Microsoftは現地時間2023年4月6日、「Windows 365 Frontline」を発表した。厳密には招待制のプレビュー版で誰もが試せるわけではないが、これでWindows 365はFrontline・Business・Enterpriseという3エディションの選択肢を用意したことになる。ちなみにWindows 365は、Microsoft Cloud(Microsoft Azure)で動作する仮想PC環境でWindows 10やWindows 11を実行し、業務アプリを実行したり関連データの漏えいを防いだりするという、従業員に対する業務用PCの貸与を代替するソリューションだ。
企業がMicrosoftと契約し、Microsoft Intuneで仮想PCを管理するため、個人が趣味で契約するには少々厳しい価格設定である。もっとも安価な仮想マシン(vCPU×2、4GBメモリー、64GBストレージ)でも月5,000円(税別)のサブスクリプション料金が発生するので(ハイブリッド特典付きサブスクリプションは4,380円)、単独のPCを購入したほうが割安だ。Microsoft 365 Frontlineのサブスクリプション料金は未発表だが、フロントラインワーカー(現場従業員)向けであることを踏まえると、より安価な値付けがなされるだろう。
筆者は古い人間なのでローカルPC主義である。ハイパワーのPCを複数台併用しつつ、環境面が許せばラックマウントを設置してサーバーも運用したかったくらいだ。ただ、コロナ禍など諸般の事情からサーバー類の使用頻度も激減し、現在ではWindows Serverは不要になった。ノートPCと2in1 PCを除けば、Windows 10またはWindows 11のデスクトップPC×2台で十分こと足りる。筆者の好みはさておき、この10年程度でクラウドが浸透してvGPU(仮想GPU)も少しずつ広まってきた状況を踏まえると、ネットワークインフラさえ確保できれば、シンプルな端末化するローカルPCの性能は必要最小限で十分なのだろう。
そうなると、クラウドWindowsの存在感が増してくるのも当然だ。Windows 365のクライアントはWindows PCでもmacOSでもかまわないし、iPad OSやAndroidも対応している。今後は家庭内の無線LAN(Wi-Fi)環境もよりパフォーマンスアップするはずで、ノートPCやタブレットに対するデスクトップ描画転送に不満を感じなくなると思う。
古い話になるが、1985年に登場した肩かけ3キロの携帯電話「ショルダーフォン」がスマートフォンへ進化したように、PCの有り様のみならず、使い方自体も大きく変化しそうだ。ただ、Windows 365は実質的にMicrosoft 365サブスクリプション(Windows 10およびWindows 11 Enterprise、Microsoft Intune、Azure AD P1 ライセンス)が必要となり、PCを購入するとすぐに使えるWindows 10やWindows 11とは大きく異なる。
個人向けWindows 365がそろそろ登場してもいいころだ。前述のとおりWindows 365 Frontlineは企業の現場従業員向けだが、我々が日常的に使うには性能不足&コスト高。現在のMicrosoftはBtoBに軸足を置き、一般消費者を対象としたBtoC領域は過去のビジネスを継承するにとどまっている。収益構造を踏まえればしかたないが、DOS時代からWindowsの進化を見てきた一人のユーザーとしては寂しい限りである。