「USB Type-Cハブの完成度が妙に高い」として一部で有名な中国UGREEN社。2023年3月に「PowerRoam 600」でポータブル電源市場に参入しましたが、早くも第2弾製品「PowerRoam 1200」を投入しました。138,000円という価格はちょっと高いかな…と感じましたが、容量と出力を引き上げたことで消費電力の大きな電子レンジや電気ケトルなど多くの調理家電も問題なく使え、停電時における実用性がさらに高まっています。大きなエネルギーを蓄積するポータブル電源では重要なバッテリーの安全性も確保しつつデザインも上品で好ましく、フル充電の状態で災害への備えとして常備するポータブル電源としてまとまりのよい製品だと感じました。

  • 5月29日に販売を開始した大容量&高出力のポータブル電源「PowerRoam 1200」。直販価格は138,000円だが、Amazonでは期間限定で15%オフのクーポンを用意するほか、+Digital読者限定のクーポンを併用すれば106,260円で購入できる

定評のある機能やデザインはそのままに、容量と出力をアップ

今回登場したPowerRoam 1200は、直販価格79,800円のPowerRoam 600の上位モデル。直販価格は138,000円で、約58,000円高い設定となっています。

  • 左がPowerRoam 600で、右がPowerRoam 1200。デザインは基本的にまったく同じで、縦に長くなった印象だ

PowerRoam 600の発売から間がないこともあり、PowerRoam 1200はPowerRoam 600のコンセプトを継承しつつバッテリーの容量や出力を高めた派生モデルとして仕上げられています。PowerRoam 600の詳細は「ポータブル電源PowerRoam 600レビュー 災害への備えに向く上品な中級機」で紹介した通りで、PowerRoam 1200も以下のような特徴を受け継いでいます。

  • EV(電気自動車)で知られる中国BYDと共同開発した新世代のリン酸鉄リチウムバッテリーを搭載、安全性を高めた
  • 充電サイクル(充電可能な回数)は約3,000回、毎日欠かさず充放電しても10年近くは使える
  • 50分で80%まで充電、90分でフル充電できる急速充電機能
  • 最大100W出力に対応したUSB PD
  • 50Hz、60Hzの両方の周波数に対応、任意で切り替え可能
  • バッテリー残量が0%になった場合でも、USB端子経由で1台のスマートフォンを満充電できる電力を供給する「残量0%緊急モード」
  • 停電時、20ミリ秒以内に出力がバッテリーへと切り替わるUPS(無停電電源)機能
  • さまざまな情報を表示する4.7インチの大型カラー表示パネル
  • ゴツゴツとしたデザインや派手な差し色のないシックでシンプルなデザイン
  • ポータブル電源の状態確認や出力の制御がワイヤレスでできるスマホアプリ
  • 5年間のメーカー保証

PowerRoam 600から強化されたのは以下の点です。

  • 定格出力を1,200W(U-Turbo有効時の最大瞬間出力は2,500W)に向上(PowerRoam 600は定格出力600W、U-Turbo有効時の最大瞬間出力1,500W)
  • バッテリー容量を1,024Whに拡大(PowerRoam 600は680Wh)
  • AC100V出力を6口に拡大(PowerRoam 600は5口)
  • 本体サイズは33.5×22.0×27.0cm、重さは11.5kg(PowerRoam 600は30.4×18.2×23.9cm、9.0kg)
  • 大型のハンドル部分には「1200W」の刻印があり、1,200W出力に対応していることをアピールする。ハンドルは大きくて持ちやすいが、重量が11.5kgに増えたので長時間の持ち歩きは正直しんどい

家にある電子レンジや電気ケトルがふだん通り使える

PowerRoam 1200の大きな強化点が、出力の向上とバッテリー容量の拡大です。これらは、キャンプなどのアウトドアレジャー用途というよりは、停電など災害への備えのためにポータブル電源を購入する人を見据えた強化だと感じます。

災害への備えとしてポータブル電源の購入を検討している人に、停電時に使いたい電化製品は何かと尋ねると、「電子レンジ」や「電気ケトル」が筆頭に挙がるそう。つまり「停電時でも温かい食事や飲み物を味わいたい」というニーズがあることが分かります。しかし、これらの調理家電は消費電力が軒並み1,000W超と大きい点に留意しなければなりません。

PowerRoam 600は定格出力が600Wと低めで、電圧を落としてそれ以上の消費電力の機器を使う独自の「U-Turbo」機能を有効にしても1,500Wにとどまります。電子レンジは消費電力が1,300~1,400W前後の製品が多く、PowerRoam 600だと動いても出力が絞られるので正常に調理できない場合があります。

PowerRoam 1200ならば定格電力が1,200Wに高まり、U-Turbo機能を有効にすると2,500Wまで対応できるようになりました。消費電力が1,400Wの電子レンジを接続してレトルトカレーを温めてみたところ、オートモードでもいつもの時間とほぼ変わらず仕上がりました。電気ケトルもコンセントに接続した時と同じように短時間でお湯が沸かせました。バッテリー容量もPowerRoam 600の約1.5倍に増えているので、かなりの電力を食うそれらの調理家電も十数回は使え、「温かい食事が食べられないので心細い、寂しい」という状態を最大限回避できます。

  • PowerRoam 1200をシャープのスチームオーブンレンジ「ヘルシオ AX-HA20」に接続し、レトルト食品を温めてみた

  • 電子レンジの消費電力は1,460Wとの記載があった

  • 温め調理中、1,200Wを上回る出力で電力を供給した

  • 温めの時間や温度はコンセント経由での調理とほとんど変わりないと感じた

  • 電気ケトルもふだん通りの時間でお湯を沸かせた。出力は1,100W前後

  • 一時期話題になった「弁当箱型炊飯器」は消費電力が300Wだったので、余裕で使えた。炊きたてのごはんが味わえるとホッとする

1kW超の急速充電に対応、ソーラーパネルがあれば安心感が増す

PowerRoam 1200は、バッテリー容量が約1.5倍になったにもかかわらず、PowerRoam 600と同じく90分でフル充電できる急速充電機能を備えているのが注目できます。実際にPowerRoam 1200を壁のコンセントに接続して充電したところ、公称の90分では充電が終わらず10分ほど余計にかかったものの、1kW(1,000W)を超える大電力で充電できた時間もあり、短時間で容量をリカバーできる急速充電の実力は体感できました。停電時、電気が通っている知人宅などにおじゃまして充電させてもらう場合でも、滞在が短くて済むのはありがたいといえます。

  • スマホアプリで充電時の状況を確認したところ。しばらく1,000W超の大電力で充電が進んだため、充電完了予測はカタログ値よりも速い約1時間と表示していたが、このあと電力が数百Wに落ちたことで充電時間が延びた

別売のソーラーパネルによる充電に対応しているのもPowerRoam 600と同様です。200W対応のソーラーパネル「SC200」(実売価格は49,800円)を接続したところ、晴れた日中ならば100W超の電力が安定して発電でき、コンスタントに蓄電できました。コンセント経由の急速充電にはかないませんが、日が長いこの時期ならばかなりの容量まで充電でき、停電が続いた場合でも日中に電力が貯められます。ソーラーパネルを合わせて導入すると、「ポータブル電源の電力がいつしか尽きてしまう」ことへの恐怖から解放されて大いに安心できるでしょう。

  • 別売のソーラーパネル「SC200」を接続したところ。薄曇りでも30W程度の電力が生み出せるなど、発電効率が高い。ソーラーパネルは実売29,800円の100W対応モデル「SC100」も用意する

昨今の燃料価格の高騰を受け、国内でも大半の電力会社が電気代の大幅な引き上げを発表するなど、電気代に対する注目が高まっています。「ポータブル電源とソーラーパネルがあればタダで電気が生み出せる」という点は、家計に敏感な女性が大いに興味を示しそう。ポータブル電源の購入を検討しているものの、10万円を超えるという点で“大蔵省”に反対されている人は、この点をアピールするのもよさそうです。

満足度の高い1台だが、回収の仕組みがあるとよい

出力端子や使い勝手、デザインはPowerRoam 600とほとんど変わりません。特に、ポータブル電源にありがちな派手な差し色やゴツゴツとした装飾とは無縁のデザインは、リビングや書斎に置いても浮かないので好ましいと感じます。消費電力の大きな調理家電を使っている最中や急速充電中の冷却ファンの騒音も、音自体は小さくないものの耳障りではないレベルに抑えられています。

  • USBなどAC100V以外の出力端子は前面に配置。大型のカラー表示パネルは見やすい

  • AC100V端子は6つ用意。3つはアース付きだ

  • AC100V入力やソーラーパネルからの入力は左側面に用意する

完成度の高いPowerRoam 1200で唯一気になったのが、メーカーによる回収の仕組みがまだ整えられていないこと。Jackery(ジャクリ)やAnker(アンカー)、EcoFlow(エコフロー)などのメーカーは、不要になった自社のポータブル電源を回収する仕組みを整えており、正規店で購入したユーザーは安心して処分できます。メーカーのUGREENによると「現時点では回収の仕組みはないが、検討したい」とのことでした。

個人で処分するのが難しいポータブル電源は、「不要になったポータブル電源をメーカーが回収してくれるかどうか」が製品選びの1つのポイントになることは間違いありません。PowerRoam 1200も製品のデキはいいだけに、回収の仕組みを整えて安心して購入できるようにしてほしいと感じます。

【耳寄りセール情報】
UGREENがAmazonで「PowerRoam 1200」とソーラーパネル「SC100」の期間限定セールを実施しており、PowerRoam 1200は15%オフ、SC100は4,000円引きで購入できる。セールは5月29日(月)~5月31日(水)23時59分まで。さらに、読者限定のクーポンコードを入力すると、重ねて割引が適用される。クーポンコードは、PowerRoam 1200が「UG1200MYNAVI」(11,040円引き)、SC100が「SC100MYNAVI」(2,980円引き)。クーポンコードは5月29日(月)~6月4日(日)23時59分まで有効。