Apple TV+ で6月から配信が始まったドラマ『ハイジャック』の最終話が8月2日に配信され、完結しました。夏休み、ハイジャックされた旅客機の7時間におよぶフライトを一気に体感するには絶好のタイミングです。緊迫感ある最悪の旅をこの機会に味わってみませんか。

『ハイジャック』 ドバイからロンドンへ向けて離陸した旅客機、KA29便が突然銃を持った犯人たちにハイジャックされる。地上との連絡を断たれ孤立する機内。交渉人を職業とするサムは、犯人たちに協力を申し出る。一方、地上ではサムからのメッセージを手がかりに事態を把握しようと動き始める人物がいた。

<出演者>
サム・ネルソン/イドリス・エルバ
スチュアート/ニール・マスケル
マーシャ・スミス=ネルソン/クリスティーン・アダムズ
マックス・ビーズリー/ダニエル・ファレル
アリス・シンクレア/イヴ・マイルズ 他

<スタッフ>
エグゼクティブプロデューサー:イドリス・エルバ/ジョージ・ケイ/ジム・フィールド・スミス/クリス・サイキエル/ハカン・クーセッタ/ジェイミー・ローレンソン
ディレクター:ジム・フィールド・スミス
脚本:ジョージ・ケイ

リアルタイムで進む、50分×7話

浮かない顔でドバイ発ヒースロー行き便の搭乗口へ向かう主人公、サム・ネルソン(イドリス・エルバ)。手荷物は妻へのプレゼントの入った紙袋が一つ。しかし、手元のスマートフォンに妻から返ってくるのは彼を突き放すメッセージばかり。それでもロンドンでの仕事があるからと乗り込み、キングダム航空29便(KA29)は離陸する……。

ご想像どおり、この飛行機は機内にいた犯人グループにハイジャックされます。タイトルそのままであり、結末も多くの人の想像を裏切らないものです。ではどこが見所かというと、犯罪の進行がいかに緊迫感を持って描かれるか、という点に尽きます。

その仕掛けの一つが、ドラマ内の時間経過がほぼリアルタイムで表現されていること。もちろん厳密にリアルの1分=作中の1分ではないのですが、ドバイからヒースローまで約6時間45分のフライト中の出来事が、50分前後のエピソード全7話に、ほぼ時系列で構成されています。回想シーンなし、モノローグなし、見えていることが全てです。

さらに地上の複数の出来事も同時進行で描かれ、それらをつなぐ糸がまったく見えません。犯行の狙いは? 地上の事件との関連は? 俯瞰できる視点がないまま状況に引き込まれていくのです。

共通体験と人間ドラマが高める緊迫感

もう一つの仕掛けが、スマートフォンの使い方です(iPhoneが多数ですが、それ以外も)。事件が地上に伝わるきっかけとなったメッセージをはじめ、いくつもの場面でスマートフォンの存在がストーリの展開に関わってきます。

同時に、これだけ通信が発達した世界であっても、相手の状態を把握できない状況が容易に生まれてしまうことも浮き彫りにされていきます。スマートフォンがヒントをもたらすこともあれば、危機を招くことも。事件の真っ只中で手元になかったらどうするか。あるいは、手元にあったらどう使うか。スマートフォンという共通体験が緊迫感のリアリティを増幅します。

そして最後に、主人公・サムです。彼は優秀なネゴシエイター(交渉人)であり、企業間のM&Aや提携案件をまとめるのが仕事、という設定です。交渉人というからには策略と交渉術を武器に犯人とやり合うのかと思いきや、ヒーロー然とした正義観は見せず、反抗を企てる乗客たちを制止する一方で自身は犯人たちと関わりはじめます。彼が何を考えているのかは明確には示されないものの、度々混乱が起きる中で、彼の行動は徐々に乗客たち、そして犯人たちに影響を与えることになります。

しかし事件は、犯人たちすら予期しなかった方向へと二重三重の展開を迎えます。駆け引き、説得、脅迫……。武器・腕力・特殊能力を持たない人間が、何をもって誰と交渉するのか。人間ドラマの濃さがヒリつく緊迫感を途切れさせません。

『ハイジャック』は配信開始から常にApple TV+ の視聴ランキング上位に入り続ける人気作となりました。こうなるとシーズン2を期待したいところですが、ハイジャック事件はそうそう起こるものではないし、サムが人生で2度3度とハイジャックに巻き込まれるのも現実的ではありません。

ただ、英語のhijackには「乗っ取る、奪い取る、盗む」などの意味があります。旅客機に限らず、車や列車、コンピュータまで、乗っ取られれば「ハイジャックされた」となるわけです。物語は完結したものの未解決の要素もたくさん残っていますから、何らかの形でシーズン2が実現することを期待したいと思います。

この作品を視聴するには

  • 配信サービス:Apple TV+
  • 視聴方法:iPhone、iPad、Macなどの「Apple TV」アプリ、スマートテレビ、Amazon Fire TV、Chromecast with Google TV、PlayStation、Xbox、PCブラウザ(https://tv.apple.com/jp)
  • 料金:月額900円(ファミリー共有可能)または「Apple One」(月額1,200円/1,980円)で利用可能

Apple TV+とは?


Appleが提供する、完全オリジナル作品だけのサブスクリプション型映像配信サービス。ドラマ、長編作品、ドキュメンタリー、アニメなど、毎月新作が提供されている。アカデミー賞、ゴールデングローブ賞などの映像作品賞ノミネート・受賞作も多数。

(画像提供:Apple TV+)