韓国のeスポーツチーム「DRX」は、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の部門において4つの拠点を持っています。今回はそのうちの1つ、選手たちの練習ルームがあるゲーミングハウスを見学できたので、その内容をお届けします。

記事前半には、「DRX」のチーム紹介とゲーミングハウス見学の模様を、記事後半には、stax選手とFoxy9選手へのインタビューを掲載しています。

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    「DRX」Foxy9選手、Zest選手、stax選手、MaKo選手、Rb選手

国際大会で数々の実績を持つ、韓国代表チーム「DRX」

「DRX」は、2022年の年間王者を決める世界大会「VALORANT Champions 2022」で、世界3位に輝いた実績を持つ韓国の強豪チーム。今年に入ってからも、ブラジルで行われた国際大会「VCT 2023: LOCK//IN サンパウロ」(以下、LOCK//IN)にてセミファイナルに進出し、ベスト4という結果を残しています。

また、現在出場中の国際リーグ「VALORANT Champions Tour 2023 Pacific League」(以下、VCT Pacific)でも、圧倒的なパフォーマンスを発揮し、Week6終了時点で暫定トップをキープしています。

「DRX」といえば、完成度の高いセットプレイが持ち味のチームです。セットプレイとは、あらかじめチームでアビリティの使い方や動きの役割を決めておく作戦のこと。これまで「DRX」は、さまざまなバリエーションの洗練されたセットプレイを披露し、何度も圧倒的な展開を見せてきました。

なお、もともと「DRX」は、2022年1月まで前身のチーム「Vision Strikers」(VS)として活動していました。そのため、アイスボックスなどで見られる特徴的なセットプレイは、通称“VS設置”とも呼ばれています。

高層マンションにある2つのゲーミングハウスで生活

「DRX」の4つの拠点は、すべて高層マンション内にあります。選手たちが生活するゲーミングハウスが2つ、撮影やクリエイティブ制作を行うメディアスタジオ、そしてオフィスです。それぞれの拠点は、徒歩で行き来できる距離に位置しています。

今回見学したのは、練習ルームがある1つ目のゲーミングハウス。案内してくれたのは、リーダーのstax選手とFoxy9選手の2人です。Foxy9選手は、過去に日本のチーム「Reignite」に所属していた経歴があり、簡単な日本語を話すことができるため、今回は日本語で話しながら案内してくれました。

まず見せてもらったのは、日々の練習試合やチームミーティングに使われている練習ルームです。「DRX」のロゴが掲げられている広々とした練習ルームには、選手たちの席が並び、コーチの席やフィードバックに使う大きなモニターなどが用意されていました。

Foxy9選手によれば、1日の練習時間は13~16時間。練習時間だけでも相当な長さですが、「メンバーと長い時間を一緒に過ごすことが大事」であると考え、食事の時間もメンバーでそろって食べるなど、共同生活によってチームの絆をより深めることが意識されています。

しかし、意外なことに、生活におけるルールはあまり細かく決まっていないとのこと。およそ半年前に「DRX」に加入したFoxy9選手は、「もっとルールが多いと思っていたけど、チームに入ったら想像していたより自由時間が多かったです。でも、その自由時間にみんな個人練習をしているから、それを見て自分も練習しています」と話していて、チーム全体のストイックさがうかがえました。

なお、練習ルームにはあちこちに、デバイスの箱が置かれていました。これらは、選手たちがベストな状態で使うために用意された、交換用のデバイス。特にマウスやマウスパッドは使い続けていると使用感が変わることから、ほとんどの選手は3カ月に1回くらいの頻度で交換しているそうです。

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    選手やコーチの席が並ぶ、広々とした練習ルーム

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    一番奥にあるデスクはコーチの席

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    フィードバックなどを行うときに使われる大きなモニター

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    Zest選手の席

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    BuZz選手の席

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    stax選手の席

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    MaKo選手の席

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    Rb選手の席

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    Foxy9選手の席

見学したゲーミングハウスには、練習ルームのほかに、stax選手、Zest選手、MaKo選手の部屋があります。もう1つのゲーミングハウスには、食事をするダイニングルームなどがあり、そちらにFoxy9選手、Rb選手、BuZz選手の部屋があります。

今回は、stax選手が自身の部屋を案内してくれました。stax選手の部屋は、最低限の物だけが置かれていて、とてもシンプルな雰囲気。練習後の休憩時間には、映画を見たり音楽を聴いたり、『VALORANT』以外のゲームをしたりして過ごしているといいます。

洗面所やシャワールームなどは先に起きた人から順番に使う決まりがあるくらいだそうですが、とてもきれいに保たれていました。なお、今回は見学することができませんでしたが、マンションの共有部には、トレーニングジムやラウンジ、スパなどがあり、そうした設備も選手たちが利用できるようになっています。

こうしてゲーミングハウスを見学してみると、選手たちが練習に集中できる環境が十分に整えられていることがわかります。そして、高層マンション内のゲーミングハウスで生活していると聞いて想像する華やかさとは裏腹に、無駄のないストイックな生活を送っていることも伝わってきました。

現在、およそ2カ月にわたる「VCT Pacific」に出場するために、各チームが韓国に拠点を置いて生活していますが、自国で開催されている「DRX」にとっては、ゲーミングハウスでの生活は必須ではないはずです。しかし、こうした共同生活を送りながら練習に打ち込んでいることが、「DRX」の強さを裏付けているのかもしれません。

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    物が少なく、とてもシンプルな雰囲気のstax選手の部屋

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    日が差し込む、開放的できれいなシャワールーム

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    洗面所やシャワールームは、先に起きた人から順番に使うのだそう

「DRX」オフィスにてstax選手&Foxy9選手にインタビュー

ゲーミングハウスの見学を終えたあと、「DRX」のオフィスに移動し、stax選手とFoxy9選手へのインタビューを行いました。ゲーミングハウスでの生活についてや、「LOCK//IN」でのベスト4獲得後の目標、「VCT Pacific」の開幕戦で戦った「ZETA DIVISION」への印象などについて聞いています。

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    インタビューに応じてくれたstax選手とFoxy9選手

――皆さんの1日や1週間の練習スケジュールについて教えていただけますか?

stax:くわしいスケジュールの内容については、対外秘になっているため、残念ながらお話することができません。だいたい11時半くらいに起きて、明け方まで練習している、というのが1日の大まかなスケジュールです。これはチームでの練習も、個人での練習も含めてですね。

1週間のスケジュールについては、試合がかなり先にあるときは、5日練習して2日休むようにしています。試合が近づいてきたら、日曜だけ休み。試合が間近になってきたり、大会期間中に入ったりしたら、休みなしでやっています。

――すごくハードなスケジュールだと思うのですが、つらいと感じることはありませんか?

Foxy9:もちろん大変なんですけど、世界大会で優勝したいし、今回の「VCT Pacific」でも優勝したいと思っているので、大変だと思う気持ちを抑えてがんばっています。

stax:私も昔はFoxy9と同じような考えで、大変でも我慢してがんばろうと思っていました。でも、今はだんだん年を取ってきたからなのか、大変なときは家に帰りたいです(笑)。

※Foxy9選手は、2004年生まれで現在19歳。stax選手は、2000年生まれで現在23歳。

――ゲーミングハウスではジムも利用できるそうですが、トレーニングはよくしますか?

stax:Foxy9くらいの年齢だったら、あまりやる必要がないと思いますが、私は必要性を感じているので、1時間くらい早く起きて体を鍛えています。

Foxy9:自分はあまりしないです(笑)。

――体を鍛えることは、ゲームプレイにも影響すると思いますか?

stax:2022年の「VCT Masters Reykjavík」でアイスランドに行ったときに、すごく疲れてしまって集中できなかったんです。そこで、体力の大事さを実感しました。それに、練習するときにも体力がないとつらいので、そういう意味で体を鍛えることは重要だと思っています。

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――Foxy9選手が「DRX」に加入した経緯を教えてください。

Foxy9:日本のチームから離れてチームを探していたとき、いろいろなチームから連絡をいただきました。そのなかで「DRX」から連絡をもらって、自分もびっくりしました。

――Foxy9選手が加入して、チームにどのような変化がありましたか?

stax:とても多くの変化がありました。ゲームの面でもそうだし、ゲーム以外の面でも、とても良い変化をもたらしてくれていると思います。新しい一面というか、「この人は本当に韓国人なのかな?」と思うような、未知のものを見る感覚です(笑)。

――「LOCK//IN」ではベスト4という成功を収めましたが、今の目標を教えてください。

stax:「VCT Pacific」では圧倒的な1位を取りたいし、世界大会でも1位になるのが今の目標です。「LOCK//IN」はすごく良い成績だったと言われていますが、自分たちにとっては時間がもったいなかったなと感じます。自分たちの時間が全然なかったので、そのあたりが残念でした。

「Talon Esports」との試合を戦ったあと、次の試合まで10日くらい空いて、その間もずっと練習ばかりしていました。韓国に帰ってきたら、1カ月くらいですぐ「VCT Pacific」の期間に入ってしまったので、いろんな意味で大変でした。

――「VCT Pacific」開幕戦では、「ZETA DIVISION」に圧勝しました。戦ってみて、今「ZETA DIVISION」には何が必要だと感じましたか?

※本インタビューは、「VCT Pacific」開幕戦Week1の翌々日に実施したもの。

stax:みんな少し自信がなかったように感じました。あと、少し昔に戻ったような気がします。「ZETA DIVISION」はチームプレイをしようとして、そこに集中していたのに、いきなり何も考えないFoxy9が突っ込んで、めちゃくちゃにしてしまいました(笑)。

それから、試合をする環境が初めての場所で、かつ最初の対戦相手が韓国チームの「DRX」だったから、苦戦した部分があったかもしれません。2戦目以降は、環境にも慣れてきて、また違ったプレイが見られると思います。

――それでは最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

Foxy9:昔から応援してくださっている方々に、心から感謝しています。ファンの方がつくってくださるファンアートやプレゼントなどを見ると、とても真心を感じます。本当にありがとうございます。期待に応えるようにがんばりますので、これからもよろしくお願いします。

stax:昨年「Riot Games ONE」に出場するために日本に行きましたが、日本には良い思い出が多いですね。ファンも良い方々ばかりで、試合の外でも皆さんとの時間をたくさん過ごしたかったのですが、いろいろな状況で叶わず、サインできなかったファンの方が多くいました。

自分の気持ちとしては1日空けて、2万人でもファン全員にサインをしてあげたいところですが、今はそれができなくて残念です。ですが、日本でたくさんの良い思い出があるので、また東京で皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

――stax選手、Foxy9選手、ありがとうございました!

「VCT Masters Tokyo」の出場権獲得に最も近いチーム

「DRX」オフィスの壁には、昨年の「Riot Games ONE」にて配布された、「VCT Masters Tokyo」開催決定の号外が貼られていました。「VCT Pacific」では出場10チームのうち、トップ3チームが「VCT Masters Tokyo」への出場権を手にします。

「DRX」は、「VCT Pacific」Week6終了時点で、いまだ無敗。暫定トップに立っており、「VCT Masters Tokyo」への出場権獲得に最も近い位置にいます。「Riot Games ONE」に続き、再び日本で「DRX」の姿を見られる日も近いのではないでしょうか。

また、今回の取材では、ストリーマーのClutch_Fさんがゲーミングハウスを訪れ、動画の撮影を行っていました。YouTubeで公開されていますので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。

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    「DRX」オフィスに貼られていた「VCT MastersTokyo」開催決定の号外

VCT PACIFIC TOUR with Clutch_Fi #3|DRXゲーミングハウス潜入編