ソニーは、高精細な裸眼立体視を実現する「空間再現ディスプレイ」を27型4K画面に大型化し、超解像エンジンで高画質化も図った「ELF-SR2」を6月12日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭価格は55万円前後を見込む。別途Windowsパソコンが必要。

  • ELF-SR2

    ELF-SR2

ソニーが開発した空間再現ディスプレイ(Spatial Reality Display)の新機種で、インダストリアルデザインや医療教育、ヘルスケア、建築、設計といったBtoB領域のほか、エンターテインメント分野、ショールームや展示など一般ユーザーの目に触れるところでの活用も見込む。

  • ELF-SR2の利用イメージ

ELF-SR1」(2020年発売)では、15.6型の4K/3,840×2,160ドットディスプレイパネルを搭載していたが、新型のELF-SR2は27型4Kパネルへとサイズアップ。適切な視聴位置での視野角をほぼカバーする27型画面になったことで、“高さ”のあるコンテンツなどで迫力の立体視を実現する。

  • 左がELF-SR1、右がELF-SR2。ディスプレイの寸法は従来の383×232mmから622×419mm(いずれも幅×高さ)に大型化した

薄型テレビ「BRAVIA」の開発で培った映像処理の仕組みを応用した、「超解像エンジン」をハードウェアとして組み込んでいるのも大きな進化ポイント。エッジや高帯域信号を検出して最適に補正する超解像ゲイン制御を入れ、解像感を損なわない立体映像表示を実現している。2Kコンテンツを4Kアップコンバートし最適化する処理をELF-SR2側で行うことで、接続したPCのGPU負荷を低減し、PCスペックを下げた運用も可能にする。

画質面では、超解像エンジンによって、大画面で目立ちやすくなる色モアレを補正処理。さらに、左右の視線の角度差を考慮したリアルタイム・クロストーク補正処理も導入している。クロストークとは左目用映像に右目用の信号が混じって見えてしまう現象のことで(右目用映像の場合は左目用の信号が混じる)、残像のように見えて解像感を劣化させる原因となる。ELF-SR2ではパネルの局所的温度変化を補正し、クロストークの原因を低減している。

頭を前後左右に動かしても見ている場所に合わせた映像表示をリアルタイムで行える点はそのままに、センシング性能も強化。初代ELF-SR1は、従来の裸眼3Dディスプレイの技術をベースに、独自の高速ビジョンセンサーと顔認識アルゴリズムを組み合わせ、ディスプレイを見ているユーザーの瞳の動きを捉えながら視差による立体視のブレを解消する仕組みを備えていたが、ELF-SR2は高速ビジョンセンサーも“第2世代”に刷新。PCで処理していた顔認識はELF-SR2側で行うようになり、PCのCPU負荷を大幅に低減したとする。

センシング性能を強化したことで、顔の認識精度やトラッキング性能が向上。100ルクス程度の低照度環境においても視線認識率を高めている。ほかにも、さまざまな角度から眺められるように前機種から広視野角レンズの設計を改善し、医療教育現場などでマスクをした状態で見られる機能も導入している。

27型に大画面化したことで、工業製品などの原寸表示確認が可能になり、実物と同じ感覚でCGデザインを確認できるようになった。より正確な色を再現するための10bit処理(8bit+Frame Rate Control)に対応し、Adobe RGB約100%を実現。処理プロセスを見直して再設計し、こだわりの色調整も可能にしている。従来のELF-SR1ではできなかった個別画質調整に対応し、PCアプリからディスプレイの画質調整が行えるようになった。

設置方法については、新たに本体背面に100×100mmのVESAマウントを備え、対応スタンドやディスプレイアームに取り付けて利用できるようになった。左右端のスタンドで45度傾斜させて平面に設置するスタイルはELF-SR2でも引き続き可能で、このスタンドを取り外し可能にしたことでフレキシブルな設置が可能だ。

  • ディスプレイアームに取り付けて利用するイメージ(左)
    医療DICOMデータ表示アプリのデモ(アプリケーション開発:VIEWTIFY サイアメント / デモデータ提供協力:伊勢崎市民病院)

本体に各種操作ボタンを装備する点は従来機種と同じ。背面にはHDMIポート、USB 3.2 Gen1 Type-Cポート(Display-Alt mode対応)、USB Standard-A端子×2、電源端子を備える。USB-A端子はキーボードなどのアクセサリー接続用が1基、本体ファームウェア更新用が1基。3.5mmオーディオ端子も装備する。

ELF-SR2の発売にあたり、ソニーは独自のハードウェアによる体験価値と、各業界で活用できるアプリケーション群の組み合わせによる「xR実現ソリューション」を提案。コンテンツを開発するためのデバイスという位置づけから、より幅広い業界で使われるデバイスとして、立体空間の活用を促進していく。

空間再現ディスプレイを幅広く業務用途で活用できるよう、各業界に役立つ商用アプリを紹介するポータルサイト「アプリセレクト」を立ち上げ、さまざまなアプリケーションを紹介。ELF-SR2発売時点で以下のソフトウェアに対応する。

3DCG Viewer/Player/DCC対応アプリケーション

  • ソニー:空間再現ディスプレイプレーヤー(無償ダウンロード可能)
  • ソニー:空間再現ディスプレイPlugin for preview(2023年中にリリース予定)
  • Psychic VR Lab:STYLY for SRD
  • 神奈川歯科大学XR研究室:SR view

点群データビューワーアプリケーション

  • エリジオン:Inifipoints
  • シュルード設計:Clear points

DICOMビューワーアプリケーション

  • サイアメント:Viewtify
  • 神奈川歯科大学XR研究室:DSR viewer
  • Singular Health Group Ltd.:3DICOM

医療教育用アプリケーション

  • 帝京大学冲永総合研究所Innovation Lab:Cancer Reality
  • 神奈川歯科大学XR研究室:SR anatomy
  • 神奈川歯科大学XR研究室:SR Movie player

対応OSはWindows 10/11(64bit版)。推奨動作環境は、CPUが「Intel Core i5」以上、GPUが「GeForce RTX2070」以上、メモリが16GB以上。前機種で必要としていた「Core i7-9700」(8コア)以上、「RTX2070 Super」以上という要件からやや緩和されている。このほか、4K表示に対応したHDMI出力、またはDisplay-Alt mode対応のUSB type-Cポートが必要だ。なお、ELF-SR2の画面は、タッチ操作には引き続き対応しない。

スピーカーの数は1基になり、モノラル再生対応になった。前機種は2.1chスピーカーを搭載していたが、ELF-SR2では別途用意した音楽再生環境と組み合わせて使うことを想定している。

ELF-SR2本体の消費電力は64Wで、従来の24Wから上がっている(待機時は0.5W以下で共通)。ディスプレイ単体の本体サイズ/重さは622×419×51(幅×高さ×厚さ)/6.5kg、アクセサリー込みで631×309×303mm(幅×奥行き×高さ)/約8.2kg。

長さ1.5mのケーブル付きACアダプターと電源ケーブル(長さ500mm)、長さ2mのUSB-C to AケーブルとHDMIケーブル、マグネット着脱式のサイドパネル×2とボトムスタンド×1、クリーニングクロスなどが付属する。パッケージは発泡スチロールを使わずダンボールとパルプモールドの緩衝材を使った、プラスチックフリー設計になっている。

商用アプリケーションと組み合わせたデモのイメージ

  • 空間再現ディスプレイプレーヤーならびにコトブキヤのフィギュアコンテンツ
    モデルデータ提供協力:壽屋

  • 空間再現ディスプレイプレーヤーならびにコトブキヤのフィギュアコンテンツ
    モデルデータ提供協力:壽屋

  • 空間再現ディスプレイプレーヤーならびにコトブキヤのフィギュアコンテンツ
    モデルデータ提供協力:壽屋

  • モデルデータから起こされた、実際のコトブキヤのフィギュア

  • 医療DICOMデータ表示アプリのデモ(アプリケーション開発:VIEWTIFY サイアメント / デモデータ提供協力:伊勢崎市民病院)

  • 医療DICOMデータ表示アプリのデモ(アプリケーション開発:VIEWTIFY サイアメント / デモデータ提供協力:伊勢崎市民病院)

  • 医療DICOMデータ表示アプリのデモ(アプリケーション開発:VIEWTIFY サイアメント / デモデータ提供協力:伊勢崎市民病院)

  • 医療DICOMデータ表示アプリのデモ(アプリケーション開発:VIEWTIFY サイアメント / デモデータ提供協力:伊勢崎市民病院)

  • 3D NFTアートと組み合わせた鑑賞イメージ
    デモデータ提供協力:VRアーティストせきぐちあいみ

  • 3D NFTアートと組み合わせた鑑賞イメージ
    デモデータ提供協力:VRアーティストせきぐちあいみ