キヤノンが、ミラーレスカメラの末っ子モデル「EOS R50」を発売しました。“キスデジ”として親しまれた一眼レフのEOS Kiss DIGITALシリーズの「かんたん・きれい・コンパクト」のDNAを受け継いだ入門機で、小型軽量ながらイマドキの高性能に仕上げられています。大浦カメラマンに、特徴や実力をチェックしてもらいました。

  • 実質的にEOS Rシステムの“Kiss”と位置づけられる「EOS R50」。小型軽量でシンプルな操作性が特徴のミラーレスです。ボディカラーは、写真のブラックのほかにホワイトも用意。実売価格は、ボディ単体モデルが111,100円、標準ズームレンズ「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」が付属するレンズキットが126,500円、標準ズームレンズと望遠ズームレンズ「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」が付属するダブルズームキットが156,200円

「カメラ任せできれいな写真が撮れる」コンセプトを継承

EOS R50は、APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載するRFマウントのミラーレスカメラ。APS-Cフォーマットを採用するRFマウントのカメラは「EOS R7」「EOS R10」に続き3モデル目となります。

  • マウントがひときわ大きく感じられるカメラ前面部。本来、RFマウントはフルサイズのイメージセンサーに対しても余裕ある大きさなので、APS-Cサイズでは余裕ありすぎな感じとなります

  • 望遠ズームレンズ「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」を装着してもコンパクト。ストラップホールは、他のEOS Rシステムのものよりひとまわり小さいため、ストラップの交換を楽しみたいユーザーは要注意です

EOS R50は、名前の数字からも分かる通り、シリーズのもっとも下位に位置付けられ、デジタル一眼レフEOSでいうところの「EOS Kiss」シリーズに該当するものです(本モデルの記者発表会では、メーカーみずから“Kiss”に相当するモデルである旨の発言がありました)。そのためボディは、EOS Rシステムとしてはとても軽量コンパクト。何より、ボタン・レバーなどの操作部材は最小限としており、これまでの“Kiss”と同様シンプルなつくりとしています。つまり、カメラ任せで撮影が楽しめることの証と考えてよいでしょう。

  • EOS R50の背面部。液晶モニターはバリアングルタイプで、3.0型162万ドットとなります。マルチコントローラーやサブ電子ダイヤルは省略されているため、背面部はシンプル。電源スイッチはモードダイヤルと同軸の位置に置かれています

  • カードスロットは、多くのエントリーモデルがそうであるように、バッテリーボックス内に設置されます。バッテリーは「EOS RP」などと同じ「LP-E17」を使用。フル充電からの撮影可能枚数は、EVF使用時で約320枚、ライブビュー撮影で約440枚としています

撮影に関する機能を見ると、EOS R7やEOS R10などと同様に一度捕捉した被写体を選択した測距点の位置にかかわらず、ファインダー内で追い続けるトラッキング機能や、被写体をカメラが判断し、ピントを合わせ続ける被写体検出機能、より進化したシーンインテリジェントオートモードなどを搭載し、これまで以上に精度の高いカメラ任せでの撮影が楽しめるものとしています。今回は、そのカメラのコンセプトに従い、シーンインテリジェントオートモードや被写体認識機能などを使って撮影しました。

前述のように、カメラ本体が軽量で手のひらサイズであることに加え、高速のAFとトラッキング機能を含めた高い被写体捕捉性能により、本モデルはまさにスナップシューター。シーンインテリジェンス撮影モードでは、撮影者はカメラを被写体に向けてシャッターを切るだけ、と述べても過言ではありません。実際に、シャッターボタンを半押しさえすれば、被写体がファインダー内のどこにあってもカメラが自動でピントを合わせますし、条件によってはトラッキング機能が働き、被写体がファインダー内にある限り捕捉し続けてくれます。測距点が選べないシーンインテリジェントオートモードでは、思ったところに合焦しないことも時折ありましたが、それは機能を絞った結果なので致し方ないところなのかもしれません。

被写体認識機能についても被写体を確実に捕捉するので、撮影者はシャッターチャンスや被写体の動きに集中できます。子どもやペットをはじめ、動いている被写体の撮影ではとても効果的であるように思えます。マルチコントローラーやサブ電子ダイヤルは搭載されていませんが、カメラの機能がそれを補足してくれると言っても過言ではありませんし、想定されるユーザーのスキルや使い方、被写体を考えるとある意味十分と述べてよいでしょう。なお、EOS R50の被写体認識機能は「EOS R6 Mark II」や「EOS R7」などと異なり、一世代古いものとなります。したがって「動物優先」の「馬」や、「乗り物優先」の「鉄道」「飛行機」は搭載されていません。それらの撮影の場合は通常のAF同様、ユーザーが測距点を選ぶ必要があります。

そのほか注目しておきたい機能としては、シーンインテリジェントオートモードのなかの「アドバンスA+」があります。カメラが被写体の状況に応じて、複数の写真を連続撮影し、カメラ内で合成を行うことで、白トビや黒ツブレを抑えた写真や、画面手前から奥までピントの合った写真を生成するものです。複数のカットを撮りますが、三脚は不要で手持ちでの撮影が可能なので、手軽に楽しめるのも魅力。複数枚の画像を合成する関係上、動く被写体の撮影には適しませんが、さまざまなシーンで活躍してくれそうです。EOS R50ユーザーはこの機能を覚えておくとよいと思います。

  • シーンインテリジェンスモードでは、デフォルトの「クリエイティブアシスタント」のほか、「クリエイティブブラケット」と「アドバンスA+」から選択できます。そのうち「アドバンスA+」は、白トビや黒ツブレを抑えた写真や、画面手前から奥までピントの合った写真を生成できます

  • シーンインテリジェンスの「クリエイティブアシスト」(左)と、同じく「アドバンスA+」(右)での比較となります。アドバンスA+で撮影したカットは、深度合成が働き、ほぼ被写体の全域にピントが合っています EOS R50・RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM・シーンインテリジェンス・WBオート・JPEG

本モデルは、一眼レフ時代から続くEOS Kissシリーズのコンセプトである「かんたん・きれい・コンパクト」を継承し、さらにミラーレスならではの機能をより突き詰めたカメラと言えます。ベテランの写真愛好家が、ふだん使っている自分のカメラと同じような感覚で扱うと使いにくさを感じる部分もありますが、オート主体のカメラだと割り切って使う分には手軽で楽しいカメラですし、エントリーユーザーや普段カメラを触ることの少ない人などにとっては、これほど頼もしいカメラはないように思います。さらに嬉しいのは価格設定。実売価格は、ボディのみで11万円前後、標準ズームレンズ「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」が付属するレンズキットで126,000円前後と比較的お手頃プライスですので、今後市場を大いに賑わしてくれそうです。

  • 間違えて「検出する被写体」を「乗り物優先」に設定して撮影してしまったカット。「鉄道」の認識機能は搭載されていないため、一般的な自動選択AFとなりました EOS R50・RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM・プログラムAE(絞りF8・1/500秒)・ISO800・WBオート・JPEG

  • こちらも被写体認識機能で撮影。「鉄道」は搭載されていませんが、ほぼガチピンの写真が得られました。「検出する被写体」では「乗り物優先」のほか、「自動」「人物」「動物優先」から選べます EOS R50・RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM・プログラムAE(絞りF8・1/500秒)・ISO800・WBオート・JPEG

  • 運河の暗さに引っ張られて露出オーバーになるかな、と思えた撮影シーンですが、まあまあの結果に。AFも船舶にピントを合わせています EOS R50・RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM・シーンインテリジェンス(絞りF5.6・1/100秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • ちょっと意地悪して、右上の実と左の葉っぱがほぼ同じ距離になるような位置で撮影。測距点は実のほうに現れました。撮影者が測距点を選べないシーンインテリジェンスモードでも、ほぼ思った位置にピントを合わせてくれました EOS R50・RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM・シーンインテリジェンス(絞りF6.3・1/160秒)・ISO320・WBオート・JPEG

  • スペシャルシーン撮影モードの「HDR逆光補正」での撮影。写真の撮影シーンは逆光ではありませんが、それでも背景の明るさにつられて暗くなりがちな被写体を明るく写すことが可能です EOS R50・RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM・スペシャルシーン(絞りF5・1/640秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • 被写体認識機能の「人物」が機能してピントを合わせたと思ったのですが、よくよく考えてみると、一般にAFはカメラに一番近い被写体にピントを合わせるアルゴリズムとなっていますので、その判断はちょっと難しいところです。しかしながら合焦の精度は極めて高く思えます EOS R50・RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM・シーンインテリジェンス(絞りF6.3・1/1250秒)・ISO500・WBオート・JPEG

  • こちらは、ユリカモメの目と重なる位置に測距点が現れていたので、被写体認識の「動物優先」が機能していたものと思われます。ピントの状態も申し分のないものです EOS R50・RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM・シーンインテリジェンス(絞りF7.1・1/1250秒)・ISO500・WBオート・JPEG

  • 気になるシーンと出逢ったら、さっとバッグから取り出し、サクッとシャッターを切る、EOS R50はそんな撮影に適したカメラです。起動も比較的早く、ストレスを感じることはありません EOS R50・RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM・シーンインテリジェンス(絞りF6.3・1/640秒)・ISO320・WBオート・JPEG

【編集部より】今回の評価に用いたEOS R8は試作機のため、製品版とは異なる場合があります。作例はいずれもリサイズして掲載しています。