意外と知られていませんが、パナソニックは1977年から電気圧力鍋を発売していて、いわゆる「電気調理鍋」の草分け的な存在。そんなパナソニックが2月上旬に発売を予定しているのは、自動調理鍋の新製品「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」(以下、オートクッカー)です。

オートクッカーの大きな特徴は、鍋底に配置されたかき混ぜ機能。食材をかき混ぜながら加熱調理でき、しかも圧力調理とかき混ぜ調理を同時に行うことも可能という画期的な製品です。オートクッカーは従来の自動調理鍋とどう違うのか、試食体験会でチェックしてきました。

  • 新製品の「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」は、ビストロシリーズらしいマットブラックの高級感あるデザイン。価格はオープン、推定市場価格は88,000円前後です

  • 満水容量は4.2L、調理容量は2.4L、白米は最大5合炊飯。本体サイズは幅33.3×奥行き33.6×高さ26cm、重さは8.2kg。写真はオートクッカーを抱えるマイナビニュース +Digitalの林編集長。意外と大きな本体ですが、サイズ感が伝わるでしょうか?

「焦がさず煮詰める」ができる鍋底かき混ぜ機能

各社から多彩な電気調理鍋が発売されるなか、2022年に注目されたのは「かき混ぜ機能」です。日本でかき混ぜ機能を搭載した自動調理鍋といえば、シャープのヘルシオ ホットクックシリーズの独壇場でした。

ところが昨年(2022年)は、ホットクックと同じく上ぶたにかき混ぜユニットを装着できるハイアールの「ホットデリ」、鍋全体が回転して食材をかき混ぜるアイリスオーヤマの「シェフドラム」といった製品が相次いで登場しました。パナソニックのオートクッカーも、このかき混ぜ機能を搭載しています。ただし、ホットクックやホットデリのかき混ぜユニットは上ぶた内側へ配置する一方で、オートクッカーは「鍋底」にかき混ぜ用の羽根を設けているのが特徴です。

  • オートクッカーのフタを開けたところ。鍋の底にかき混ぜ用の羽根があります。羽根は独特の形状で鍋底全体をさらうように動き、鍋脇のリブを使って具材をひっくり返しながらムラなく全体を加熱します

  • 「鍋底からかき混ぜる」仕組みは、ホームベーカリーの回転技術を応用しているそうです

  • 内鍋は炊飯器のように分離。内鍋の重さは約1kgです。ハンドルがしっかりしているからか、実際に持ってみると見た目より軽く感じました

鍋底に羽根を配置することで、フタ部分にかき混ぜユニットがある鍋では不可能だった「フタを開けた状態でかき混ぜながら加熱」を実現しました(フタを開けたままかき混ぜ加熱できるのは手動モードのみ)。

もし、自動モードで作った炒め物などが水っぽくなったときでも、フタを開けてかき混ぜ加熱すればしっかり汁気を飛ばせます。かき混ぜる羽根は鍋底全体をさらうように動くため、上ぶた式のかき混ぜユニットと比べて食材が焦げ付きにくいというメリットも。

【動画】試食会では、あめ色タマネギの調理デモ。鍋からあふれるほどの大量のタマネギ、1時間ちょっとじっくり炒めるとお椀一杯ほどのあめ色タマネギになります

電気圧力鍋としてもかなりの高性能

前述のように、今はさまざまな「かき混ぜ機能搭載」電気調理鍋がありますが、その多くは圧力調理に非対応。大きな理由は、圧力鍋の密閉性とかき混ぜ機能の両立が難しいから。今回のオートクッカーは圧力機能も備えており、しかも圧力レベルは3段階で切り替え可能。最大2気圧という業界最高クラス(2023年1月現在、パナソニック調べ)の高圧力による調理にも対応しています。

  • オートクッカーの手動モードで圧力調理を選択したところ。食材にあわせて3段階の圧力から選べます

  • 後述する「ホテルニューオータニ監修レシピ」のひとつ、「風味豊かなエスニックスパイス角煮」を試食する林編集長。約1kgの肉が、オートクックの圧力調理によってフォークで崩れるくらい柔らかく!

もうひとつの特徴は、業界最高(2023年1月現在、パナソニック調べ)という1,285Wでの高火力加熱です。これで調理した料理は残念ながら試食はありませんでしたが、しっかりかき混ぜながら高火力で加熱するため、電気調理鍋では難しいチャーハンもパラパラの仕上がりに。そして、野菜炒めも短時間で焼き色を付けつつ、シャキッとした食感に仕上がるそうです。

ちなみに、オートクックは圧力調理、炒め調理、煮詰め、煮込み調理、無水調理、低温調理、蒸し調理、圧力蒸し調理、加熱、保温に対応しています。

発売前ながら100以上のレシピに対応。今後も続々増える予定

オートクッカーは、レシピにあわせて加熱制御する「自動メニュー」も充実。本体には25種類のレシピを登録できますが、アプリではすでに100種類以上の専用レシピを用意しています。レシピをダウンロードして、本体に自分の好きな料理のレシピを登録することもできます。

  • オートクッカー内に登録されているレシピの一覧。専用アプリでレシピの順番を変更したり、別のレシピと入れ替えたりも可能

  • オートクッカーのレシピ画面一部。調理方法なども写真付きで詳しく説明しているので、料理が苦手な人でも簡単にレパートリーを増やせそう。作りたい人数にあわせて食材の量を自動再計算する機能も便利ですね

  • アプリから登録したレシピは本体からも選べます。個人的にうれしいメニュー名の表示。電気調理鍋によってはメニューを「2-4」のような番号表示するものもありますが、オートクッカーはメニュー名を文字で表示すので、取扱説明書やレシピブックで対応する数字をチェックするような面倒さがありません

自動メニューには、肉じゃが、カボチャの煮付け、カレーといった日常的な家庭料理から、エスニック料理のようなレストランで食べる凝った料理もたくさんあります。なかでも注目したいのは「ホテルニューオータニ監修」のレシピ。ホテルでないと食べられない「ハレの日」メニューも、自動調理なら誰でも簡単に作れるのです。

今回の試食体験会では、前述した「風味豊かなエスニックスパイス角煮」に加えて、2種類のホテルニューオータニ監修レシピを試食できました。いずれも家庭料理とは思えない、繊細でひとひねりある味わいの料理です。当初、ホテルニューオータニ監修のレシピは試食した3レシピのみですが、今後もレシピ数は増える予定とのこと。

  • 「風味豊かなエスニックスパイス角煮」と一緒に提供された「甘美なあめ色オニオングラタンスープ」

  • ホテルニューオータニ 西洋料理 料理長の太田シェフによると、オニオングラタンスープの美味しさを決める9割は「タマネギを数時間じっくり炒める手間をかけられるか」にかかっているんだとか。普通の電気調理鍋だと鍋に焦げ付くようなあめ色タマネギも、オートクッカーならしっかりかき混ぜて自動調理。味付けは少量のしょうゆと昆布茶だけなのに、とろけるようなタマネギが驚くほど濃厚なコクと甘さを引き出します

  • ホテルニューオータニ監修の「ショコラとカフェ香る麩入りぜんざい」。甘い小豆のぜんざいにチョコレートとコーヒーを加えることで、ビターな後味が残ります。お酒にも合いそうな大人のスイーツでした

オートクッカーの登場で「ビストロ」シリーズは4製品に

パナソニックの「ビストロ」シリーズといえば、以前は高機能スチームオーブンレンジの愛称でした。しかし、2021年発売の「オーブントースター ビストロ NT-D700」以降、「ビストロ」とはパナソニックの技術力と美味しさへのこだわり、デザイン性の高さの3要素を満たした調理家電にのみ付けられるブランド名となりました。今回のオートクッカーも「オートクッカー ビストロ NF-AC1000」とあるように、パナソニックの技術とこだわりが詰め込まれた製品です。

これまで「かき混ぜ機能」を重視した電気調理鍋といえばシャープのホットクックがほぼ一強でした。オートクッカーが発売されたら、高い圧力機能と高火力、ほかにはない鍋底羽根構造の魅力などなど、電気調理鍋の勢力図が変わるかもしれません。一消費者としては、選択肢が増えるのはうれしいことです。