ヤフーが提供する「Yahoo!マップ」は2023年4月20日に、提供開始から25周年を迎えました。2023年に行われたアップデートでは、調べた場所やルートなどを複数のタブで表示できる「タブ機能」(Android版)、全国の花火大会情報が分かる「花火マップ 2023」に対応しています。担当者に話を聞きました。
花火マップ 2023に注目!
Yahoo!マップは、トータルで2,400万以上のダウンロード数を誇る地図アプリ(記事執筆現在)です。ヤフー Yahoo!マップサービスマネージャーを務める水谷真樹氏は、Yahoo!マップのこだわりについて「ゼンリンの高精度な地図データをベースに、独自のチューニングを施して見やすいデザインにしています」と紹介します。
特定の目的にフォーカスしたスポットを確認できる「テーママップ」機能が利用できるのも、Yahoo!マップならではの特徴。
たとえば「ラーメンマップ」を開くと、各地の美味しいラーメン店の情報を表示できます。「ラーメンデータベースの情報を参照しています。営業情報だけでなく、味の評価、子ども用のメニューはあるか、二郎系か家系か、といった細かい条件で絞り込むこともできます」と水谷氏。
ちなみに、現在のところ「カレーマップ」をつくる予定はないそう。「実は、カレー屋さんは難しいんですよ。専門店のほかに、お蕎麦屋さんでカレーを出していることもありますよね。そういうところのカレーが、またウマかったりする(笑)。では果たしてカレーマップをつくったときに『◯◯庵』のようなお蕎麦屋さんも表示するべきか否か。そんな課題もあって、カレーマップの開発には着手していないんです」(水谷氏)
そしてこのシーズン、ぜひとも利用したいのが花火マップ 2023です。2023年の花火マップはアップデートされており、花火会場の「打ち上げ発数」「打ち上げ時間」「例年の人出」が確認できるようになりました。花火大会の規模、混雑状況の参考にできそうです。
「花火大会によっては、会場にライブカメラが設置されているケースもあります。そこでアプリ上からライブ配信絞り込み機能を利用し、ライブ配信が実施されている場合に、公式サイトへ遷移してライブ動画を視聴できるようにしました。今夏の推し機能のひとつです」(水谷氏)
コロナ禍が一段落し、2023年は全国各地で花火大会が実施されています。それに比例するように、いまユーザーの花火マップ 2023に対する注目度も高まっているそう。水谷氏は「これからが花火シーズンの本番です。今年の花火マップは、すでに508箇所で開催される大会に対応しました(取材時点)。たくさんの方々にご利用いただければ幸いです」と話していました。
このほか、いくつか気になることを聞いてみました。
―― 花火マップを使って、花火が見られる穴場スポットを検索できませんか?
水谷氏:それは難しいのが現状です。オフィシャルに“穴場スポット”をご案内してしまうと、人が集中してしまう危険性や、近隣にお住まいの方々にご迷惑がかかるケースがあるでしょう。ただ、花火大会の会場周辺をYahoo!マップでよく調べて「こちらの公園だったら、この方角は建物も少ないし、もしかしたら花火がよく見えるんじゃないか」といった使い方はできると思います。
―― 会場周辺の交通規制の情報もあわせて閲覧できますか?
水谷氏:花火マップの上にレイヤーを重ねて表示することはできませんが、アプリの通常画面には交通規制の情報、混雑情報を表示させることは可能です。後ほど紹介するタブ機能をうまく利用すれば、複合的な情報を同時に得られるので、ご自身で判断する材料になるでしょう。
―― 会場周辺の駐車場は検索できますか?
水谷氏:付近の施設検索で「駐車場」を調べることで、従来の花火大会のホームページでは得られなかった駐車場の情報もアプリから入手できます。
ちなみに渋滞情報、それを回避するルートもご案内できます。花火大会の日は混雑に加えて、普段の道路も規制されるケースが多いので、ぜひアプリをご活用いただければ。また「地方で開催される花火大会に行きたいけれど、どうやってアクセスしたら良いか分からない」といった場合、Yahoo!マップを使えばバスのルートも選択肢のうちに入りますので、ご検討いただければと思います。
「今春には『桜開花マップ 2023』、GWには『フードフェスマップ 2023』なども提供しました。秋には『紅葉マップ』も展開する予定ですのでご期待ください」(水谷氏)
タブ機能ってどう使うの?
Yahoo!マップ(Android版)には、2023年3月のアップデートでタブ機能が加わりました。これについてヤフー Yahoo!マップサービスマネージャーの山下孝之介氏は「従来、マップを使うときはシングルタスクで処理していたわけですが、Webブラウザのように、いくつもタブを作れるようになりました」と説明します。
さらに2023年7月には、タブ機能が「徒歩のナビ」に対応しました。これにより、たとえば「徒歩のナビ」の使用中に、別のタブで周辺施設を検索する、雨雲レーダーを確認する、といったマルチタスク処理が可能になります。
「具体的な挙動としては、ナビを使っている最中にタブ一覧を表示させるとナビが一時停止状態になり、ナビに戻るボタンで戻れます。ルート検索したあとで道添いの駐車場を探す、周辺のコンビニを探す、何かのついでに何かを検索する、そうしたケースで便利に使える設計です」(山下氏)。
従来のYahoo!マップでは、ナビ中に調べ物があったとき、ナビを中断して検索、その後で現在地から再びナビをし直すという操作でした。Webブラウザのようにタブを作っていけるのはとても便利ですね。
これまでの歩みを振り返る
旧Yahoo!地図が「Yahoo! MAP」にリニューアルしたのは2017年4月のこと(2023年6月28日にはYahoo!マップへ変更)。その時代にYahoo!マップサービスマネージャーを務めていた高橋僚介氏は、当時について以下のように振り返ります(現在はヤフー 「エントリーポイント」サービスマネージャー)。
「ユーザーの皆さんに、毎日マップを使ってもらうにはどうしたらよいか。そこで『目的地が決まったあとで周辺地域を調べる』という用途だけでなく、『目的地がまだ決まっていないユーザ―の皆さんに必要な情報を提供して旅の選択肢を提案する』ことができないか――と考えました。地図という概念を変えたかったといいますか、地図アプリからガイドマップに生まれ変わらせたかったんですね」(高橋氏)
そのあとでYahoo!マップにはもう一度、大きなアップデートが実施され、現在のようなUGC(User Generated Contents、一般ユーザーの口コミ)を活用したプラットフォームに生まれ変わりました。それが2020年のこと。世の中はコロナ禍の真っ只中で、サービス開発にも影響が出たそうです。
「まず利用者の外出機会がガクンと減りました。人々の『場所を検索したい』というニーズは継続的にあったんですが……。でもそのときにYahoo!マップでは『ワクチンマップ』を提供できたことが良かった。どこで、どのメーカーのワクチンを、いつ打てるのか。そんな皆さんの知りたい情報に応えるべく、テーママップとしてワクチンマップをローンチしたんです。これはとても大きな反響がありました。厚労省からも『私たちでできないところを民間にやってもらえた』と評価してもらえました」(水谷氏)。
また高橋氏よりも前に、インターネットの黎明期からヤフーで地図アプリを支えてきた二宮一浩氏にも話を聞きました(二宮氏は2012年4月~2016年3月にYahoo!マップ サービスマネージャーを務めました。現在はヤフー CTO室 新規技術獲得部)。
―― 振り返ってみて、あれは画期的だったと思うサービスはありますか?
二宮氏:2005年前後だったでしょうか。「みんなでつくろう"Yahoo!地図情報"」というサービスを提供していました。ユーザーの皆さんから情報を集めて、地図をリアルタイムで更新していく画期的なサービスです。
でも当時はUGC(User Generated Content:ユーザーが作るコンテンツ)という概念すら確立していない時代。現代のように、写真を撮影してアップロードして、という文化もありませんでした。なにしろスマホもない時代なので、自分で調べた情報を、帰宅後に家庭のパソコンに入力してデータを送ってもらう手間が必要でした。こちらとしても、お客さまから上がってきた情報の真偽を確定させる作業にコストがかかりました。当時の技術、社会状況が合わなかったんですね。時代を先取りしすぎたサービスと言えるでしょう。
二宮氏:ほかには、「LatLongLab(ルートラボ)」というサービスがありました。一般ユーザーが投稿したルートを、別のユーザーが閲覧して参照できるサービスです。当時のSNSで共有できるようにしたら、自転車好きが集まってくれて。自転車で走りやすいコースがどんどんアップロードされていきました。ヤフーとしては、散歩、ジョギング、マラソン用途を考えていたので意外ではあったんですが、反響はうれしかったですね。現在でも、自転車好きの利用者からはルートラボの復活を望む声が寄せられています。
「お出かけ先を決めたあとの検索ツールとしてだけでなく、お出かけ先を検討するためのツールとしても、ぜひYahoo!マップをご利用いただければ。今後とも機能を拡張していきますので、ご期待ください」(取材に対応してくれた皆さん)