個性的な360度カメラやアクションカメラで知られるInsta360が、同社初のスマホ用ジンバル「Insta360 Flow」を発表しました。「かさばるので持ち歩くのが面倒」「自撮り棒や三脚がないと物足りない」「使うまでの準備に手間がかかる」と感じて結局使わなくなる従来のスマホ用ジンバルの欠点を徹底的につぶし、小気味よく使える製品に仕上げてきました。「スマホのブレ補正も進化したし、ジンバルはもう必要ないかな」と考えている人も、これは試したくなると感じるはずです。

  • Insta360初のスマホ用ジンバル「Insta360 Flow」が登場。見た目が個性的なだけでなく、携帯性や利便性もよく練られていると感じた。実売価格は、通常版が20,900円前後、付属アクセサリーが充実したクリエイターキットが28,000円前後。すでに販売中だ

コンパクトに持ち歩け、ワンタッチで使える機構が光る

スマホを装着することで、動画撮影時の揺れやブレ、傾きを電動で補正するスマホ用ジンバル。かつて、ドローンで知られるDJIの「Osmo Mobile」シリーズが日本でもヒットし、一時はテーマパークや観光地で使っている人を多く見かけるようになりました。

しかし、スマホ用ジンバルはかなり大柄で持ち歩きが面倒なうえ、スマホの装着やバランス調整が面倒で使い始めるまでの手間がかかるなどの欠点がありました。ジンバル自体のデザインがダサくて使うのがためらわれる…という声も。さらに、近年はスマホのブレ補正機能が向上し、「アクションモード」を搭載したiPhone 14シリーズはアクションカメラ並みの強力なブレ補正機能を備えるほどに。「スマホ用ジンバルはもう必要ない」と感じている人も多いのではないでしょうか?

とはいえ、Vlogや動画配信などで見栄えのする印象的な動画を撮影したい、というニーズは高止まりしています。そこに目を付けたのが、360度カメラやアクションカメラを精力的にリリースしているInsta360。同社初のスマホ用ジンバルとして、「Insta360 Flow」をリリースしました。

  • 流行りの透明パーツを一部にあしらい、デザイン的な魅力も高いInsta360 Flow。カラーは、このホワイト基調の「サミットホワイト」と、色が濃い「ストーングレー」の2色を用意。本体は防水ではないので、その点には留意したい

Insta360 Flowを手にして感じたのが、他社製のスマホ用ジンバルの弱点をしっかり研究し、「これなら使いたくなる」と感じる仕上げにしていることです。

まず感心したのが、携帯性の高さと使い勝手のよさ。折りたたんだ状態の本体は、iPhone 14 Pro Maxほどのサイズ感に収まっており、持ち運びや収納はラクラク。さらに、折りたたまれた本体をひねるように回すだけで展開でき、使えるようになる機構も見事だと感じます。展開すると同時に本体の電源が入り、さらにスマホにはアプリの起動を促す通知が送られてくるので、使えるまでの手間は最小限で済みます。

  • Insta360 Flowを折りたたんだ状態。iPhone 14 Pro Maxほどのサイズに収まり、携帯性は良好だ

  • アームの部分とグリップの部分を左右の手で持ち、ひねるように回転させるだけで展開できる

  • 専用のホルダーを装着したスマホを磁力でマウントにくっつければ撮影スタンバイ完了。わずか数秒で撮影の準備ができる

  • スマホ固定用のホルダー。Insta360 Flowとは強力な磁力で固定する

  • ホルダーは、装着時にスマホ側面のボタンを押さないよう構造を工夫している

ミニ三脚と自撮り棒をグリップ部に内蔵

さらに便利だと感じたのが、コンパクトな本体にミニ三脚と自撮り棒を内蔵していること。グリップ部の底面を引き出すとミニ三脚が現れ、テーブルなどに置いて撮影できます。さらに、アームを引っ張ると多段式の自撮り棒が現れ、約20cmほど長さを稼げます。わざわざミニ三脚や延長ロッドを用意することなく、本体のみで多彩な撮影に対応できるのは便利だと感じました。

  • ミニ三脚も内蔵しており、サッと開いて自立できる

  • 底面には三脚穴を備えており、内蔵のミニ三脚を使わない時は一般的な三脚に固定できる

  • グリップ部には自撮り棒を内蔵しており、約21.5cm伸ばせる

デザインも、白を基調に透明なスモークパーツをアクセント的に盛り込み、実際に使われている電子部品や配線が美しく見える点はイマドキだと感じます。透明な部分に装飾用のLEDを内蔵しているのではないかと思いましたが、そのような仕掛けはありませんでした。透明パーツの端にはコールドシューを備えていて、マイクなどが装着できます。

  • アームの部分には透明パーツがあしらわれており、内部の基板が見える。発光する仕掛けはない

  • 根元の部分にあるカバーを開けるとコールドシューが顔を出す

  • シューに固定するマイクなどが装着できる

手ブレ補正の効果は満足、ちょっとした便利機能も

操作は、グリップ部の円形パネルとその裏側にあるトリガーボタンを用います。円形パネルは、撮影などの物理ボタンを備えるほか、黒い部分がかつてのiPodのようなタッチセンサーになっていて、円周方向にスワイプすると撮影モードが切り替えられます。外周にはダイヤルを内蔵しており、デジタルズームなどの操作ができます。

  • 中央にスティックを備える操作パネル。外周はダイヤルになっており、ズーム操作などに使える。黒い部分は物理ボタンに加えてタッチセンサーも内蔵している

気が利いていると感じたのが、撮影済みの動画を再生するときの挙動です。スマホが縦長の状態で横長の動画を再生するとジンバルが90度回転し、横長の状態で再生できます。再生を終えて撮影モードに戻る際は、また90度回転して縦長の状態に戻ります。

【動画】横長の動画を再生すると、画面も横長になるように90度回転する

手ブレ補正は3軸の補正に対応しており、深夜など明るさの乏しい状況であろうと強力に補正してくれます。iPhone 14シリーズのアクションモードは、電子補正のために画角がかなり狭くなりますが、Insta360 Flowならば超広角を維持したまま手ブレをしっかり補正してくれます。

【動画】小走りで息を切らしながら撮影した動画。水平も保たれており、補正効果に不満はない

【動画】夜桜を撮影。歩き回らない状況でも、映画のようななめらかな撮影ができる

AIを用いたスマホアプリが提供する機能はとにかく豊富。被写体がしばらくフレームアウトしても追従を続けるトラッキング機能や、撮影シーンを認識して編集のテンプレートを自動提案する機能など、かなり使いがいがあります。パノラマ撮影は、新たに360度カメラのような写真が撮影できるようになりました。

【動画】パノラマは360度写真の撮影にも対応。このようなSNS向けのエフェクトを付けて出力できるのはInsta360ならでは

Insta360 Flowは、使い勝手がいまひとつで積極的に持ち出したくないスマホ用ジンバルの不満を巧みに解消したのが評価できます。実用性も高く、出費を抑えて本格的な動画撮影に臨みたいと考える人にオススメできると感じます。iPhoneなど高性能のカメラを搭載するスマホを使っている人ほど、表現力が飛躍的に高くなることに驚くはずです。

Insta360 Flowの価格は、スタンダードな通常版が20,900円前後、アクセサリーが充実したクリエイターキットが28,000円前後となっています。アクセサリーキットにはLEDスポットライトなどが付属しますが、自撮りメインでなければ通常版で不満はないでしょう。