IIJが千葉に東日本の拠点となる大型データセンターを建設

インターネットイニシアティブ(IIJ)が千葉県白井市に所有する「白井データセンターキャンパス」の第2期棟が完成し、7月から稼働を開始している。プレス向けの内覧会が開催されたので、その様子をお届けしよう。

災害に強く省エネな大規模データセンター

白井データセンターキャンパスは、千葉県白井市にあるIIJ最大のデータセンターだ。白井市は千葉県北西部に位置する、人口6万人強の小さな市だが、近年はAmazonやGoogleなど、名だたるIT企業が相次いでデータセンターを建設する注目スポットでもある。これは同市が東京都から約30分前後という立地に加え、特別高圧電力の供給が素早く行われること、地盤が強固で海や河川からも距離があり、水害や液状化の危険も少ないといったことも理由に挙げられる。常時稼働が重要なデータセンターにとって、うってつけの場所なのだ。

IIJは島根県松江市と白井市に自社のデータセンターを開設しているが、白井データセンターキャンパスは、技術開発や実証実験の場としても機能している。例えばローカル5GやLoRaWANといった無線関連技術の実証実験の場として「白井ワイヤレスキャンパス」も内包している。約4万平米という広大な敷地は、「キャンパス」という名前のとおり、IIJが新たなことに取り組むための「学び舎」であり、技術開発の最前線でもあるのだ。

  • 屋外に設置されていたエッジコンピューティング用の小型データセンター「DXEdge」。隣接してローカル5Gのアンテナやスマートポール、農業IoTの水位センサーなどが設置されており、ここがR&Dの場でもあることを意識させる

白井データセンターキャンパスでは、需要に応じて柔軟な設備の拡張・構築が可能なシステムモジュール型工法を取り入れており、2019年運用開始の「第1期」、今回公開された「第2期」、そして現在建築準備中の「第3期」に分けて設備が拡張されていく。第2期棟は約8,000平米の規模を誇る建物だ。

第1期と第2期棟に共通する特徴が、省電力の冷却システムだ。データセンターは内部に設置された膨大な数のサーバーがオーバーヒートしないよう、常時一定の温度に冷やされる必要があるが、その電力消費は莫大なものになる。いかに低電力で冷房を実現するかが、データセンター運営の上での重要な要素となるわけだ。

通常のデータセンターでは、冷却した空気を床から吹き出して天井側で吸い出す方式を採用しているが、白井データセンターキャンパスでは外気を導入し、サーバー室に隣接した空調室内で、冷却水を通した冷水コイルに吹き付けて冷やし、壁面の空調ファンからサーバー機器に冷気を吹き出す、効率的な空調システムを構築している。

  • サーバー棟のひさしの下側に外気の取り入れ口がある。外気に含まれる汚染物質などはフィルターでシャットアウトされる。日陰なので夏場でも比較的涼しい空気を導入できる

サーバー室の室温は24度前後と、半袖で上着を着ていない状態でも「肌寒い」とは感じられない程度。サーバー室というと、年がら年中「寒い」場所という印象だが、負荷の推移に合わせて最も効率よく冷却できるように工夫されているため、この程度の温度で十分という。

また、カーボンニュートラルという目標に対しては、データセンターキャンパスの屋根に設置された太陽光パネルでの発電といったオンサイトでの再エネ電力に加え、大容量蓄電池によるピーク電力消費の軽減やオフサイト再エネ電力の購入(非化石証書)などを通じて、カーボンニュートラル率を高めている。将来はマイクログリッドとの融合などを通じて、さらに高効率な電力制御を行いたいとのことだった。

最近は生成系AIやLLMといったAI系サービスの流行もあり、データセンターの需要は引き続き高い水準で続くことが予想される。第1期棟(約700ラック収容)はすでに完売しており、第2期棟(約1,100ラック収容)も早速多くの引き合いが来ているとのこと。開設以来大きなトラブルもなく運営が続いている白井データセンターキャンパスだが、今後も引き続きトラブルなく運用されることを期待したい。