皆さんは7月1日に改正道路交通法が施行されることを知っていますか?

電動マイクロモビリティシェアリングサービス「LUUP」を展開するLuupは6月29日、電動キックボードの規制緩和を含む改正道路交通法の施行に合わせて、プレス向け発表会を開催。施行後、LUUPの車両やサービスがどのように変わるのか聞いてきました。

  • Luupが開催したメディア向けの説明会に参加してきました。会場には7月1日以降に配備する、改正道路交通法に合わせて改良した新車両も展示していました

    Luupが開催したメディア向けの説明会に参加してきました。会場には7月1日以降に配備する、改正道路交通法に合わせて改良した新車両も展示していました

LUUPは、アプリ操作で街中に設置されたポートから電動キックボードや電動アシスト自転車を借りられる電動マイクロモビリティシェアリングサービス。貸出地点とは異なるポートへ返却できるので、都市部での短距離の移動に適しています。

利用料金は、ライド基本料金50円+時間料金15円/分。2023年6月29日現在のサービス提供地域は、東京・大阪・京都・横浜・宇都宮・神戸・名古屋の7カ所まで拡大しています。

  • 展開エリアやポート数の拡大に合わせてユーザーも順調に拡大しており、アプリのダウンロード数が100万を突破しました

サービスを利用するときは、乗車前に目的地周辺の返却ポートを決める必要があります。これは、ポートに電動キックボードがあふれかえらないようにするためのもの。前もって目的地のポートが満車だとわかっている場合は、近場で別のポートを目的地に定めるしかありません。

返却時には、ポート範囲からはみ出さずに駐車したようすを写真に撮って報告しなければ、決済が完了しないシステムを採用。これによりポート設置場所へ迷惑がかかる行為を防いでいます。

  • 返却時には駐車した車体の撮影が必要

改正道交法施行で、LUUPの電動キックボード車体はどう変わる?

現行の道路交通法において、LUUPの電動キックボードは、特例措置下の「小型特殊自動車」という扱い。利用には運転免許が必要なほか、ヘルメット着用は任意、最高時速15km、右折方法は小回り右折となっています。

7月1日以降の改正道路交通法では、特定の基準を満たした電動キックボードを「特定小型原動機付自転車」(以下、特定小型原付)に分類するようになります。改正道路交通法施行後の特定小型原付の扱い(一部)は、以下の通りです。

  • 最高時速が20kmに引き上げ
  • 16歳以上であれば、運転免許不要で乗車可能となる
  • ヘルメットの着用は努力義務
  • 車道に加えて普通自転車専用通行帯、自転車道の走行が可能となる
  • 6km以下の場合、歩道と路側帯を走行できる(各種条件あり)
  • 右折方法は、すべての交差点で「二段階右折」となる
  • 電動キックボードは「特定小型原付」という扱いに

  • 「特定小型原付・自転車専用」の標識がある場所では時速20kmで通行可能

  • 車道では一番左側の車線を左側端に寄って走行する必要があります

  • すべての交差点で二段階右折が必要となります

上記の改正に伴って、LUUPの電動キックボード車体はいくつか仕様が変わっています。まずは、時速6kmで走るモード「6km/hモード」の搭載。7月1日以降に配備する全車両に備わります。

この6km/hモードボタンが搭載されている車両の場合、「自転車の通行ができる」標識がある歩道においてのみ、時速6km以下で通行できるようになります(6km/hモード非搭載車両は歩道を走行できません)。

  • 6km/hモードボタンはハンドル右下に配置

ただ、これはあくまで例外的な措置だといいます。

Luup 代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏は、「電動キックボードは、これまで通り、車道や普通自転車専用通行帯が主な走行場所だと考えています」と改めて説明したうえで、「車道に駐車車両が多く左側走行ができない場合など、やむを得ない状況下においては、走行可能な標識のある歩道に入って、危険を回避することを推奨します」と話しました。

  • Luup 代表取締役社長兼CEOの岡井大輝氏

  • 6km/hモードで走行できる場所

次に最高速度表示灯の搭載。ハンドルの両側面に点滅・点灯するライトを新しく備えました。最高時速20kmで走る「20kmモード」のときはライトが点灯し、6kmモードのときは点滅。これにより、電動キックボード利用者がやむを得ず歩道を走っているときに、交通ルールを守っているかがわかります。

  • ハンドルの両端の最高速度表示灯。かなり明るいので、昼間の屋外でも点灯・点滅は問題なくわかると思います

なお、6km/hモードの搭載は2023年7月の時点では任意。最高速度表示灯には搭載までの猶予期間が設けられており、2024年12月までに全台が搭載している必要があります。

猶予期間中は、最高速度表示灯がなくても、他の保安基準を満たしている証明の「認定シール」が貼られているか、特定小型原付用の新ナンバープレートを付けていれば、特定小型原付として公道を走れます。

当面は、これまで提供している車両(6km/hモードを搭載していない特定小型原付)と、7月1日以降に提供開始する特例特定小型原付の保安基準を満たした車両(6km/hモードを搭載した特定小型原付)が存在することになりますが、岡井氏によると「車両の入れ替えは可能な限り早く、順次進めていく」とのこと。

  • ナンバープレートのサイズも変更し、小型化して電動キックボードの幅に収まるサイズになりました。既にシェアリングサービスにて提供している車両に関しては、従来の原動機付自転車用のナンバープレートを取り付けたままでも、特定小型原付としての走行が認められています

  • 「後方確認用のミラーは車両を追い越す際に使うもの」という方針から、自転車同等の速度で走る電動キックボードには取り付け不要になりました

乗車前の手続きも変更、悪質違反にはペナルティも

7月1日以降、LUUPの電動キックボード利用にあたっての変更点は大きく3つ。1つ目は、サービス利用前の「交通ルールテストの全問連続・満点合格」が必要になること。テスト受験前に新しい交通ルールを学んで知識を確認できる学習コンテンツもアプリ内から閲覧でき、しっかりと交通ルールや利用方法を身に付けてから乗れるようになります。

2つ目は、年齢確認書類の提出。これまでは運転免許の提出が必要でしたが、免許不要化にともない、「16歳以上であることを確認するための年齢確認書類」の提出へ変わります。受付可能な年齢確認書類は、マイナンバーカード、運転免許証、在留カード、パスポート(海外パスポートにも対応)。

なお、施行によって日本の運転免許証を所有していない在留外国人や、外国人旅行者も電動キックボードに乗れるようになります。これに伴って、在留外国人・外国人旅行者向けに、LUUPアプリの英語対応を6月19日から開始しています(交通ルールテスト・学習コンテンツも英語対応)。

  • アプリコンテンツは、6月19日から英語対応しています

3つ目は、悪質な違反を行った利用者に対するポイント制ペナルティ。これまでも、飲酒運転などの悪質違反に対してはアカウントの凍結など対処を行ってきましたが、今後はより厳しいペナルティ制度にするといいます。「どのような違反を何回行うとアカウント凍結となるか」といった詳細は、利用者が緊張感を持って利用してもらうために非公開とする方針です。

Luupは、改正道路交通法の施行日である7月1日に、東京・大阪で警察や自治体、地元企業と共同で新交通ルールの安全講習会を開催。7月2日には神戸でも実施します。道路交通法の改正を機に電動キックボードを利用してみたいが、交通ルールや利用方法に不安があるという人は、サービス利用前に一度試してみてはいかがでしょうか。