近い将来、Windows 11の時計に秒表示が復活する可能性が出てきた。Microsoftが現地時間2022年11月18日にリリースしたWindows 11 Insider Preview ビルド25247について、同社は「ユーザーからのフィードバックに応えて、システムトレイの時計に秒を表示する機能を導入した」と公式ブログで説明している。

  • Windows 11 Insider Preview ビルド25247で秒表示を有効にした

歓迎すべき改善の一つだが、ずいぶん時間がかかったように感じた。その理由はRaymond Chen(レイモンド・チェン)氏が2022年4月に投稿した記事が詳しい。同氏は2003年からMicrosoftに在籍し、Windowsの開発に長年携わってきた。著書「The Old New Thing」では、Windowsの機能実装、もしくは破棄した理由を技術者視点で述べている。筆者も日本語版を購入して、勉強させていただいた。

Chen氏は2003年10月の記事にて、Windows 95の最小システム要件である4MBメモリーのPCで秒表示を行うと、エクスプローラーに関連する機能のパフォーマンスが低下したため、秒表示を削除したと語っている。そして2022年4月の記事では、メモリー環境の変化を踏まえて「秒を取り戻さないか」と提案した。ただし、パフォーマンス低下の懸念は拭い切れないという。

また、一例としてChen氏は、Windowsターミナルサーバーの負荷向上を理由に挙げている。「既定ではキャレット(カーソル)の点滅が無効だ。100人のユーザーが500ミリ秒でキャレットを点滅させると、CPUをムダに使ってしまう」そうだ。では、我々が普段から使うPCでも難しいのだろうか。同氏は「答えはパフォーマンス」と述べながら、「1分より速い周期的な活動は、CPUの低電力状態に移行を阻止し、Windowsパフォーマンスチームに監視される。タスクバーの秒表示はUI的に必須ではない」と若干否定的だ。

2022年4月といえば、Windows 11 Insider Preview ビルド22593をリリースし、多くの機能はWindows 11 バージョン22H2へ反映されている。そこから約半年を経て、Chen氏が課題に挙げたパフォーマンス問題を何らかの方法で解決した結果、ビルド25247の秒表示に至ったのだろう。筆者も秒表示を有効にしたPCを長時間使用していないが、現時点で不安定な要素は見受けられなかった。

当然ながら、Windows Insider ProgramのDevチャネルは実験的要素が強い。必ずしも安定版Windows 11がすべての機能を受け継ぐわけでもなく、Windows 11 23H2(仮)が秒表示機能を備える保証もない。モバイルデバイスの場合はバッテリー駆動時間の短縮につながる可能性はあるものの、デスクトップPCなら有用な機能ではないだろうか。「13時からオンライン会議だから、12時55分にはログインしなければ……」など、秒単位で時間を確認したいユーザーなら役立つはずだ。今から機能展開が楽しみである。