ここ数年、秋に新製品が登場しているアクションカメラ「GoPro」シリーズ。ファン待望の最新モデル「HERO11 Black」も2022年9月に発売されました。最新のHERO11 Blackは一体、どこが進化したのでしょうか? 実機に触れる機会があったので「初心者にも使いやすいか」「歴代ユーザーは買い替えるべきか」という観点を交えて紹介していきましょう。

  • 最新モデルの「HERO11 Black」。公式ストアの直販価格は72,000円で、1年間のGoProサブスクリプション付きならば55,000円で購入できる(1月6日現在の価格)

横で撮っても縦長動画にできる! 手ブレ補正も大幅進化

外観上は、前モデルの「HERO10 Black」(2021年9月発売)とソックリなHERO11 Black。それもそのはず、サイズは71.8(W)×50.8(H)×33.6(D)mm、重さは約154gで、前モデルとほぼ同等です。写真の解像度は27.13メガピクセル(5568×4872ドット)、動画は5.3K / 60fps、4K / 120fpsなどの高解像度で撮影可能。防水性能は水深10mで、こちらも前モデルと同等となっています。

  • 前面には1.4インチのカラーLCDスクリーンを搭載

  • 背面はタッチ操作に対応した2.27インチのカラーLCDスクリーンを内蔵

  • 歴代モデルでは最軽量級だったHERO7 Black(左、2018年9月発売)との比較

しかし、使いやすさは大幅にブラッシュアップしています。たとえば、1/1.9インチCMOSイメージセンサーを採用したことで、アスペクト比(画面比率)8:7で映像を撮れるようになりました。これにより、とりあえず8:7で撮っておいて、あとから「テレビ画面で見る用に16:9のヨコ画面で出力する」、あるいは同じ映像を「スマートフォン向けに9:16のタテ画面で出力する」なんてことが可能になります。

  • 縦横比8:7で撮影した映像(写真中央)は、あとから好きなアスペクト比で切り出せるのが魅力。もちろん8:7のままでも出力できる

また、新たに10ビットカラーに対応しています(前モデルは8ビット)。より繊細なディテール、より滑らかなグラデーションで映像を残せます。普段、PCでカラーグレーディングしているユーザーなら、表現の幅が広がるでしょう。

  • HERO11 Blackは10ビットカラーに対応した

手ブレ補正は「HyperSmooth 5.0」に進化しました。筆者も、試しにHERO11 Blackを手に持ち、走りながら撮影してみましたが、揺れの少ない安定した映像が撮れました。カメラの動きやスピードに応じて補正レベルを自動で判断する「自動ブースト」をオンにしておけば、映像のクロップも必要最小限で済みます。

そして何より強調したい新機能に「水平ロック」があります。撮影中にカメラが傾いても水平を維持できる機能です。前モデルでも傾斜45度くらいまでなら対応(別売りのMAXレンズモジュラーを使えば360度フル回転にも対応)していましたが、HERO11 Blackではデフォルトで360度フル回転に対応しました。もはやジンバルは過去の遺物となりそうです。詳しくは、以下の動画を参照ください。

【動画】新機能の「水平ロック」を試してみた。手にしたHERO11 Blackをぐるりと回転させても、映像はしっかり水平を保っている

新型イメージセンサーによりアスペクト比8:7で撮れ、好きな縦横比で出力できること、360度フル回転に対応した水平ロック機能が搭載されたこと、この2点だけ考えても古いGoProから買い替えたり買い増しする価値は十分にあると感じました。

初心者にも使いやすいの?

では、初心者にも使いやすいのでしょうか? 答えはYesです。その理由の1つが、HERO11 Blackに追加された初心者向けの「イージーコントロール」モード。これをオンにすると画面が簡易表示に変わるので、意図せず設定をいじってしまう心配がありません。小難しい設定はGoProに任せ、気ままに撮影を楽しめるでしょう。

  • イージーコントロールモードを搭載したのも、HERO11 Blackの特徴の1つ

また、撮影した映像はiOS / Androidアプリ「Quik」で簡単に編集できます(詳細は後述)。そして、GoProサブスクリプションに登録したユーザーは、クラウドへの自動アップロード、ハイライトビデオの自動作成も利用可能になります。これは文字通り、HERO11 Blackから直接クラウドに動画ファイルが自動アップロードされ、良いシーンを散りばめたショート動画が自動的に生成される機能のこと。したがって「動画編集は苦手」というユーザーは、初めから1年間のGoProサブスクリプション付きプランでHERO11 Black本体を割安に購入するのがオススメです。

冬の雪山で撮影してみた!

ここからは、実際にスキー場で撮影してきた写真や動画を交えて機能を紹介しましょう。

HERO11 Blackには、35mm判換算で12mmという“GoPro史上最も広角”で撮れる「HyperView」モードが搭載されています。まずはこれを使い、ゲレンデから見下ろす雄大な景色を撮影してみました。以下の写真は、動画からキャプチャしたものです。

  • 撮影モードによる画角の比較。上からHyperView(12mm)、SuperView(16mm)、広角(16~34mm)、リニア(19~39mm)で撮影

夜間には、動く光によるブラシストロークエフェクトを作成する「ライトペインティング」や、夜空に美しい弧を描く星の光跡を撮影できる「スタートレイル」という新機能も試しました。以下の写真は、どちらも動画からキャプチャしたものです。

  • ライトペインティングのイメージ(撮影日は2022年12月中旬)

  • 星の軌跡がワンタッチで撮影できるスタートレイルのイメージ

それでは最後に、筆者の下手なスキーが映っている動画を披露しましょう。ゲレンデでは、チェストマウントハーネス、スキーのストックに装着できるマウントなどを使用して撮影しました。GoProシリーズは40点以上のアクセサリーに対応しているので、やりたいアクティビティや撮りたいシーンに最適なマウントが必ず見つかります。

  • チェストマウントハーネス(左)や、スキーのストックに装着できるマウント(右)を使用した

余談ながら、HERO11 Blackは取り外し可能な1,720mAhのEnduroバッテリーの採用により、常温環境下での撮影時間が従来比で最大38%も長くなっており、低温環境下にも対応しました。氷点下の冬の雪山でアクティビティをしていても、予想以上に電池がもってくれた印象です。

【動画】Quikアプリを用いて編集した映像。ファイルを選ぶだけで、見栄えのするショートムービーが簡単に作成できる。掲載した動画は、エクスポート時にフルHD画質(FHD)に圧縮している

ちなみに、動画編集はスマホアプリのQuikを使用し、わずか40分ほどで完成させました。筆者がやったことといえば、アプリから使いたい映像ファイルを選んだだけ。これだけで良い感じの動画が生成されるので、あとは使いたいシーンを微調整して仕上げました。Quikには、著作権を気にせずに使える、しかもクールなGoProオリジナルの楽曲がたくさん用意されており好印象でした。

  • 編集画面の様子。少し時間をかければ、それなりのクオリティの作品に仕上げられる