米Appleの音楽配信サービス「Apple Music」の配信楽曲数が1億曲を突破した。他の主要な音楽配信サービスの公表されている楽曲数は、Amazon Music(9,000万曲以上)、Spotify(8,200万曲以上)、YouTube Music(8,000万曲)であり、同サービスが初めて大台に乗った。

Apple Musicは2015年に3,000万曲以上(米国など)の音楽カタログでスタート。2018年に5,000万曲に到達。2021年に7,500万曲、2021年に9,000万曲と、1年に約1,000万曲の増加ペースで音楽ライブラリを拡大させ続けている。

増えた音楽の中には、過去にレコードやCDで提供されていてストリーミングでも聴けるようになった楽曲も多いが、それ以上に過去を大きく上回るペースで新しい音楽が音楽ファンに届けられるようになった。

Appleによると、1960年代は新たにリリースされるアルバムが年間5,000枚ほどだったのに対して、現在は毎日2万人を超えるシンガーやソングライターが新たな楽曲をApple Musicに提供しており、同サービスは167カ国で利用できる。

1人のユーザーが1億曲を超える楽曲を全て聴くことはできない。1億以上の音楽ライブラリから自由に聴けるからこそ、音楽とオーディエンスを巧みに結びつけることが重要になる。サービス開始以来、Apple Musicは音楽の深い知識を持つエディタが作成するプレイリストなど人の手によるキュレーションを特長としてきた。また、「おすすめ」を提案するアルゴリズムにも人間らしい感性を重視し、キュレーションに注力することでアーティストとオーディエンスを音楽でつないできた。アーティストが自分の音楽を好むオーディエンスに楽曲を届けるチャンス、そして音楽ファンが新しい音楽やアーティストを発見するチャンスが広がる。1億曲突破は、「たとえベッドルームで音楽を作っている新人アーティストでも、次の大ヒットを出すことができる、より民主的な空間であることの証なのです」としている。

音楽ストリーミングサービスの普及は、音楽産業の再成長の原動力にもなっている。2001年に初代iPodが登場し、2003年にiTunes Music Storeがオープンして、音楽のダウンロード販売が成長し始めた。しかし、CD売上高の減少の方が大きく、米音楽産業は長い衰退のトンネルに入ることになる。2014年の米音楽売上高は67億ドルと、それまでの過去最高だった1999年(1,460億ドル)の半分以下に落ち込んだ。しかし、2015年にApple Musicが始まり、翌年から売上高が上向き始めた。それからわずか6年、昨年ついに150億ドルに達して過去最高を塗りかえた。そのうち有料サブスクリプションは、全体の57.2%に相当する86億ドルだった。

  • 1980年から2021年までの米音楽売上高の推移、iPodは音楽の楽しみ方を変えたが、デジタルダウンロード時代に音楽の売上高は下落。音楽ストリーミングサービスの普及と共に再成長が始まり、2021年に過去最高を記録した(Source:RIAA)