ソニーは、高精細な裸眼立体視を実現する「Spatial Reality Display(空間再現ディスプレイ)」を10月31日に発売する。主に3DCGクリエイターの利用を想定しており、GeForce RTX2060などのGPUを搭載した高性能PCを別途用意する必要がある。ディスプレイ単体の価格はオープンプライスで、店頭価格は税別50万円前後を見込む。型番は「ELF-SR1」。

  • ELF-SR1

    Spatial Reality Display(ELF-SR1)
    ※以下、デモ映像はすべてイメージ

15.6型で4K/3,840×2,160ドット(アスペクト比16:9)のディスプレイパネルを搭載。従来の裸眼3Dディスプレイの技術をベースとし、独自の高速ビジョンセンサーと顔認識アルゴリズムを組み合わせ、ディスプレイを見ているユーザーの瞳の動きを捉えながら視差による立体視のブレを解消。頭を前後左右、奥行き方向に動かしても、視点位置に合わせた立体映像をキレイに浮かび上がらせる。なお、タッチ操作はできない。

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米ラスベガスで2020年1月に開催された「CES 2020」にて「Eye-Sensing Light Field Display」として技術参考展示されていたものを、民生品として製品化した。

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    CES 2020で「Eye-Sensing Light Field Display」として技術参考展示されていた

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    「Eye-Sensing Light Field Display」のデモ機

ターゲットとして、3DCG製作などコンテンツ制作に携わるクリエイターや、映画・アニメ・ゲームのCGデザイナーやモデラー、クルマや建築関連のデザイナー、VR/ARアプリケーションデベロッパーを想定している。CG制作スタジオなどのプロユースのほかにも、ショールームやイベント会場での利用、カーディーラーの販促デモ利用といった、一般ユーザーの目に触れるところでの活用も見込んでいる。

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発売に先がけて、ソニーストアでの先行展示を予定している。10月16日からソニーショールーム/ソニーストア 銀座で展示を開始し、10月23日から札幌、大阪、福岡でも展示開始予定。さらに、11月6日に移転オープンするソニーストア 名古屋でも同日から展示開始する。

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Spatial Reality Displayの主な特徴

高速ビジョンセンサーで捉えた視点の位置に連動した映像を、立体空間にリアルタイムで再生成する独自のアルゴリズムを開発。これにより、動体視差を再現し、目線の変化にも対応したスムースな立体視を実現した。ちなみに、顔認識アルゴリズムを利用するため、マスクをかけていると正常に立体視が楽しめなかった。

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    Spatial Reality Display(左)。右のPCは製品には含まれない

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    Spatial Reality Displayの本体上部の高速ビジョンセンサー

パネル表面には「マイクロオプティカルレンズ」を高精度に配置し、このレンズが映像を左右の目に分割して届けることで、3Dメガネ不要の裸眼立体視を可能にした。明るさは500nitで、コントラスト比は1,400:1、色域はAdobe RGB約100%をカバー。色温度は6500K。

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    Spatial Reality Displayのデモの様子

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なお、ディスプレイは斜め45度の三角型のベースに固定されており、角度変更は行えない。主に、机などに置いて正対する形での利用を想定しているためだ。また、高速ビジョンセンサーで人の視線位置を認識し、4Kパネルの全画素を使って一人に占有描画する仕組みのため、センサーが一度に認識できるのはひとりのみ。

1枚のパネル内で複数視点分、映像を分割して表示するバリア方式とは異なり、複数人での裸眼立体視はできないが、映像の解像感を大幅に高めてスムーズにつなぎ、色再現性や明るさ、コントラストも“鑑賞画質”を実現した。

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    横から見たところ

本体背面にHDMIポート、USB 3.2 Gen1 Type-Cポート、電源ポートを備える。立体コンテンツへの没入感を高めるデザインを採用し、サイドパネルなどのオプションパーツを同梱。パーツはいずれも内蔵マグネットで簡単に着脱できる。

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    HDMIポート、USB 3.2 Gen1 Type-Cポート、電源ポートを背面に備える

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    サイドパネルなどのオプションパーツを取り付けたところ

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    このはんぺんのような三角形のパーツがサイドパネル。これがあると現実との境界がクッキリして、映像の立体感が格段にアップする

ゲームエンジンの「Unity」または「UNREAL ENGINE4」が必要で、コンテンツ制作用の開発ツール(専用SDK)をソニーが提供。ユーザーがあらかじめ用意した3DCGをゲームエンジンを使って読み込み、専用SDKを使ってアプリ化することで、ELF-SR1での立体表示が可能になる。キーボードなどでコンテンツを拡大・回転したり、オブジェクトの色を変えたりといったインタラクティブ要素も盛り込める。

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    開発画面のイメージ

新作映画のアクションシーン再現や、VFXの事前確認などにおいて、ELF-SR1が既に使われているほか、空飛ぶクルマ「SD-03」を手がけるSkyDriveが、その飛行体験をバーチャルで楽しめるモニターとしても採用されている。

「GeForce RTX2060」以上のGPUと「Intel Core i5-9600」以上(6コア以上)、8GB以上のメモリを搭載した高性能PCが別途必要で、GPUは「Radeon RX64Vega」などでも動作確認を行っている。「Quadro RTX6000」と「Intel Core i9 9900K」の組み合わせでは120fps以上の描画が可能とする。

推奨動作環境は、CPUが「Intel Core i7-9700」以上(8コア以上)、GPUが「GeForce RTX2070 Super」以上、メモリが16GB以上、SSDストレージ。4K/60p対応のHDMI出力(HDMI 2.0以上必須)と、USB 3.2に対応したポート、USB 3.0(転送速度5Gbps対応)以上のケーブルも必要だ。

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    本体正面のボタン

表現の幅を広げる高音質2.1chスピーカー(1.5W+1.5W+2.5W)も内蔵している。消費電力は24W(待機時0.5W以下)。本体サイズは383×231×232mm(幅×奥行き×高さ)、重さは4.6kg。

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    2.1chスピーカーを内蔵している