透明なアクリル家具「TRANSPARENCY」を展開する新興プラスチックスは、「透明な未来展」と題した展示品紹介を東京・京橋にある同社ショールームで4月12日に開催。TRANSPARENCYの家具を中心に展示しているこのショールームで、後ろが透けて見える透過型有機ELディスプレイ(LG製)を今後常設展示するとしました。透過率約40%の有機ELディスプレイ、一体どんな活用法を見据えているのでしょうか。

  • 透明OLEDの30インチモデル。卓上に置いてアクリルパネルの代わりなどに使う用途を想定しています

  • 透明OLEDの55インチモデル。後ろに手をかざすと、透けていることがわかります

LGディスプレイの透明OLED、日本のサイネージ市場へ本格展開

今回常設展示として公開されたのは、LGディスプレイの「透過型有機ELディスプレイ」(透明OLED)の55インチモデル・30インチモデル。背景が透ける透明な強化ガラスと有機EL材料を採用し、透明なディスプレイに映像を表示できることが特徴です。

LGではもともと透明OLEDを量産しており、すでに韓国や米国、ヨーロッパなどの地域で透明OLEDのサイネージ製品を販売しています。今回の常設展示は、LGディスプレイと新興プラスチックスが共同で、日本のBtoB市場への本格的な製品展開を狙うもの。パネル製造をLG Displayが、サイネージへの製品化を電子棚札やサイネージ事業などを手掛けるL&Sが、販売や表示コンテンツの作成を新興プラスチックスが手掛ける座組みで、2023年4月頭から営業を開始しているといいます。

  • 55インチモデルの吊り下げタイプ

  • 一面に表示する映像ではあまり透明さを感じません

  • 横から見たところ。厚みは約6.15mmで、55インチと大型の画面ながら垂れ幕のような存在感です

アナログな製品にデジタルの情報をかぶせて展示

透明OLEDサイネージの魅力は、設置場所に開放的な空間を提供することや、製品自体のデザイン性の高さなどいくつかありますが、大きなポイントの1つとして、「アナログ製品とデジタル情報を融合できること」が挙げられます。

例えば、時計やアクセサリーなどの物理的なアイテムを展示すると同時に、それにまつわる情報や視覚的な演出をディスプレイ上に表示できるといった具合です。海外では博物館の展示説明や商品のショーケースなどにも使われているとのこと。

このほか、お店の壁一面を透明OLED化したり、受付案内板として翻訳情報を表示したり、電車の窓ガラスで使い情報表示したり、アミューズメント施設の演出で活用したりといった用途も考えられるといいます。電車への導入は実施例があり、2021年にJR東日本が観光列車「リゾートしらかみ 青池編成」にて導入、車外の天候や気温、日没時間などの情報や観光コンテンツなどを表示する試験搭載を行っています。

パネル自体が薄型軽量であることもポイント。約4mm厚の強化ガラス・約1mm厚の透明有機EL材料・約1mm厚の強化ガラスの3層構造で、全体としては約6mmの薄さに収まり、吊り下げや複数パネルを組み合わせた利用もしやすくなっています。

新興プラスチックスでは、1面式スタンドタイプ(55型)/天井から吊り下げるハンガータイプ(55型)/2面式スタンドタイプ(55型×2枚)/タッチパネルタイプ(55型)/複数パネルを組み合わせたマルチタイプ(55型×複数枚)/卓上向けタイプ(30型)という製品展開を予定しています。価格例は、1面式スタンドタイプ(55型)が約140万円、卓上向けタイプ(30型)で約100万円としています。

  • 1面式スタンドタイプ(55型)

  • スケジュールや天気、気温などの情報表示にも適しています

  • こちらはタッチパネルタイプ(55型)

  • 2面式スタンドタイプ(55型×2枚)。上下で違う映像を組み合わせることも可能

  • マルチタイプ(55型×複数枚)。写真では4枚の55インチモデルを組み合わせています

デジタルサイネージ市場はここ数年で商品開発が進み、例えばジャパンディスプレイ(JDI)は透過率90%となる透明液晶ディスプレイの20.8型モデルをCES 2023で公開、2023年秋に量産予定であることを発表。また、シャープがE Inkと協業し、表示保持時に「消費電力0W」となる42型モノクロ電子ペーパーディスプレイを4月上旬に提供開始するなど、新しい製品が登場しています。ただし、製品化を担当するL&Sによると、今回の製品は現行の液晶サイネージを競合として見ているとしました。

展示してある透明OLEDはいずれも有機ELの発色の美しさが印象的。また、後ろが透過された状態で映像を見ることで、コンテンツを立体的に感じる場面もありました。今後は75インチモデルを2023年夏以降に提供予定とのこと。また、LGはCES 2023で透明テレビ「OLED T」も展開していることから、コンシューマ向け展開について尋ねたところ、この先量産技術が進み価格が落ち着いてきたらコンシューマ向け製品を出すことも検討していると話がありました。

  • 新興プラスチックスの「TRANSPARENCY」ショールーム

55インチモデルの概要

  • 解像度:1,920×1,080ドット
  • 輝度:400cd/平方メートル
  • 透過率:38%
  • アスペクト比:16対9
  • 表示色:1.07億色
  • 入力信号:HDMI×1、DP(IN)×1、DP(OUT)×1
  • 消費電力:200W
  • 本体サイズ:1225.5×800×6.15mm
  • 重さ:約17kg

30インチモデルの概要

  • 解像度:1,366×768ドット
  • 輝度:350cd/平方メートル
  • 透過率:43%
  • アスペクト比:16対9
  • 表示色:1.07億色
  • 入力信号:HDMI×1、DP(IN)×1、DP(OUT)×1
  • 消費電力:100W
  • 本体サイズ:687.40×505.7×5.6mm
  • 重さ:約7kg