海外でも話題のスマートフォン、サムスンの「Galaxy S23 Ultra」と「Galaxy S23」が日本でも発売になります。両モデル共に世界シェア1位のサムスンの誇るフラッグシップモデルであり、優れた性能を有しています。このGalaxy S23シリーズが生まれる以前もサムスンは長年にわたり様々な製品を世の中に送り出してきました。そこでサムスンのこれまでの軌跡を振り返ってみようと、韓国・スウォン市のサムスン電子本社内にあるサムスンイノベーションミュージアムを訪れ、スマートフォンの歴史を見てきました。
サムスンイノベーションミュージアムはサムスン製品に限らず、電子産業の黎明期から最新のスマートフォンに至るまで様々な展示を見ることができます。ボルタの電池やモールス信号といった、教科書に出てくるような古い技術の展示も見ものです。その後の高度成長期時代の「華」とも言えるカラーTVはソニーなど日本メーカーの製品も展示。当時は今のiPhoneのように、誰もが日本メーカーの最新モデルを心待ちにしていたのです。
展示物を見ながらちょっとしたクイズに答えていくうちにIT製品の歴史を学べるのもこのミュージアムのいいところです。またラジオやTVがどんどん小型化、薄型化されていく様を見ながら技術革新の流れを体感することもできます。
さて今回はスマートフォンに興味があるということで、特にトランシーバーから始まった携帯電話の歴史のあたりを重点的に説明してもらうことにしました。今のスマートフォンもそのルーツは携帯電話。携帯電話の進化を知らずしてスマートフォンを理解することはできないのです。
世界初の携帯電話はモトローラが開発したことはよく知られています。1983年に発売された「DynaTac 8000X」で、価格は3,995ドル。現在の価格では100万円程度に相当します。8時間の充電で30分しか使えなかったものの、これさえあればどこへ行ってもコミュニケーションが取れる夢のデバイスだったわけです。またサムスンは1988年のソウルオリンピックにあわせて韓国初の携帯電話「SH-800」を開発しました。このころの携帯電話はとにかく大きく、モトローラが1989年に出した「MicroTAC」ですら小型フリップフォンとして人気になりましたが、人々は「レンガ」というあだ名をつけたほどです。
その後、携帯電話はどんどん小型化が進んでいきます。では一方でスマートフォンはいつ頃誕生したのでしょうか? スマートフォンの定義は様々なものがありますが、今のスマートフォンに近い、タッチディスプレイを搭載したデバイスとしては1993年に発表されたIBMの「Simon」(Simon Personal Communicator)が元祖と言われています。
Simonはアナログ方式の携帯電話にモノクロタッチスクリーンを搭載し、10キーパッドを表示して電話の発着信ができるほか、アドレス帳、カレンダー、スケジューラー、電卓、メモ、世界時計などを内蔵。またファックスやEメールの送受信も可能でした。本体の動作はかなり緩慢だったと思われますが、当時としては最先端のビジネスツールだったのでしょう。その後はPDAが生まれ携帯電話との融合も進み、最終的にスマートフォンへとつながっていくのです。
ミュージアムには多くのスマートフォンが展示されていますが、サムスンの製品もいくつか見られます。その中にはサムスンが「世界初」の機能を搭載したモデルもあります。たとえば2011年に発売した「GALAXY S II」は世界初の音声操作に対応したモデルでした。今ではGoogleアシスタントなど音声に対応する機能は様々なものが登場していますが、サムスンも音声操作の開発を10年以上前から行っていたのです。
さてミュージアムの一角にはスマートフォン以前のサムスンの携帯電話が多数展示されています。実はサムスンの「世界初」はスマートフォン以前から多くの製品で見られ、海外ではその新しい技術やアイディアが高く評価されていたのです。20機種程度のエポックメーキングな携帯電話が展示されていましたが、ここでは機能だけではなくデザインにも特徴的な端末を3つ紹介します。
世界初の腕時計ケータイ
1999年発売の「SPH-WP10」は世界初の腕時計型携帯電話です。重さは39g。先日日本でサービスが終了したPHS方式に対応した腕時計型電話「WRISTOMO」は2003年発売ですから、それよりも先に韓国では「腕電話」が使われていたのでした。
マトリックスフォン第二弾はサムスンから
映画『The Matrix』ではノキアのシャキーンと伸びる携帯電話が一躍有名になりましたが、続編となる2003年の「The Matrix Reloaded」ではよりサイバーなデザインの新しい携帯電話「SPH-N270」が登場。サムスン製で限定5,000台が実際に販売されました。
TVも視聴しやすい2画面ケータイ
2005年に発売された「SCH-B100」は衛星デジタル放送に対応した携帯電話で、高画質なTV放送を視聴するために本体の裏側に回転式で横に飛び出すTV用のディスプレイを内蔵。TVを見るときに本体を回転させるというギミックは当時かなりカッコいいものだったに違いありません。
日本ではほとんど知られていないこれらの携帯電話の開発を通じて、サムスンはスマートフォンにも進出し、世界シェア1位になっていくのでした。そしてそのスマートフォンもサムスンは折りたたみディスプレイ搭載モデルを積極的に投入、スマートフォンの新しいトレンドを生み出そうとしています。
ミュージアムにある展示をすべて紹介するとなるとページがいくらあっても足りなくなるので、今回は数を絞ってかなり古い製品にフォーカスを当てて紹介しました。いずれ再び訪問して、次回はスマートフォン時代の歴史を紹介したいですね。