以前掲載したキヤノン「EOS R50」のレビューでは、同モデルのことをEOS Rシステムの末っ子と記しましたが、それから3カ月も経たないうちに訂正しければならないモデルが登場しました。それが今回紹介する「EOS R100」です。EOS R50よりもさらにシンプルな機能機構に徹するとともに、最新ミラーレスとしては手ごろな価格設定で、誰でも“カンタン、キレイ、コンパクト”が体感できるカメラに仕上がっています。
簡略化されている部分もあるが、基本性能は上々
まずはその心臓部、イメージセンサーと映像エンジンなどチェックしましょう。イメージセンサーはAPS-Cサイズの有効2420万画素CMOSとなります。これはEOS R50や「EOS Kiss M2」などに搭載されるイメージセンサーと同じ。新たな見どころは正直ありませんが、階調再現性や高感度特性など不足を感じさせるところはなく、EOSシリーズの優れた写りを継承する、ある意味完成度の高いイメージセンサーと述べてよいものです。もちろんAPS-Cサイズですので、スマートフォンなど小さなイメージセンサーの生成する画像よりも、大きく自然なボケが得られやすく、より立体感のある優れた描写が得られます。画素数も十分すぎるもので、手軽な家族スナップやペット写真などから作品レベルの撮影まで、ソツなくこなせます。
映像エンジンは「DIGIC 8」を採用。EOS R50に積む最新の「DIGIC X」に対し、一世代前の映像エンジンとなります。コマ速はワンショットAF使用時で最高6.5コマ/秒、サーボAFで3.5コマ/秒と、最高12コマ/秒を誇るEOS R50とくらべると少々及ばないのですが、実用として考えるなら不足のないものです。常用最高感度はISO12800、拡張によりISO25600相当を達成しているのも注目点。ストロボも内蔵していますので、撮影環境の明るさを選ぶことはありません。なお、高感度域における写りやノイズレベルなどの評価については次回、画像編でご紹介いたします。
映像エンジンといえば、AFにもその性能が大きく影響しますが、キヤノン自慢のデュアルピクセルCMOSとともに高精度で高速のAFを実現。運動会や鉄道、航空機などサーボAFでの撮影でもDIGIC 8は確実に被写体を捕捉してくれます。一世代前の映像エンジンでも、このあたりの性能は見劣りすることはないといえます。測距エリアも他のEOS Rシステムと同様に広く、画面のほとんどの部分を143に分けて測距を行います。なお、被写体認識機能AFについては、顔認識と瞳AFのみとし、人物の後頭部や動物、乗り物といった被写体検出は省略されています。
ユーザーとのインターフェースの要のひとつ、EVFは上位モデルと同等のものが奢られているのもEOS R100の注目点。大きさと解像度は0.39型236万ドットで、クラスとして十分なスペックであるように感じます。その解像感から、しっかりと被写体と対峙できると述べてよいものです。もちろん、視度調整機構も備えていますので、視力の衰えを感じている人も安心して使えます。LCD(液晶モニター)は3.0型104万ドット。EOS R50よりも解像度は低いのですが、EOS Kiss M2など他にもこのタイプの液晶モニターを搭載するカメラは多いので、その見え具合に心配はいりません。この液晶モニターは固定式で、バリアングルタイプであるEOS R50との大きな違いとなります。通常の撮影では問題になることは少ないですが、自撮りの機会の多いユーザーはEOS R50を検討したほうがいいでしょう。
そのボディに関して、液晶モニター以外のEOS R50との目立った違いは、シャッターボタン横にあるISOボタンが省略されていることと、アクセサリーシューがこのところ同社の採用する21ピンのマルチアクセサリーシューではなく、従来と同じ5ピンであることなどです。特にアクセサリーシューに関しては、別売のストロボを購入する際は注意が必要です。「スピードライト430EX III-RT」など5ピン対応のものを選ぶようにしましょう。
ボディ全体のシェイブは、両モデルとも驚くほど同じです。ボディサイズはいずれも116.3×85.5×68.8mm(幅×高さ×奥行き)。コンパクトなボディサイズゆえ、手の大きい人はカメラのグリップを握ったときちょっと窮屈に思うかもしれませんが、反面持ち運びが苦になることは少ないと思われます。いつでもどこへでも持ち運びできるウエアラブルなミラーレスといえます。なお、質量についてもEOS R100はEOS R50よりも19g軽い356gとしています。
操作系もシンプル。フォーカスポイントを選択するマルチコントローラーや、露出補正を行うサブ電子ダイヤルなど搭載されておらず、カメラ背面はスッキリしています。そのため、EOS Rシステムのミドルレンジから上のクラスのカメラを使うユーザーは操作に戸惑うことも少なくないように思えますが、カメラ任せで撮りたいと思うビギナーや、カメラ機能に精通していないユーザーの使用を考えれば、機能と同様に十分かと思えます。撮影モードを「シーンインテリジェントオート」にセットし、撮りたいと思った被写体に出逢ったら、カメラを向けてシャッターを押すだけで、不足のない写りの写真が撮れる、そう考えてよい操作系、引いてはカメラだといえます。
スマホとの連携機能は上位機種と同等
シンプルな機能を売りとするEOS R100ですが、スマホとの連携を図る通信機能は上位モデルと変わりはありません。また、SNSなどへのアップも簡単に行えるアプリが用意されているのも特筆すべきところとなります。
専用アプリ「Camera Connect」により、カメラ内の画像を無線LANにより簡単操作でスマホへの転送が可能。SNSやブログへの写真のアップや友人との写真の共有も手間がかかりません。特に、これまでスマホで画像の編集を行ってきたユーザーは、使い慣れたアプリがそのまま活用できるので、この機能は覚えておきたいものです。また、このアプリではスマホからライブビュー撮影も可能としています。さらにBluetoothでの接続もでき、カメラ内の画像をスマホで確認が可能。その場合、カメラ側の操作は不要なので、カメラバッグからカメラを取り出す必要がないことも特筆すべきところです。さらに同社では10GBのストレージ機能や「Flicer」「Youtube」「Google Photos」「Adobe Photoshop Lightroom」など連携できる有料のクラウドプラットフォーム「image.canon」を運営しており、こちらもユーザーによっては魅力的なサービスとなりそうです。
本モデルの最大の魅力は、その価格にあるといえます。同社オンラインショップでのボディ単体の価格は82,500円。EOS R50は122,100円ですので、約4万円もリーズナブルであることが分かります。EOS R100に「RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM」が付属するレンズキットは97,900円、レンズキットに「RF-S 55-210mm F5-7.1 IS STM」が付くダブルズームキットは127,600円と、いずれも意欲的な価格設定となります。話題のEOSミラーレスは欲しいけど、高くて手が出ないと思っていた人や、スマホよりも高画質で強い望遠効果を手軽に得たいスマホユーザーなどから注目されること請け合いです。
割り切った機能でぐっと価格を抑え、だれでも手軽に楽しめるミラーレスとしたEOS R100。ライバルに対し競争力は極めて高く、今後街中や観光地、学校行事などさまざまなところで見かける機会が増えそうです。すべてのカメラメーカーに言えることですが、カメラの価格が上昇傾向にある現在、このようなリーズナブルで手軽に写真撮影の楽しめるカメラの登場はうれしく思えてなりません。願わくなら、EOS R50のようにブラックのほかホワイトなどカラーバリエーションが選べるとより人気を博しそうに思えます。