いよいよ桜のシーズンがやってきました! 心置きなく外出できる今年の春は、満開の桜を楽しみに行こうと考えている人も多いでしょう。しかし、「満開でとてもきれいだったのに、撮った写真を見るとパッとしない…」とガッカリした経験のある人も少なくないのでは? そこで、桜をより印象的に撮影するための6つのテクニックを、写真家の鹿野貴司さんにコッソリ教えてもらいました。ミラーレスなどのカメラはもちろん、スマホにも応用できますよ!

  • 満開の桜を見た時の感動をそのまま写真に残すには、ちょっとしたテクニックが必要。6つのポイントをマスターしておこう

桜撮影の基本中の基本は「プラスの露出補正」

きれいな桜を撮ったのに、写真で見ると全然華やかじゃない…。その理由として多いのがズバリ「露出不足」です。

カメラは、明るいものも暗いものも、一律に平均的な明るさに再現しようとします(最近はAIで被写体を判別して調整するカメラもありますが)。そのため、白に近い桜の花は、暗くくすんだグレーに再現されがちです。そこで、撮影時に「プラスの露出補正」をしましょう。上の写真は「+2.3段」、下の写真は「+1.7段」のプラス補正をしています。通常なら全体が白く飛んでしまうほどの値ですが、白い被写体はこれくらい補正してようやく白く再現されるのです。

  • +2.3段の露出補正で撮影

  • +1.7段の露出補正で撮影

「レンズの選択」が印象を左右する!

レンズ交換式カメラでもスマートフォンでも、桜の美しさに気を取られるとつい漫然に撮りがち。そこで冷静になって、レンズの焦点距離(画角)を意識してみましょう。望遠では遠近感が圧縮され、桜のボリューム感を増したり、背景を引き寄せることができます(写真上)。広角では、枝の真下から撮ることで広がりを表現したり(写真下)、風景から浮かび上がるような表現が可能です。

  • 望遠での撮影

  • 広角での撮影

「光線の状態」を読んで背景をアレンジ

晴れた日は、太陽を背にした「順光」(写真上)と、太陽と向かい合う「逆光」(写真下)で、桜の印象がガラリと変わります。順光なら、花びらのピンクと色の相性がいい青空を背景にしましょう。影や濃い色の建築物などを背景にするのも効果的で、花が立体的に浮かび上がってきます。逆光は花や枝をシルエットで描きますが、花が黒い影にならないよう、プラスの露出補正をお忘れなく。写真は「+1補正」をしています。

  • 太陽を背にした「順光」での撮影

  • 太陽と向かい合う「逆光」での撮影

桜の花を「前ボケ」に使ってみる

桜そのものにピントを合わせて写すのではなく、いわばフィルターのように被写体の前へ重ね合わせます。こうして「前ボケ」を取り入れると、写真にグッと奥行き感が生まれますが、それが桜となると春の麗らかさや心地よさも加わります。また、前ボケは雰囲気を増すだけでなく、目障りな看板などを隠すという活用法もあります。

  • 奥の列車にピントを合わせ、手前の桜は大きくボカしている

桜の木を写すときは、枝の広がった「奥」にピントを合わせる

続いては前ボケの応用編です。大きな桜を撮影すると、カメラやスマホ任せではもっとも近くの枝や花にピントが合うと思います。すると、写る花は少なく、しかも後ボケがうるさいだけの失敗写真になりがちです。そこで、枝が広がっている部分をタッチ操作などでAFポイントにし、そこにピントを合わせて撮りましょう。すると、近くの花が前ボケとして効きつつ、ボリューム感を表現できます。スマートフォンも前ボケなら作りやすいので、ぜひ試してみてください。

  • あえて奥の枝や花にピントを合わせ、手前の花をボカした

「ホワイトバランス」で雰囲気や空気感をアレンジする

カメラは、撮影時の天気や照明に合わせて、肉眼に近い色味を再現してくれます。このオートホワイトバランス(AWB)、万能かつ無難ではありますが、決して“味”のある演出はしてくれません。曇りの日や太陽が隠れてしまった状況では、青みを補正しようとして濁った色味になりがちです。そこで、ホワイトバランスを「青みが強くなる」方向にマニュアル設定してみましょう。写真は、日没後の川沿いで撮影しましたが、青みが欲しくて「太陽光」に設定。写真下のAWBに比べると、風情やはかなさが感じられるはずです。

  • ホワイトバランス「太陽光」で撮影

  • オートホワイトバランス(AWB)で撮影