パイオニアは1月19日、カロッツェリアブランドの2023年春カーナビ新製品発表会を開催しました。目玉となったのは、売れ筋の「楽ナビ」シリーズの新機種。ネット接続やスマホ感覚で使える操作性など、現代のニーズに応えた便利さと使いやすさが魅力です。

  • 楽ナビ2023年モデル

    カロッツェリア「楽ナビ」2023年モデル。上段はAVIC-RQ920-DC(ラージサイズタイプ/実勢価格190,000円前後)、下段はAVIC-RF920-DC(フローティングタイプ/実勢価格180,000円前後)、いずれも3月に発売予定

カーナビへの不満を徹底調査、車外でのデジタル体験とのギャップを埋める

楽ナビは1998年から20年以上にわたって続いているカーナビの定番シリーズ。カロッツェリアのカーナビラインナップとしては最先端の機能や技術を詰め込んだフラッグシップモデルの「サイバーナビ」と並ぶ二枚看板で、楽ナビはどちらかといえば普及モデルに近い位置付けです。

歴代の楽ナビで重視されてきたことは「高性能×使いやすさ」。たとえば2005年にはHDDミュージックサーバー、2014年にはHDMI入力、2019年にはHDフル対応といったように、AV機能の面でも上位機種顔負けの性能を持たせつつ、音声認識(1998年)やエアジェスチャー(2012年)などフレンドリーで使いやすい製品にするための新技術も取り入れてきました。

  • 楽ナビシリーズは「高性能×使いやすさ」を追求してきた

    楽ナビシリーズは「高性能×使いやすさ」を追求してきた

2023年モデルの企画・開発にあたっては、カーナビ使用者および楽ナビ購入者に対するアンケートを実施し、「カーナビへの不満」と「楽ナビが選ばれた理由」を調査しました。その結果見えてきたのは、クルマの中と外の世界でのデジタル体験の乖離が静かな不満につながっていたということです。

たとえば、同じようなタッチディスプレイでも普段から使い慣れたスマートフォンやタブレットとは操作のお作法が違い、無意識にスマホ感覚で触ったら意図とは違う操作になってしまいイラっとした経験のある方も少なくないのではないでしょうか。

そんな「スマホみたいに○○だったらいいのに」という不満を解消するための土台として、上位機種で先行していた“オンライン化”を普及機種の楽ナビにも持ち込むのは必然だったといいます。

  • カーナビ全般への不満、楽ナビ購入者の決め手ともに、使いやすさ(わかりやすさ・操作性)は上位に入る項目

    カーナビ全般への不満、楽ナビ購入者の決め手ともに、使いやすさ(わかりやすさ・操作性)は上位に入る項目

  • スマホが普及した現代に求められる「使いやすさ」を実現するには、オンライン化が必須と判断

    スマホが普及した現代に求められる「使いやすさ」を実現するには、オンライン化が必須と判断

NTTドコモのLTE回線を利用する車内向けインターネットサービス「docomo in Car Connect」に対応しており、同乗者もうれしい車内Wi-Fiスポットを使えるほか、カーナビ自体にもネット接続を生かした機能が搭載されています。

まず、特に触れる機会が多いであろうルート検索機能に注目。一般的なカーナビで目的地を探すには「まず住所を入れるのか、目的地の名前を入れるのかを先に決めないといけない」「文字入力の方法が独特」などといった不満点が思い浮かびますが、新型楽ナビの「お出かけ検索(オンライン)」なら一般的なネット検索のように思いついたキーワードを入れるだけでOK。さらにフリック入力にも対応しており、スマホともパソコンとも違う五十音表のような並びのキーに苦戦することもありません。

  • 新開発の「Doメニュー」。出発から帰宅まで、ドライブ中に欲しい一通りの機能をスムーズに呼び出せるUIを目指した

    新開発の「Doメニュー」。出発から帰宅まで、ドライブ中に欲しい一通りの機能ををスムーズに呼び出せるUIを目指した

  • スマホのようなフリック入力もできる

    スマホのようなフリック入力もできる

そして、定期的なデータ更新(最大3年間、一部モデルは1年間)という概念は残っていますが、全データ更新ではなく道路と市街詳細地図のみの差分更新であれば、スマホのアップデートのように画面に現れた通知ポップアップの「はい」を押すだけで手軽に最新の情報を受け取れます。

近くのガソリンスタンドを価格情報込みで探せる機能なども常時接続のインターネット回線があればこそのもの。通信に依存しない部分でもUIの改良点は多く、地図表示とリスト表示を一体化させた「6ルート探索結果」、助手席の人に案内してもらう時のように距離ではなく「○個先の信号を右折」というような表現を採用した「信号機カウント交差点案内」などが加わりました。先述の調査結果でも楽ナビシリーズの購入の決め手として「わかりやすい地図表示」や「操作性」が上位に挙がっており、シリーズ伝統の長所に磨きをかけたといえます。

  • 6ルート探索結果。リスト表示と地図表示を同一画面にまとめた

    6ルート探索結果。リスト表示と地図表示を同一画面にまとめた

  • 感覚的に理解しやすい「信号機カウント交差点案内」

    感覚的に理解しやすい「信号機カウント交差点案内」

画面サイズは9型/8型/7型を用意。DINスペースから画面が飛び出すフローティングタイプの機種に関しては、角度調整の可動範囲を広くとり、業界最多の548車種に適合したこともポイント。別売オプションも充実しており、ナビ連動対応の前後2カメラドライブレコーダーや、夜間性能に優れるソニー製CMOSセンサー「STARVIS」を採用した専用バックカメラユニットと組み合わせて使えます。

  • ラージサイズタイプの装着例(スズキ ジムニー)

    ラージサイズタイプの装着例(スズキ ジムニー)

  • フローティングタイプの装着例(トヨタ ハイエース)

    フローティングタイプの装着例(トヨタ ハイエース)

トレンドの「ディスプレイオーディオ」もラインナップ拡充

スマートフォンの地図アプリを活用する人も増え、カーナビではなくディスプレイオーディオという選択肢も存在感を増してきました。大型ディスプレイとカーオーディオのメインユニットのみ、言い換えれば“カーナビのナビ抜き”のようなもので、ナビ機能を使う際にはスマートフォンとの連携が前提となります。

  • ディスプレイオーディオにApple CarPlayのホーム画面を表示した例(写真は既存機種のDMH-SF700)

    ディスプレイオーディオにApple CarPlayのホーム画面を表示した例(写真は既存機種のDMH-SF700)

カロッツェリアのApple CarPlay/Android Autoディスプレイオーディオとしては、上位機種から順にDMH-SF700(9インチ)、DMH-SZ700(6.8インチ)、FH-8500DVS(6.8インチ)の3機種が発売中。3月に発売される新機種「DMH-SF500」は、DMH-SF700と同じ1DINフローティングタイプの9インチディスプレイを搭載しつつ、一部機能を省略し価格を抑えた追加モデルです。

HDMI入力やAlexa built-inなどが省略されるものの、実勢価格80,000円前後で大画面のディスプレイオーディオを導入できるのは魅力的。また、上位機種にもない「WebLink」という接続方法がひそかに追加されており、こちらを使えばCarPlayやAndroid Autoのような車載用UIではなくいつものスマホアプリの画面をそのままミラーリングできる点も使い方によっては重宝するでしょう(走行中は不可)。

  • DMH-SF500

    DMH-SF500

まだまだ新機能が増えるドライビングパートナー「NP1」

2023年モデルの楽ナビシリーズに限らず、車のオンライン化はパイオニア/カロッツェリアが数年前から重点的に取り組んできたテーマ。2022年3月に発売された車載AIコネクテッドデバイス「NP1」は一連の取り組みのなかでも特徴的な製品です。

一見ドライブレコーダーのような形をした、フロントガラスの内側に取り付ける小さなデバイスですが、既存の枠組みにとらわれず様々な機能を詰め込み、アップデートで進化し続けている意欲作。見た目通りドライブレコーダーとしても使えますし、音声ナビや車内Wi-Fiなどの機能もあります。

  • サイバーナビや楽ナビに通信機能を搭載(ネットワークスティックを同梱)するほか、ドライビングパートナー「NP1」や車載Wi-Fiルーター「DCT-WR100D」というカーナビ以外の切り口でも車のオンライン化を推進している

    サイバーナビや楽ナビに通信機能を搭載(ネットワークスティックを同梱)するほか、ドライビングパートナー「NP1」や車載Wi-Fiルーター「DCT-WR100D」というカーナビ以外の切り口でも車のオンライン化を推進している

2022年12月に配信された直近のアップデートでは「マイカーウォッチ」という機能が加わりました。

駐車監視機能を持つドライブレコーダーは珍しくありませんが、単体で通信機能を持つNP1の性能を生かし、「何かあったら愛車の様子をリアルタイムに確認できる」ということがマイカーウォッチの特徴。スマートフォン用の「My NP1」アプリを通じて離れた場所からNP1のカメラ映像を確認したり、不審者発見時には警告メッセージを発報したりとトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。

3カ月に1回のペースでメジャーアップデートが行われており、NP1の機能追加はまだまだ終わらないとのこと。ガジェット好きかつ車好きの方なら、成長を楽しみにしつつ便利に使っていけそうなデバイスです。

  • ドライビングパートナー「NP1」

    ドライビングパートナー「NP1」