米Appleは現地時間1月16日、自社製チップ(SoC) Apple Siliconの新しいラインナップとして、電力効率とパフォーマンスを引き上げた「M2 Pro」と「M2 Max」を発表した。

  • M2 ProとM2 Maxのロゴ

M2 ProとM2 Maxは、同日発表の新しい「MacBook Pro(14型/16型)」に搭載。Appleは「業界をリードするワット当たりの性能により、M2 Maxはプロ向けノートブック用として世界で最もパワフルで電力効率の高いチップ」と説明している。また、新しい「Mac mini」では既存のSoC「M2」(2022年発表)搭載モデルに加え、今回新たに加わった「M2 Pro」搭載モデルも選べるようにする。各製品の詳細は、それぞれ別記事で紹介する。

  • 新しい「MacBook Pro(14型/16型)」

  • 新しい「Mac mini」はM2/M2 Pro搭載モデルが選べる

M2 Proは第2世代の5nm(ナノメートル)プロセスで製造。現行M2のアーキテクチャをスケールアップし、400億個のトランジスタを搭載する。最大12コアのCPU、最大19コアのGPUを備え、200GB/sのユニファイドメモリ帯域幅をサポート。最大32GBの高速・低レイテンシなユニファイドメモリを装備している。

  • M2 Proチップの内部

M2 Maxは、上記のM2 Proをベースに、670億個のトランジスタと最大38コアのGPUを搭載。M2 Proの2倍となる400GB/sユニファイドメモリ帯域幅をサポートし、最大96GBの高速・低レイテンシなユニファイドメモリを実現した。

  • M2 Maxチップの内部

どちらのチップも、高速な16コアのNeural Engineや、Appleのパワフルなメディアエンジンなど、従来よりも強化したカスタムテクノロジーを搭載。M2 Proは、Mac mini初のプロ向けのパフォーマンスを実現するほか、M2 ProとM2 MaxはMacBook Pro(14型/16型)のパフォーマンスと能力をさらに進化させるとアピールしている。

M2 Proは高負荷の作業高速化、“コンソール機並みのゲーム体験”も

M2 Proを構成するトランジスタの数(400億個)は、M2の約2倍にあたり、「M1 Pro」(2021年発表)からは約20%増加。ユニファイドメモリ帯域幅も、M2の2倍にあたる200GB/sまで増強している。

次世代の10コアまたは12コアのCPUは、最大8つの高性能コアと4つの高効率コアで構成しており、M1 Proの10コアCPUよりも最大20%高速なマルチスレッドCPUパフォーマンスを発揮。「Adobe Photoshopのようなアプリで負荷の高いワークロードをこれまで以上に速くこなし、Xcodeでのコンパイルを最速のIntel搭載MacBook Proの最大2.5倍の速度で実行できる」としている。

GPUは、M1 ProのGPUと比べて3つ多い最大19コアで構成でき、より大きなL2キャッシュを装備。グラフィックス速度はM1 Proと比べて最大30%高速になったことにより、画像処理のパフォーマンスが大幅に向上し、「コンソールゲーム機レベルの品質でのゲーム体験を可能にする」という。

  • Adobe Photoshopでの画像処理時のM2 ProとM1 Pro、Intel Core i9のパフォーマンスを示したグラフ。M2 Pro搭載MacBook Proは、M1 Proと比べて最大40%高速に、Intel Core i9プロセッサ搭載MacBook Proと比較して80%高速にAdobe Photoshopでの画像を処理できるとする

  • Xcodeでのコードのコンパイル時のM2 ProとM1 Pro、Intel Core i9のパフォーマンスを示したグラフ。M2 Proは、M1 Proと比べて最大25%高速に、Intel Core i9プロセッサ搭載MacBook Proの最大2.5倍高速にコードをコンパイルできるという

M2 Maxはプロ向けノートPC用として“最もパワフルで効率的”

M2 Maxは、プロ向けノートPC用として「世界で最もパワフルで効率的なチップ」を追求。M2 Maxを構成するトランジスタの数(670億個)は、M2の3倍以上にあたり、M1 Max(2021年発表)よりも100億個増加している。

400GB/sというユニファイドメモリ帯域幅の数値は、M2 Proの2倍、M2比で4倍に相当。最大96GBの高速ユニファイドメモリに対応しており、「巨大なファイルを瞬時に開いて、複数のプロ向けアプリを行き来する作業も驚くほど速く、スムーズにこなせる」とアピールしている。

M2 Maxでは、M2 Proと同じく次世代の12コアCPUを搭載。GPUは最大38コアを搭載してよりパワフルになり、従来よりも大きくなったL2キャッシュも装備する。グラフィックス速度はM1 Max比で最大30%高速化した。

M2 Maxを搭載した新しいMacBook Proは、最大96GBのメモリとあわせて、「競合システムでは実行すらできないような、グラフィックスを駆使したプロジェクトもこなせる」とする。ビジュアルエフェクトの処理から、機械学習モデルのトレーニング、ギガピクセル級の画像の合成まで、電源接続時やバッテリー使用時を問わず「驚異的なパフォーマンスを発揮する」とのこと。

  • M2 Max搭載MacBook Proを車内で使用している写真家。Apple Siliconの電力効率の高いパフォーマンスにより、M2 Maxは優れたバッテリー駆動時間を保ちながら、グラフィックスを駆使するプロジェクトを高速で処理できるという

M2 ProとM2 Maxはどちらも、最新のカスタムテクノロジーを採用。Appleの次世代16コアNeural Engineを搭載しており、1秒間に15兆8千億回の演算が可能で、前世代よりも最大40%高速化している。

M2 Proは、ハードウェア上で処理するH.264、HEVC、ProResビデオエンコード/デコードに適したメディアエンジンを搭載し、電力使用量を抑えながら複数の4K/8K ProResビデオストリームを再生できるという。一方、M2 MaxはビデオエンコードエンジンとProResエンジンを各2つ搭載しており、M2 Pro比で最大2倍の速さでビデオエンコードが可能とする。

ほかにも、Appleの最新の画像信号プロセッサはノイズ低減を強化しており、Neural Engineとともにコンピュテーショナルビデオを活用して、カメラの画質を強化。また、次世代のSecure Enclaveはクラス最高のセキュリティの重要な一部として機能する。

なお、macOSの最新バージョン「macOS Ventura」ではSafariやメール、メッセージ、Spotlightといったさまざまな機能が大幅にアップデートされているが、これらはすべてM2 ProとM2 Max上で反応の良さが向上し、効率的に実行できるようになっているとのこと。

  • M2 ProとM2 Maxのビデオエンコーディングのイメージ