メタバースや5Gなど新しいサービスや技術が次々と生まれていますが、では実際の生活にどのように応用されていくのでしょうか。2023年1月にラスベガスで開催された「CES 2023」では、日々の買い物・ショッピング体験の未来の姿がいくつか提示されていました。
ここ最近で最も旬な技術といえばメタバースでしょう。メタバースは仮想の世界の中に入り、様々なことを行えます。たとえば3Dで表現されたバーチャルなデパートの中に入り、陳列されている商品を手に取って見る、なんてこともできるのです。CESの会場でもメタバースを使ったバーチャルショッピングの展示がいくつか見られましたが、ロッテ・データコミュニケーションは韓国で展開しているロッテデパートを模したメタバース内での買い物体験デモを披露していました。
バーチャルショッピングは現在使われているオンラインショッピングとは異なり、立体感ある仮想的な空間内に自分の分身(アバター)が入り、自在に動き回ることができます。天候や時間に左右されず、いつでもどこでも本物に近い買い物体験ができるわけです。とはいえVRグラスをはめるのもちょっと面倒ですね。そこでロッテはグラス無しで3D表示ができるディスプレイの開発も進めています。ディスプレイの上には視線をトラッキングするセンサーがあり、眼の動きにあわせて3Dで表示をします。VRグラスをかけずにマウス操作で立体感のある映像を見ながら画面内のショップを訪問し、買い物体験が出来るわけです。
とはいえ没入感を味わうためにはやはりVRグラスは必要です。そこでシャープは軽量・薄型のVRグラスを開発し、CES 2023で発表しました。バッテリーは搭載せず直接スマートフォンに接続して使用します。4K解像度のディスプレイ、前面にはカメラもあるなど機能はなかなかのものながら、重さはわずかに175g。自宅で「ちょっと買い物でもしようかな」と思った時に、手軽に使えるVRグラスを目指しています。
またスマートフォンを使ったショッピング体験も数年後には楽しいものになりそうです。Arbeonが開発中のARソリューションは、ARを使いショッピングやSNSをシームレスに利用できるのです。たとえば友人の家に行っておいしいワインを飲んだときに、そのワインボトルをスマートフォンのARアプリで撮影、すると画面上にその銘柄のワインに関するSNSの投稿を見ることができます。Google検索ではなくSNSの情報なので、実際にそのワインを飲んだ人の生の声が聞けるというわけです。
さらにワインの横にはそのワインを販売しているECサイトの価格情報が表示されます。つまり「このワインが気になった→スマートフォンのアプリを通して見る→SNSの評判が自動表示→購入したいと思ったら表示されている価格をタップ」と、自分の気になるものの情報や価格がシームレスに表示されるのです。SNSアプリを開いたりショッピングアプリに切り替える、といったことが不要なので、欲しいものをどんどん買ってしまいそうですね。
さてオンラインではなくオフライン、実際のお店向けに使える技術もいくつかありました。DeepBrainはAIで会話するデジタルヒューマンを使った店舗スタッフ「AI KIOSK」を展示。ディスプレイ内に映されたバーチャルなスタッフに話しかけると、AIを通して最適な回答をしてくれます。対話中のデジタルヒューマンは本物の人間のように手や顔を動かしてくれるので違和感なく会話ができるそうです。すでに韓国では銀行や店舗への導入も始まっており、企業の省力化にもつながっているとのこと。
また日本でもすでに様々なところで使われている3DディスプレイをHypervsnは出展。回転するファンに映像を投影してホログラムのような表示をできるディスプレイで、CES 2023ではNFTアートを表示しておく3Dディスプレイとしての使い方が提案されていました。実際の用途としては小売店舗などで商品や商品のプロモーション動画を投影するのによく使われているとのことです。
化粧品のコーセーもCES 2023に出展し、東京・銀座にあるコンセプトストア「Maison KOSE銀座」で提供しているMRを使ったメイクアップソリューションを紹介。今や化粧品販売企業がIT系のイベントに出展する時代になっているのです。コンビニでスマートフォンを使って買い物するのが当たり前になったように、身の回りの消費活動のあらゆるところに、これから次々と新しいテクノロジーが導入されていくのでしょう。