小型デスクトップPCを得意とするMinisforumから、モバイル向けの第13世代Intel Coreプロセッサを搭載した「Minisforum Venus Series NPB7」(以下、NPB7)が登場しました。

今回はサンプルを試すことができたので、実機レビューをお届けします。ひとことで言えば、コンパクトで速くて静か、そして安いという実に魅力的な小型PCに仕上がっていました。

  • Minisforum Venus Series NPB7

    Minisforum Venus Series NPB7。Core i7-13700Hを搭載し、完成品でも構成によっては10万円以下で買える

Minisforumから第13世代Intel Core搭載モデルが登場

Minisforumは数多くの小型PCを発売しており、事務用途に適したスペックで小型化を突き詰めた「NUCG5」のようなモデルから、モバイルRyzen+ディスクリートグラフィックスで性能重視に振った「HX99G」、はたまたEコアのみの省電力マシン「UN100」など、用途・ニーズに応じた幅広い選択肢が用意されています。

少しラインナップが複雑で読み解きにくいかもしれませんが、NPB7はMinisforumのIntelモデルとしてはいち早く、最新の第13世代Intel Coreプロセッサ(Raptor Lake)を搭載したことが特徴です。

CPUはCore i7-13700Hのみの設定で、メモリ・SSD・OSライセンス別売りのベアボーンキットで購入するか、完成品として購入するかを選べます。執筆時点では公式サイトで予約割引が実施されており、構成別の価格は下表のとおりです。

構成 通常価格 割引価格
ベアボーンキット 92,900円 74,320円
メモリ16GB+SSD 512GB 116,900円 93,520円
メモリ32GB+SSD 512GB 126,900円 101,520円
メモリ32GB+SSD 1TB 134,900円 107,920円

受注開始当初はメモリ64GBの構成もありましたが、5月25日時点では選択不可となっています。

ベアボーンキットとの差額を見ると完成品の安さが際立ちます。PCIe 4.0対応のM.2 SSDとまだまだ選択肢が少ないSO-DIMMのDDR5メモリが必要になるため、コストパフォーマンス重視なら自分で組むより完成品で済ませるのが得策でしょう。

試用機は完成品の最小構成となるメモリ16GB+SSD 512GBの仕様でした。実機で確認したところ、メモリはCrucial製のDDR5-4800 8GB×2枚、SSDはKingston製。どちらも名の知れたメーカーのパーツで性能的にも十分快適に使えるものですが、「PCIe 4.0規格を活かしてもっと速いSSDを使いたい」などといったこだわりがあるようなら、ベアボーンキットをベースに上を目指す余地はあります。

外観はNAB6とほぼ同じ、工具不要で内部にアクセスできて便利

さっそく開封し、製品の外観や付属品をチェックしてみましょう。とは言っても、実は筐体は一世代前の「NAB6」とほぼ同じもの。性能に関わる部分以外は無駄を省いているからこそ、このような価格で最新スペックのPCを提供できているのかもしれません。

  • パッケージは他機種と共通のもの。余談だが、同じVenusシリーズでもIntelモデルの箱は青、AMDモデルの箱は赤黒で、各ブランドをイメージさせる色合いとなっている

    パッケージは他機種と共通のもの。余談だが、同じVenusシリーズでもIntelモデルの箱は青、AMDモデルの箱は赤黒で、各ブランドをイメージさせる色合いとなっている

  • セット内容はPC本体のほか、ACアダプタ、HDMIケーブル、VESAマウント用金具、2.5インチSATA HDD/SSD増設用ケーブル

    セット内容はPC本体のほか、ACアダプタ、HDMIケーブル、VESAマウント用金具、2.5インチSATA HDD/SSD増設用ケーブル

  • 本体サイズは約127×127.5×54.7mm。Intel純正のNUCより縦横1cmずつ大きい程度で、コンパクトにまとまっている

    本体サイズは約127×127.5×54.7mm。Intel純正のNUCより縦横1cmずつ大きい程度で、コンパクトにまとまっている

筐体のサイズは約127×127.5×54.7mmということで、モバイル向けプロセッサを搭載する小型デスクトップPCとしては平均的なサイズ。小型化とメンテナンス性の良さは相反する要素のようにも思えますが、ワンタッチで手軽に開けてメモリやSSDを交換できる構造となっているあたりは、このジャンルのPCを作り慣れたメーカーならではの上手さを感じます。

パーツ交換などのためにユーザーがアクセスする空間は筐体の上半分のみとなっており、基板を挟んで下半分はまるごと冷却システムのために使われています。中央にファン、その周りを2本の銅製ヒートパイプが囲み、筐体の右側面や後方を見ると大きな開口部から放熱フィンが姿をのぞかせています。

他社製の小型デスクトップPCもいくつか使ってきましたが、NPB7は静音性の高さに感心しました。無理に詰め込みすぎず冷却システムにもしっかりとスペースを割いた堅実な作りのおかげで、小型ファンを高回転で回して必死に冷やすということが少なく、騒音を気にせず快適に使えます。

  • 天板の手前側の角2カ所を押すと、工具不要でパネルを外すことができ、簡単に内部にアクセスできる

    天板の手前側の角2カ所を押すと、工具不要でパネルを外すことができ、簡単に内部にアクセスできる

  • メモリや無線LANカードの姿を確認できる。左端の黒いヒートシンクの下にはM.2 SSDがある。別途、2.5インチSATA HDD/SSDも増設可能だ

    メモリや無線LANカードの姿を確認できる。左端の黒いヒートシンクの下にはM.2 SSDがある。別途、2.5インチSATA HDD/SSDも増設可能だ

  • 内部空間の下半分は冷却システムに割かれており、側面からも大きな放熱フィンが見える

    内部空間の下半分は冷却システムに割かれており、側面からも大きな放熱フィンが見える

インタフェースの充実ぶりも見逃せません。前面・背面あわせてUSB Type-C端子は3口あり、うち2口は最新のUSB4対応でDisplay Port Alt Modeによる映像出力にも使えます。HDMIと合わせて、最大4画面の同時出力が可能です。

USB Standard-A端子は4口のうち2口がUSB3.2 Gen2、残りはUSB3.2 Gen1に対応。LANポートも2.5Gbps対応のものを2口備え、自宅サーバーなど用途によっては重宝しそうです。

  • 前面にはUSB Type-C(USB3.2 Gen2)、USB Standard-A×2、3.5mmオーディオジャックを備える。電源ボタンの右にある穴はCMOSクリアボタン

    前面にはUSB Type-C(USB3.2 Gen2)、USB Standard-A×2、3.5mmオーディオジャックを備える。電源ボタンの右にある穴はCMOSクリアボタン

  • 背面にはUSB4×2、USB Standard-A×2、HDMI×2、有線LAN(2.5Gbps対応)×2

    背面にはUSB4×2、USB Standard-A×2、HDMI×2、有線LAN(2.5Gbps対応)×2

なお、NPB7はUSB Power Delivery(USB PD)には対応していません。念のため、手持ちのUSB PD充電器(65W/90W/100W)を複数用いて試してみましたが、公称通りUSB PDでは起動できずという結果でした。本体が小柄なだけに、大きなACアダプタが必要になるのは惜しい点です。

Minisforumの小型PCには、Core i7-12650H搭載の「NAB6」やRyzen 7 5800H搭載の「UM580」などPD対応の機種もあるので、デスク周りの配線のスマートさを優先するならそちらを検討してみても良いでしょう。

  • 残念ながらUSB PDでの給電は不可。付属の大きなACアダプタを使う必要がある

    残念ながらUSB PDでの給電は不可。付属の大きなACアダプタを使う必要がある

最新世代のモバイル向けプロセッサの性能に驚き!

NPB7は最新の第13世代Intel CoreプロセッサであるCore i7-13700Hを搭載しています。ゲーミングノートやクリエイター向けノートPCなど性能重視のモデルへの採用が多いHシリーズであり、CPUは14コア20スレッド(Pコア6基+Eコア8基)、内蔵GPUの実行ユニット数は96EUと、モバイル版だからとあなどれない性能を秘めています。

  • ベンチマークソフト「PCMark 10」の計測結果

    ベンチマークソフト「PCMark 10」の計測結果

  • ブラウザベンチマーク「Speedometer 2.1」の計測結果

    ブラウザベンチマーク「Speedometer 2.1」の計測結果

CPU性能だけで言えば2世代ほど前までのデスクトップ向けCPUを軒並み上回ってしまうほど高速。内蔵グラフィックスを使うためゲーム性能はあまり高くありませんが、Iris Xeグラフィックスのなかで最も実行ユニットの多い96EUのタイプということで、4Kモニターを含むマルチディスプレイ環境での利用や画像編集などもストレスなくこなせました。

  • 3DMark(Time Spy)の計測結果

    3DMark(Time Spy)の計測結果

  • 「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」では、フルHD・標準品質で「快適」という結果に

    「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」では、フルHD・標準品質で「快適」という結果に

最新世代のCPUに合わせて足回りもしっかり強化されており、メモリはDDR5、SSDはPCIe 4.0とそれぞれ高速な規格が採用されています。

パーツ構成が明示されているわけではなく、購入時期や容量によって変わる可能性も考えられるため参考程度に留めておきますが、試用機に組み込まれていたSSDはKingston製で「OM8PGP4512Q-A0」という型番のものでした。

CrystalDiskMarkでの実測値でシーケンシャルリード約4,800MB/s、シーケンシャルライトは3,500MB/s。PCIe 4.0のSSDとしては特別速くはないものの、一般用途では十分すぎるくらいで、安価な完成品PCの初期装備としては期待以上でした。

  • 完成品に組み込まれていたSSD「OM8PGP4512Q-A0」のCrystalDiskMarkでの計測結果

    完成品に組み込まれていたSSD「OM8PGP4512Q-A0」のCrystalDiskMarkでの計測結果

前提として第12世代・第13世代のモバイル向けIntel Coreプロセッサの性能が目覚ましい進化を遂げているということもあり、10万円前後でこれだけ快適に使えるPCが手に入ることには驚き。ゲーム用途を除く一般家庭のPCとしては、バランスよく満足度の高い製品だと感じました。