H-diamondは、化学的安定性に優れ、イオンを遮断する性質を持つ。電荷キャリア変調に対する酸化還元効果を排除するため、今回の研究では同物質が半導体のチャネルに採用された。そして、LiNbO3またはLi3PO4中間層を持つH-diamondベースのEDLTが作製された。

まず作製されたEDLTについて、リチウムイオン伝導性固体電解質/電子材料界面におけるEDLによって引き起こされる電子キャリア変調の振る舞いが調べられた。その結果、LiNbO3およびLi3PO4デバイスのいずれにおいても、EDL形成による著しい正孔密度の変調が観測されたという。

Li+欠乏領域でのCEDLを評価できるホール測定と、Li+リッチ領域でのCEDLを定性的に評価できるパルス応答測定を組み合わせ、Li+リッチ領域からLi+欠乏領域までの広い範囲のCEDLの評価を行ったところ、LiNbO3/H-diamond界面およびLi3PO4/H-diamond界面のCEDLは電圧依存性が大きく、リチウム固体電解質で観測されるスイッチング応答速度よりも1桁以上速い加速、もしくは1桁以上遅い減速を引き起こすことが判明した。

また、LiNbO3デバイスのパルス応答測定結果から、LiNbO3/H-diamond界面のEDL厚さは5Åと見積もられ、負電荷Li+空孔の計算密度は1.21mmol/cm3であることが示されたとする。この結果は、高濃度のイオンが与えられた層によって、液体電解質系に匹敵するEDL効果がもたらされ、CEDLと電極表面の電荷を決定する界面からわずか数Åのところにある固体/固体電解質界面領域が原因であることを示唆しているという。

研究チームによると今回の研究は、比較的簡単な方法を組み合わせて、固体/固体電解質界面のCEDLをより広範囲に調べることが可能だと示された点で非常に意義深いという。同チームは、全固体LIBの性能に関連する界面特性を明らかにする上で、有用性が高い成果であるといえるとした。また今回の成果は、全固体LIBの出力向上の障壁となっている界面抵抗を改善させる上で重要な知見であり、将来的には劣化・充放電特性に優れた全固体LIBの実現につながる可能性があるとしている。