズは、モデルによって搭載するプロセッサが異なっており、ベーシックモデルは12コアのCor i7-1360PとCore i5-1340P、6コアのCore i3-1315Uから選択可能。
ALL BLACK EDITIONと勝色特別仕様は14コアのCore i7-1370Pと12コアのCor i7-1360Pから選択できる。今回は、そのうち最上位のCore i7-1370Pを搭載した製品を試した。
試用機のおもなスペック | |
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CPU | Intel Core i7-1370Pプロセッサ(6Pコア、8Eコア、最大5.20GHz) |
グラフィックス | Intel Iris Xe グラフィックス(CPU内蔵) |
メモリ | 32GB LPDDR4X SDRAM |
ストレージ | SSD 512GB(PCIe Gen4) |
駆動時間 | 約25.0~27.5時間(標準バッテリー)、約14.0~16.0時間(標準バッテリー/動画連続再生) |
これらのパフォーマンスをチェックするため、「CINEBENCH R23」「PCMark 10」「3DMark」「CrystalDiskMark」などのベンチマークソフトでスコアを測ってみることにした。
まず、CPUの性能を測る「CINEBENCH R23」は、次の結果になった。
CINEBENCH R23 | |
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CPU(マルチコア) | 11986pts |
CPU(シングルコア) | 1821pts |
Core i7-1370Pは14コア20スレッドのプロセッサで、前世代のCor i7-1270Pからは性能重視のPコアが2つ増えている。CINEBENCH R23の結果もそのコア数の増加を反映しており、マルチコアのスコアが3~4割ほどアップしている。文書作成や写真編集などには十分すぎるパフォーマンスで、動画のエンコードなども快適に行えることが期待できる。
そこで、PCの総合的なパフォーマンスをチェックするため「PCMark 10」も実行してみた。
PCMARK 10 | |
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総合スコア | 5901 |
Essentials | 11444 |
Productivity | 7155 |
Digital Content Creation | 6811 |
快適に動作する目安は、基本性能を示すEssentialsが4100、ビジネスアプリのパフォーマンスを示すProductivityが4500、クリエイティブアプリのパフォーマンスを示すDigital Content Creationが3450となっているが、本製品はいずれも大きく超えている。
このことからも、普段使いやビジネス用途だけでなく、画像・動画編集などのクリエイティブ用途も十分快適に行えることがわかる。VAIOのPCには、CPUの電源強化や放熱能力の向上によってプロセッサの持つ高いパフォーマンスを持続的に発揮させる「VAIO TruePerformance」という技術が搭載されているが、その効果がうかがえるパフォーマンスの高さといえそうだ。
次に、グラフィックス性能のテスト「3DMark」では次の結果になった。
3DMarkスコア | ||
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テスト | 総合スコア | グラフィックススコア |
Time Spy | 1593 | 1416 |
Fire Strike | 4437 | 4839 |
Night Raid | 15220 | 18549 |
CPU内蔵のグラフィックスということもあって、それほどパフォーマンスが高いわけではない。画像・動画編集や軽めのゲームに適した性能となる。外付けディスプレイをつないでマルチモニター環境にしたときなども快適に作業できそうだ。
続いて「CrystalDiskMark」でストレージの性能も測ってみた。
CrystalDiskMark | |
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1M Q8T1 シーケンシャルリード | 6762.59 |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 4877.42 |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 4390.10 |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 4048.58 |
4K Q32T1 ランダムリード | 719.99 |
4K Q32T1 ランダムライト | 620.46 |
4K Q1T1 ランダムリード | 93.64 |
4K Q1T1 ランダムライト | 246.41 |
PCIe Gen4対応のSSDを搭載しているだけあって、シーケンシャルリードは6700MB/s超と非常に高速。実際、データを読み込む際もあまり待たされず、サクサク作業することができた。
バッテリーはJEITA2.0準拠のテストで約25.0~27.5時間駆動、動画連続再生は約14.0~16.0時間となっている。そこでPCMARK10のバッテリーライフテストのうち、業務での使用を想定した「Modern Office」と動画視聴を想定した「VIDEO」を実行して実際にどのくらい持つか計測してみた(なお、今回は電源モードを「バランス」、画面の明るさを50%に調節した状態でテストしている)。
その結果、「Modern Office」は13時間52分、「VIDEO」は12時間23分の駆動が可能だった。今回の試用機はCPUが最上位のCore i7-1370Pなので、Pコアの少ないCore i7-1360Pならまた違った結果になると思われる。
いずれにしても実際の利用シーンに近いテストでこれだけ持てば、通常はACアダプターを一緒に持ち歩かなくても大丈夫そうだ。出先でも電池持ちを心配することなく、安心して作業に没頭できるはずだ。
デザインと性能、所有欲まで満足できるモバイルPC
薄型軽量ボディに第13世代Coreプロセッサや長時間バッテリーを搭載し、個性的なカラバリを揃えたVAIO SX12シリーズ。デザインも性能も使い勝手も高い水準にあり、気軽に持ち出せるモバイルノートPCを探している人にとっては有力候補のひとつに挙げられそうだ。
とくに、パフォーマンスの高いCore i7-1370Pを選択できるALL BLACK EDITIONと勝色特別仕様は、出先でもある程度負荷の高い作業をしたいと考えている人にはうってつけのモデルと言えるだろう。
今回試した勝色特別仕様の場合、VAIOストアなどでは232,800円(税込)~という価格で販売されているが、国内製造ならではの安心感や信頼感、製品の品質の高さを考えればコスパは決して悪くない。長く使えて所有欲が満たされるノートPCを探している人には、ぜひ注目してほしい製品だ。