「東京ゲームショウ2022」(TGS2022)が9月15日から18日まで開催された。ホールの一角には「インディーゲームコーナー」を設置。ここだけで80ほどの企業、団体、個人が出展している。国際色も豊かで、普段、日本ではあまり見かけないようなゲームと出会うこともあるだろう。
そのため、「インディーゲームコーナー」は、ジャンルや国籍などが異なる、さまざまなゲームがギュッと詰まった、まるで“おもちゃ箱のような場所”と言える。気鋭のクリエイターたちが自らゲームをアピールする会場では、大手のパブリッシャーとまた違った熱を感じられて楽しい。
そんなインディーゲームコーナーをぶらりと散策。今回は、展示されていた作品のうち、『Last Time I Saw You』を紹介する。
『Last Time I Saw You』は、愛と受容をテーマに、ストーリー、探索、キャラクターの成長に重点を置いたナラティブアドベンチャーゲーム。1980年代の日本を舞台に物語が展開する。
ゲームは、主人公の少年「あゆみ」が、夢を見るところからスタート。あゆみは繰り返し同じ夢を見ていて、その夢には毎回黒いワンピースの女性が姿を現す。しかし、顔は見えず、その女性と会ったことがあるのかすらわからない。そんななか、ある台風の日、あゆみは不思議な出来事に遭遇するのだった。
デモ版では、おつかいをするためにマップを散策したり、台風の日の不思議な出来事に遭遇したりといったプロローグ部分をプレイ。おつかいでは、町の人と会話してゲームの世界の理解を深めたほか、バッティングのミニゲームなども体験できた。
物語が少し進み、台風の日が訪れると、突然ホラーゲームのような展開に。幽霊みたいな黒いモヤモヤに襲われたあゆみは、落ちていたバットで応戦する。
バットで幽霊を叩き落す場面は、まるで2Dスクロールのアクションゲーム。ただし、ゲームはあくまでもナラティブアドベンチャーで、あゆみが周囲の人と交流しながら物語を進めていくのがメインだ。
試遊を通じて特に感心したのがグラフィック。細部まで描きこまれた手描きのアートに目を奪われる。八百屋の看板や喫茶店の外観など、質感まで丁寧に再現されており、昭和の雰囲気をみごとに演出。ノスタルジックなグラフィックからは、どこか寂しさや不穏さも感じられる。
また、登場人物との交流も気になるところだ。黒いワンピースの女性以外にも、デモ版では、不仲な肉屋と魚屋や、野球に熱心な男の子、タバコを吸おうとたくらむ同級生など、さまざまなキャラクターが登場し、あゆみと伏線的なやりとりが行われた。このあとどのようなエピソードが待っているのか、あれこれと想像が膨らむ。あゆみと周囲の人との会話を読みながら進むゲームの展開によって、スッと物語の世界に没入できた点もよかった。
なお、TGS2022に出展された「デモ版」は、Steamのページでダウンロード可能。世界観を体験してみたい人はチェックしてみてはいかがだろうか。