Snap Japanは3月6日、コミュニケーションアプリ「Snapchat」用のARレンズとして、「消火器の使い方」「AEDの使い方」「洪水シミュレーション」の3つの防災ARレンズを発表した。
「消火器の使い方」「AEDの使い方」はそれぞれ、消火器とAED(自動体外式除細動器)の使いかたをステップバイステップで学べるレンズ。ARを利用してユーザーのいる空間にバーチャルの消火器・AEDを出現させ、画面のタップ操作により消火器・AEDを使う疑似体験ができるため、たんなる映像などよりも身に迫るものとして消火器・AEDの使い方を学ぶことができる。
「洪水シミュレーション」も同様に、自身のいる空間が水没した際にどんな状態になるかをARでシミュレートできるレンズ。このレンズを利用して水没時の様子をあらかじめ知っておくのとともに、ハザードマップで災害時にその場所がどれくらいの水深になりうるかを確認してほしいとしている。
これらの防災ARレンズは、合同会社ソナエルワークス代表で備え・防災アドバイザーの高荷智也氏との提携のもと、日ごろの防災意識を高めることを目的として開発された。
同日開催された発表会において、Snap Japan代表の長谷川倫也氏と高荷氏のトークセッションが行われた。高荷氏は「日本は災害の多い国。防災の情報も豊富だけれど、多くの人がそれを使いこなせていない。若い人が防災情報に気軽にアクセスして使いこなせるようになってほしい」と今回発表された防災レンズの狙いを語った。
高荷氏は、「防災は楽しいことではないので、自分がハッピーになれるポジティブな情報を求める人たちにアピールしない」と、防災についての情報が広がらない理由を挙げ、「防災を少しでも楽しいものにする必要がある」と言う。さらに「若い人は体力もあって機敏に行動でき、被害を免れやすいので、防災の意識は低い。ただ、そのレベルを超える災害もあるので、若い人にも防災の意識はもってほしい」と語った。
長谷川氏は、「少しでも防災意識を高めるようなレンズを作りたいと思っていた」といいながらも、「実際に火事や地震があったときは、まず逃げるはず。スマホをかざして何かをするということにはならない」というジレンマがあったという。それが「災害が起きたときに役立てることはできないかもしれないが、少しでも慣れておくことで心の余裕を持てる、パニックを起こさないようにするということはできる」という、“防災”という今回のレンズのテーマにつながっている。
長谷川氏に「なぜ今回のこの3つのレンズになったのか」と問われた高荷氏は、「いまの時点での防災へのスマホ活用のアプローチは、事前教育やスキルの付与ということになる。防災においては、命を守ることに直結することから優先するべきで、大事なのは災害の初動で命を落とさないこと。今回の3つのレンズは、命を守ることに直結する初動のための事前教育になっています」とその理由を語り、消火器による初期消火やAEDによる応急措置は、やりかたを知らなければできないが、すばやく行われることで被害を確実に減らすことができるとした。
こういったアプリで消火器やAEDに接することにより、使い方を身につけておくのに加え、消火器を家庭に持つ、AEDの設置場所を認識しておくといった意識の高まりも期待する。洪水に関しては、ハザードマップを見るきっかけになる。そういった防災意識の向上が、防災ARレンズのリリースの狙いということだった。