KDDIは12月1日、通信衛星を利用してインターネット環境を提供する「Starlink」を利用したau携帯電話の基地局の運用を、離島の初島(静岡県熱海市)で開始しました。光回線を基地局まで引くのが困難な場所でも、電源さえ確保できれば携帯電話の通信や通話ができるようになります。KDDIの高橋誠社長は「日本全国、携帯電話がつながらないことをなくしたい」と、今後山間部や島しょを中心とした全国1,200カ所にStarlink基地局の整備を進めていくとしました。
離島や山間部にも低コストで基地局を設置できるStarlink
Starlinkは、あのイーロン・マスク氏がCEOを務める米Space Exploration Technologies(スペースX)社が提供する衛星通信サービス。これまでの通信衛星よりも低い高さを飛ぶ衛星(低軌道衛星)との通信をau基地局のバックホール回線として使うことで、基地局の周囲がauの通信エリアとなる仕組みです。Starlinkの衛星とユーザーのスマートフォンが直接通信をするわけではありません。
一般的な携帯電話の基地局は、KDDIの基幹ネットワークと光ファイバー回線で接続しています。しかし、人口が少ない離島や工事が難しい山間部では、光ファイバーを接続するのに多額の工事費用がかかるため、基地局の設置が難しいという欠点がありました。
しかし、通信衛星を利用するStarlinkならば、電源さえ確保できれば基地局が設置できるため、離島や山間部にも低コストで設置できるようになります。KDDIによると、光ファイバーを利用した基地局と比べても、そん色のない通信品質が確保できたとしています。もともと基地局が搭載できない船舶にも設置できるメリットもあります。
今回、Starlink基地局の第1号設置となった初島は、すでに光ファイバーを用いた基地局が設置されていたものの、山がちの地形だけに崖の下などは電波状況がよくないエリアが存在していました。Starlink基地局の設置で、そのあたりも4Gの通信が可能になりました。ビデオ通話も問題なくできています。
「スマホが使えないと作業員が集まらない」の悩みを解消
一般ユーザーにとっては、登山やキャンプ、離島でのレジャーの際にも大容量の写真や動画をアップロードできるようになるほか、安定した通信環境が確保できるメリットが生まれます。
さらにKDDIは、山間部での開発現場や工事現場、作業員の宿舎も通信エリアにすることを狙っています。特に、周囲に娯楽のない山間部の宿舎はスマートフォンが重要な娯楽であり、知人とのコミュニケーション手段となるため、通信環境が整っていないと人が集まらないといいます。現場の人手不足を解消する切り札としても、Starlinkが活躍しそうです。
さまざまなIT技術で楽しさや驚きを来場者にもたらすPICA初島
第1号のStarlink基地局が設置された初島は、「PICA初島」と呼ばれるグランピング施設が設けられています。ここでは、施設の来訪者を対象に、KDDIのIT技術を用いたさまざまな体験ができるようになっています。
その1つが、来訪者を遠隔で撮影してくれる「マチカメ」。施設内のさまざまな場所に設けられた撮影スポットで、チェックイン時に渡されるNFC内蔵リストバンドを切り株を模したリーダーにかざすと、見栄えのする構図で来訪者を撮影してくれます。撮影した写真はクラウドにアップロードされ、手持ちのスマホで見られます。各地で撮影した写真を組み合わせた30秒のショートムービー「思い出動画」もプレゼントされます。
もう1つが、大型ドローンを用いたサプライズプレゼント。直径2mもある大型ドローンが庭園にいる来訪者のもとに飛んできて、地域の特産品やデザートなどを持ってきてくれます。