5G時代に突入し、スマートフォンの存在感が低下していると言われて久しい「MWC Barcelona」ですが、2023年は中国の新興メーカーを中心として特徴のあるスマートフォンが多く登場し、久しぶりの盛り上がりを見せていました。そうしたなかから、特徴あるスマートフォンなどをいくつかピックアップして紹介しましょう。
ファーウェイから独立したオナーは「100倍ズーム」を実現
スマートフォン関連で、今回のMWC Barcelonaにて非常に大きな存在感を放っていたのは、オッポやシャオミなど中国の新興スマートフォンメーカーです。ソニーやLGエレクトロニクスなど古参メーカーが出展を見送る一方、そうした中国新興メーカーが大規模ブースを出展し、最新のスマートフォンを積極的にアピールしていました。
シャオミは、MWC Barcelonaの開催に合わせて発表した、高いカメラ性能を持つ「Xiaomi 13」シリーズを、オッポは「OPPO Find N2 Flip」など折り畳みスマートフォンを前面に押し出してアピールしていました。それらは「ライカと共同開発のカメラが圧巻! シャオミ最新スマホXiaomi 13に触れてきた 」「折り畳みスマホOPPO Find N2 Flipを世界投入、オッポのデバイス戦略とは」の記事で取り上げた通りですが、他にも大規模なブースでスマートフォンを積極アピールしていたのがオナー(HONOR)です。
オナーは日本市場に参入しておらず聞き慣れないメーカーですが、実はもともとファーウェイ・テクノロジーズの1ブランドとして展開していたもの。同社が米国からの制裁を受けてスマートフォン開発に制約が出たことを受けて独立し、現在もスマートフォン開発を継続しています。
そのオナーが今回のMWC Barcelonaに合わせて世界展開を発表したのが「Magic 5」シリーズです。Xiaomi 13シリーズなどと同様にカメラ機能に力を入れた同社のフラッグシップスマートフォンシリーズの1つなのですが、カメラの進化の方向性には違いがあるようです。
そのことを示しているのが、上位モデルの「Magic5 Pro」です。こちらは広角・超広角・望遠の3眼構成なのですが、いずれも5,000万画素のイメージセンサーを搭載し、望遠カメラを用いることで、光学3.5倍相当から最大100倍までのデジタルズームに対応するなど、ズーム機能に非常に力が入れられています。
また、独自のAI技術を活用することで、ジャンプの到達点を自動検出して撮影できる「AI Motion Sensing Capture」を搭載するなど、特徴ある撮影機能に重点を置いている様子がうかがえます。どちらかといえば、サムスン電子の「Galaxy S」シリーズを意識した内容ともいえ、ライカカメラとの共同開発で画質の追及を強めるシャオミとは違った方向性を打ち出そうとしている様子がうかがえます。
アフリカで人気のメーカーも、参入相次ぐ折り畳みスマホ
もう1つ、オナーが世界展開を発表したのが「Magic Vs」という機種。こちらはディスプレイを直接折り畳めるスマートフォンで、閉じた状態でも6.45インチのディスプレイで操作できますが、開くと7.9インチとより大きな画面の利用が可能になります。
実は、中国では多くのメーカーが折り畳みスマートフォンに力を注いでいて、その数も急増。実際、今回のMWC Barcelonaにおいてもオナーや先に触れたオッポだけでなく、ファーウェイ・テクノロジーズもディスプレイを外側に折り曲げるタイプの「HUAWEI Mate Xs 2」を展示していました。
また、折り畳みだけでなく、巻き取り式ディスプレイを搭載したコンセプトモデルもレノボが公開して注目を集めていました。ディスプレイを巻き取った状態では5インチ、それを伸ばすと6.5インチにまで伸びるというものですが、巻き取り式のスマートフォンはまだ市場に登場していないだけに、今後の動向が気になるところです。
ですが、より驚きがあったのは、意外なメーカーから折り畳みスマートフォンが発表されたこと。それは、中国トランシオン(Transsion)の「Tecno」のブランドが発表した「Phantom V Fold」です。
トランシオンも日本では馴染みがないメーカーですが、Tecnoなど複数のブランドを用いて新興国、とりわけアフリカ市場で高いシェアを獲得してスマートフォン大手の一角を占めるようになった企業です。それゆえ、同社のスマートフォンはこれまでローエンド・ミドルクラスが主体だっただけに、今回のMWC Barcelonで折り畳みスマートフォンを投入してきたことには驚きがありました。
こちらも横開きタイプの折り畳みスマートフォンで、開いた状態では7.85インチの大画面を利用可能。ヒンジは曲げている途中で固定できるタイプではなく、開くか閉じるかどちらかの状態で利用する必要があるなど、機能面では競合に譲る部分も多いですが、それでも低価格主体のメーカーがハイエンドの折り畳み端末を手がけるようになったことは大きな変化といえるでしょう。
あのスマホにそっくりで物議の「Luna」など個性派も
そのTecnoは、他にも特徴的なスマートフォンをいくつか手掛けており、その1つが「CAMON 19 Pro Mondrian Edition」というもの。これはボストン美術館と提携して開発されたもので、画家のピート・モンドリアンの作風をデザインに取り入れたスマートフォン。背面に光を当てると色がカラフルに変わる仕組みで、非常に特徴的なデザインを実現しています。
そして、特徴的なデザインとしてある意味注目を集めたのが、日本でも超小型スマートフォンの「Jelly」シリーズなどを提供している中国のUnihertz。同社が今回のMWC Barcelonaに合わせて発表した「Luna」は、いろいろな意味で話題となりました。
その理由は、背面デザインを見れば一目瞭然なのですが、背面に用意された複数のラインが光る仕組みが備わっているのです。これは、日本でも販売されているNothing Technologyの「Nothing Phone(1)」と非常に似た仕組みなのですが、実際に手にするとまったく違うことが分かります。
なぜなら、Lunaはとても厚くて重いのです。背面を光らせる機構を搭載したことでそれだけの厚さと重さになってしまったと考えられ、Nothing Technologyとの技術の差を感じてしまう部分でもあるのですが、見方を変えればある意味、タフネススマートフォンを多く手掛けるUnihertzならではの端末とといえるのかもしれません。
もう1つ、スマートフォンではありませんが、ZTEが発表したタブレット「nubia Pad 3D」もインパクトのある端末でした。文字通り、3D表示に対応したタブレットなのですが、ディスプレイの下に独自のDLB(Diffractive Lightfield Backlighting)レイヤーを備え、さらに前面の2つのカメラによって目の動きをトラッキングすることにより、裸眼で見やすい3D表示を実現しています。
これまでにも、3D表示ができるスマートフォンやタブレットは多くの企業が挑戦してきましたが、なかなか定着しなかったというのが正直なところ。ですが、nubia Pad 3Dはかなり高度で違和感のない3D表示を実現しており、実際に試してみても「これなら十分実用に耐える」と感じました。
日本参入を打ち出した「Orbic」とは?
ここまで見てきたスマートフォンは日本での発売が未定、あるいは日本での発売の可能性が低いものがほとんどです。ですが、そうしたなかにあって、日本市場に参入することを正式に打ち出した企業も存在します。
それは、米国の新興メーカーであるOrbic(オルビック)です。同社は、ベライゾンやAT&Tなど米国の携帯電話事業者を中心に、ミドル・ローエンドのスマートフォンやフィーチャーフォン、モバイルWi-Fiルーターなどを提供している企業です。
日本では馴染みがあるとはいえないオルビックが、なぜ突然日本市場に参入?と思われる人も多いかと思いますが、そこにはある人物の存在が影響しています。というのも、オルビックには現在、かつてモトローラ・モビリティ・ジャパンの社長を務めていたダニー・アダモポウロス氏が参画しており、日本市場をよく知る氏の影響もあって日本市場への参入を打ち出すに至った様子がうかがえます。
とはいえ、オルビックがどのスマートフォンを日本市場に投入するのか?という点は明らかにされておらず、ダニー氏も「現時点では2~3ジャンルの製品を投入する予定だ」と言及するにとどまっています。ですが、新しいプレーヤーがなかなか増えず停滞傾向にある日本市場に新しいプレーヤーが参入することは喜ばしいこと。同社の日本での発表を待ちたいところです。