ソフトバンク子会社のヘルスケアテクノロジーズは11月29日、法人・自治体向けに提供してきたヘルスケアアプリ「HELPO」を12月1日から個人向けにも展開すると発表しました。月額利用料は550円(診察代金・処方箋料などは除く)。ソフトバンク/ワイモバイル/LINEMOユーザーならお得に使える特典もあります。

  • ソフトバンク子会社のヘルスケアアプリ「HELPO」が12月1日から個人向けにも提供される。料金は月額550円、他社ユーザーでも利用できる

    ソフトバンク子会社のヘルスケアアプリ「HELPO」が12月1日から個人向けにも提供される。料金は月額550円、他社ユーザーでも利用できる

24時間365日、チャットですぐ専門家に相談できるヘルスケアアプリ

HELPOは、チャットによる健康医療相談、オンライン診療の予約・受信、病院の検索、一般用医薬品の購入などがワンストップで完結するヘルスケアアプリです。2020年7月に法人・自治体向けサービスを開始し、従業員や地域住民の健康管理などに活用されてきましたが、今回より広く一般に提供されるサービスとなりました。

サービスの核となる「健康医療相談」機能では、ヘルスケアテクノロジーズが直接雇用する医師・看護師・薬剤師らによる医療チームが24時間365日体制で待機。初回返信まで原則30秒以内というスピード対応で健康や医療に関する相談に応じます。

  • 少し具合が悪い時に病院に行った方が良いかの判断を仰いだり、市販薬の飲み合わせについて相談したりできる

    少し具合が悪い時に病院に行った方が良いかの判断を仰いだり、市販薬の飲み合わせについて相談したりできる。利用者の不安を少しでも減らすための努力として、チャットの初回返信は30秒以内を目標としている

この健康医療相談は医療行為としての「オンライン診療」とは異なり、対面診療の代替ではなく「体調に違和感があるけれど病院に行くほどでは……」というような一歩手前の段階でのサポートを想定したものです。いざ受診が必要になった場合は提携医療機関のオンライン診療サービスに繋いだり、近隣の病院や適切な診療科を案内したりといった橋渡しをします。

本格的なオンライン診療が必要になった場合にも利便性の高いサービスとなっており、予約不要で最短5分後から受信可能、夜間休日も対応(平日22時まで)、処方薬の配送も可能といった点が特徴です。

ECサイト「HELPOモール」では一般用医薬品や健康食品、化粧品、日用品などを販売。独自の物流網を活用し、東京23区内なら最短3時間で届くという即配サービスです。なお、アプリ内での決済にはクレジットカードのほか、PayPayも利用できます。このほか、健康の第一歩として日々の歩数に応じてポイントが貯まるという楽しみながら使っていける要素も取り入れています。

  • 相談機能のほか、オンライン診療や夜間往診の手配、医薬品の通販などの機能が集約されている

    相談機能のほか、オンライン診療や夜間往診の手配、医薬品の通販などの機能が集約されている

ソフトバンク/ワイモバイル/LINEMOユーザー限定特典

HELPOは通信会社の縛りなく利用できるマルチキャリアのサービスですが、同系列のソフトバンク/ワイモバイル/LINEMOユーザーならお得に使える特典もあります。

まず、「ソフトバンクまとめて支払い」「ワイモバイルまとめて支払い」を利用すればHELPOの料金を月々の携帯料金をまとめて支払えます。これらのキャリア決済設定時には、月額利用料が初月無料になります。

この無料期間内に歩数計機能を使い、1日あたり5,000歩の目標を一度でも達成すると、HELPOポイントを200ポイント獲得できます。HELPOポイントはHELPOモールでの商品購入に使えるほか、PayPayポイントへの交換も可能です。また、「オンライン診療利用支援サービス」を使って受診すると、月に1回500円分のHELPOクーポン(HELPOモール専用)がもらえます。

  • ソフトバンクユーザー向けの特典一覧

    ソフトバンクユーザー向けの特典一覧

「HELPO」個人向けサービス展開の背景

ソフトバンクは「Beyond Carrier」という成長戦略を掲げており、これはコアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りつつ、通信キャリアの枠にとらわれず幅広い領域の事業を展開していくというものです。ヘルスケアテクノロジーズもBeyond Carrier戦略の一環として2019年5月に設立されました。

  • ソフトバンクが掲げる成長戦略「Beyond Carrier」

    ソフトバンクが掲げる成長戦略「Beyond Carrier」

一口にヘルスケアと言っても、健康+αの状態を求める美容に近いものからセルフメディケーションのような医療寄りのものまでかなり広いジャンルですが、ヘルスケアテクノロジーズは医療を必要とする状態の手前、「未病」と呼ばれる領域に照準を定めてサービスを設計しています。

営利企業である以上直接的に医療に関わることはできないものの、既存の医療の枠組みではフォローしきれていない未病領域にはビジネスチャンスが眠っています。また、少し視点を変えると、未病の段階で健康をケアするサービスが存在感を増していけば、長期的には医療現場の負荷を減らし医療費問題に一石を投じることにもつながるという意味で、SDGsやCSRなどといった企業の社会貢献という観点からも意義のある取り組みといえます。

  • ヘルスケアテクノロジーズは、多岐にわたるヘルスケア領域のなかで「未病」をメインターゲットとしている

    ヘルスケアテクノロジーズは、多岐にわたるヘルスケア領域のなかで「未病」をメインターゲットとしている

HELPOは2020年7月にサービスを開始し、これまでは企業や自治体向けに提供されてきました。つまり、従業員や地域住民の健康管理のためのツールとして、個人の意思で進んで利用するというよりはトップダウンで配られ、使われています。

当初このようなBtoB、BtoGのビジネスモデルを選択した理由について、ヘルスケアテクノロジーズの大石社長は「医療のコストを下げていくという意味では一般消費者に直接提供してインパクトを与えた方が良いが、(2020年時点では)日本ではまだその段階には早いと判断した」と説明。具体的には、国や企業といった大きな単位で見れば日本には国民皆保険制度があったり健康経営に取り組む企業が出てきたりと仕組みが整っている一方、個人レベルでは健康に対する意識が諸外国に比べて低かったと言います。そこで、第一段階としては企業を通じてアプローチし、波を作ってヘルスリテラシーを高めていく道が選ばれました。

  • 参入時点では日本特有の文化・環境を鑑みて、BtoBやBtoGから攻めていく判断をした

    参入時点では日本特有の文化・環境を鑑みて、BtoBやBtoGから攻めていく判断をした

では2年後の今、なぜ個人向けサービスの開始に踏み切ったのでしょうか。その背景としては、長く続いたコロナ禍の影響が挙げられました。一般層の健康への意識が高まっただけでなく、医療リソースのひっ迫により異例の「受診控え」が呼びかけられる局面もありました。一般の意識と医療体制との両面の変化により、間を繋ぐ未病領域のサービスを個人向けにも展開していくニーズが出てきたというわけです。

また、ヘルスケアテクノロジーズの事業展開自体にもコロナ禍の影響はあり、同社は2020年11月からPCR検査サービスを提供し、その先の確定診断までの道を整えるためにオンライン診療の仕組みも構築。また、設立以来BtoBサービスを中心に展開しているものの、キャッシュレス決済アプリ「PayPay」のミニアプリを通じたPCR検査サービスの提供など、BtoCサービスにも進出済み。未曾有の事態を経験した副産物として、様々な面で今後のHELPOのプロダクト拡張につながるノウハウが蓄積されてきたと言えます。

  • ヘルスケアテクノロジーズ/HELPOの沿革

    ヘルスケアテクノロジーズ/HELPOの沿革

感染対策の一環で医療機関がオンライン診療を取り入れ始めていることもヘルスケアテクノロジーズにとっては追い風となる要素です。同日に同社が発表した「医療へのアクセスに関する意識調査」(調査対象:全国の20~70代男女600名)によれば、オンライン診療の認知度が88.9%であったのに対し、オンライン診療を利用したことがない人は92.0%にも及び、積極的なオンライン診療の利用を呼びかけたい医療機関側と受診者の意識には大きなギャップが見られます。

別の設問では「病院に行くべきか、行くほどでもないのか迷ったことがある」(61.3%)、「オンライン診療をどのような時に利用するべきなのか、判断に迷う」(62.4%)といった声もあり、HELPOのような気軽に触れやすいサービスが間に入ってパスを回すことで、このような層を未病で食い止めたり、対面診療とオンライン診療のどちらに適した内容かの切り分けを行ったりすることができれば、医療負荷の軽減に繋がるのではないでしょうか。

  • 写真左から、ヘルスケアテクノロジーズ 代表取締役社長 兼 CEO 大石 怜史氏、同社CSO 鴻池 大介氏

    写真左から、ヘルスケアテクノロジーズ 代表取締役社長 兼 CEO 大石 怜史氏、同社CSO 鴻池 大介氏