Fitbitは11月16日に、「健康経営のその先へ」をテーマにしたイベント「Fitbit Wellness Day Tokyo 2022」を開催しました。同社のウエアラブルデバイスは現在、個人ユーザーだけでなく600社におよぶ法人ユーザーにも活用されています。

イベントのキーノートスピーチに登壇したスティーブ・モーリー氏、Director APAC & Health Solutions International Fitbit @ Googleによれば、イベントの開催は今回で5回目。1回目は出席者が25人と小規模だったそうですが、今回は250席がすぐにいっぱいになるなど、「日本で健康経営への関心が急速に高まっている」といいます。

モーリー氏にグーグル傘下となったFitbitの日本での最新のビジネス動向と、気になる今後について聞きました。

  • スティーブ・モーリー 氏、Director APAC & Health Solutions International Fitbit @ Google

──まず、日本でのビジネスの現状について聞かせてください。

日本のウエアラブル市場は、世界の経済大国の中でも特に早い成長を遂げています。その成長を表しているもののひとつが、Fitbitの法人向けソリューションです。現在500社以上の企業、100以上の研究機関へソリューションを提供していますが、特に企業の伸びが顕著です。ウエアラブルを用いた社員の健康管理や健康経営に対する関心が、それだけ高くなってきているということです。

この背景には、日本の政府が健康経営を積極的に推進していることがあります。健康経営にテクノロジーやデバイスを取り入れる企業が、大手から中小へと広がって市場が拡大していく中で、そのメリットが徐々に社会全体に認識されるようになってきている。これはまだ始まりに過ぎず、まだまだ成長の余地はあると見ています。

──コロナ禍を経て、ユーザーの意識の変化なども市場の拡大に影響しているのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症により、日本だけでなく全世界的に医療制度や医療機関、医療従事者が逼迫されてしまうような危機的な状況に陥りました。我々は今後どのようにして公衆衛生を維持していくのか、大きな課題に直面しました。

それをきっかけに、人々の考え方に変化があったのは間違いないと思います。そうした中でウエラブルがひとつのソリューションとして注目され、多くの人が新たにその価値を見出したということは言えると思います。

──「Google Pixel Watch」にFitbitの機能が搭載されました。このことは今後のFitbitの製品ラインナップに影響がありますか?

プレミアムなコネクテッドウォッチである「Google Pixel Watch」に、Fitbitを搭載できたことは、我々にとってとてもエキサイティングな出来事です。今後も引き続きPixel Watchのエコシステムを強化、支援していきたい思っています。

  • Pixel Watchの歩数計測。Pixel Watchで計測した活動データを表示するには、スマートフォンのFitbitアプリが案内される

一方でウエアラブルというのはとても大きなカテゴリーで、1つのプロダクトですべてのニーズに対応できるものではありません。さまざまな選択肢が求められていると思います。たとえば日本市場のセグメントで特に人気が高く、非常に強いカテゴリーのひとつがノンコネクテッドウォッチです。

我々のラインナップの中でいうと「Versa 4」や「Sense 2」がこれに該当します。また好みの時計とは別にトラッカーを着けたいというニーズもあります。デザインや機能、価格帯など、引き続き様々な選択肢を設けて対応していきたいと考えています。

  • Fitbit用アプリは自分の活動量や睡眠、ストレスを見える化できる。また多くのセンサーを備えた専用デバイスに加えて、法人向けのサービスも提供する

──6月に有料のPremiumメンバー向けに「睡眠プロフィール」機能が追加されましたが、有料サービスへの反応は?

睡眠機能はユーザーにとても人気の高い機能のひとつです。FitbitにはPremiumではなくても、基本レベルの睡眠分析機能が備わっています。

これだけでも十分に優れたものではあるのですが、さらに高度な知見、役立つ情報を提供しようとPremiumのサービスに「睡眠プロフィール」を追加したのは、それだけ睡眠機能の人気が高いからです。

我々は2015年から、日本の消費者の皆様が何に興味関心を持っているのかを継続的に調査、研究していますが、日本では特に睡眠とストレスの2つの分野への関心が高いことがわかっています。具体的な数字は共有できませんが、そういったこともあって、日本におけるPremiumの利用率というのは非常に大きいものになっています。

  • アクティビティトラッカーとして15年の歴史を持つ。活動量から睡眠ステージ、心拍数、ストレスマネジメントのほか、多くのセンサーを用いた健康管理まで幅広い機能を搭載してきた

さらに日本におけるPremiumのサービスについて付け加えるなら、パートナーの「あすけん」(株式会社askenによる食生活記録・改善アプリ)と提携して、食生活や栄養管理のコンテンツも配信しています。

また日本は高齢化社会ということもあり、高齢者向けに座ってできるエクササイズなど、独自のワークアウト動画の制作も行っています。睡眠やマインドフルネスの優れた機能に加えて、ローカライゼーションにも注力してコンテンツを提供しています。日本のお客様はそういったところに価値を感じてくださっているのではないかと思います。

──高齢者向けという話がありましたが、「見守り」のような機能を提供する予定はありますか?

法人市場の中でも、健康寿命を延ばすための健康管理はとても大きな取り組みになっています。そうした課題を解決するためソリューションを開発するためにも、パートナーとの連携を強化しています。将来のことについてはお答えできませんが、今おっしゃっていただいた課題はもちろん認識しております。

  • 「Fitbit Wellness Day Tokyo 2022」では、FitbitのAPIを用いた様々なパートナーの取り組みが紹介された。Google Cloudのチームのセッションでは、Fitbit製品のGPS機能を用いて地図上に位置を示すだけでなく、心拍数などの状態も確認できる見守り機能のデモも行われた

──ローカライゼーションという観点から、マーケティングやプロモーションで日本独自の取り組みがあれば教えてください。

例えば店舗でどの機能からプレゼンテーションをするか。その順番は市場の優先順位に基づいて異なっています。欧米では活動量や運動がフォーカスされますが、日本では先ほど申し上げたように、調査から睡眠とストレスに関心が高いことがわかっています。

ですので日本市場では、睡眠やストレス関連機能の優先順位が高くなります。またローカライゼーションという意味では、細かな機能も含めた日本語化ですね。今後も継続して日本市場に向けたコンテンツを作っていきますし、そのことを日本の皆様に関心を持っていただける形で示していきたいと思っています。

先ほど、法人市場が伸びているという話をさせていただきまたが、健康経営に対する関心が急速に高まっている点は、他国と比べたときの日本との大きな特徴のひとつです。引き続き、市場でのプレゼンスを強化していく中で新たなソリューションを開発、提供し、法人だけでなく個人の領域にも広げていきたいと考えています。

──ありがとうございました。