AMDは日本時間で8月30日の午前8時に、YouTubeの同社のチャネルにて"AMD together we advance_"と題してRyzen 7000シリーズの発表を行った。この内容をまとめてお届けしたい(Photo01)。

  • Ryzen 7000シリーズを持つLisa Su CEO

    Photo01: Ryzen 7000シリーズを持つLisa Su CEO。

さて、Ryzen 7000シリーズはZen 4コアに5nmプロセスを組み合わせた製品という事は前からアナウンスがあったが、今回改めて

  • IPCは平均でZen 3比で13%向上
  • 最大動作周波数は5.7GHz
  • 結果、Single Thread Performanceは29%向上

といった数字が示された(Photo02)。ハイエンドの製品はRyzen 9 7950Xとなる(Photo03)が、Ryzen 9 5950Xに比べて大幅に性能が改善するとしている(Photo04)。またV-Ray Renderを実施した場合、Core i9-12900K比で57%高速で、しかも省電力というデモも示された(Photo05)。

  • Photo02: 以前の話では、IPCは8~10%向上という話だったが、要するに三味線を弾いていた模様。

  • Photo03: ただしTDPは170Wまで増加。L2はコアあたり1MBなので、L2はダイあたり32MBと据え置きである。

  • Photo04: Game Benchmarkの方は解像度などによって数字は変化するので、右側のCreator Performaneの方がわかりやすい。

  • Photo05: 単に性能だけでなく省電力性にも優れていると言いたいのだろうが、57%性能アップに対して性能/消費電力比は47%アップだから、絶対的な消費電力ではややCore i9-12900Kより多いことになる。

  • Photo06: 単純に考えるとCCDが1個あたり65W、IODが40Wという計算だが、果たしてあっているかどうかは自信がない(ちょっとIODが大きすぎる気もする)。

ラインナップとして今回発表されたのはこの4製品である(Photo06)。で、下位モデルであってもGeekBenchのSingle Thread PerformanceはCore i9-12900Kを凌ぐとされる(Photo07)。実際F1 22でのフレームレートを比較した場合、Core i9-12900Kが398fpsに対しRyzen 5 7600Xですら447fpsとはるかに上回る、としている。いくつかの事例がこちらで、大きく勝るとはいいがたいものの、十分競合するレベルの性能を出している、とアピールしている(Photo08)。

  • Photo07: グラフの高さは結果に比例しないので数字で比較してほしい。というか"in gaming"でGeek Benchの数字というのはどうなんだろう?

  • Photo08: 余談だがF1 2022ではなくF1 22が正式名称である。

ところでIPC upliftの13%の根拠がこちら(Photo09)。アプリケーションによって上がり方は様々だが、平均13%の性能向上、という訳だ。これをどうやって実現したか? の内訳がこちら(Photo10)。ここで一番大きいのがFront Endの改良だが、今回はまだ詳細は発表されなかった。ただおそらくは5命令デコーダを搭載した、と考えるのが妥当に思える(か、MicroOp Cacheを10μOp/Cycleまで広げたか、どっちかだろう)。また前評判通り、AVX512をVNNI付でサポートした(Photo11)。

  • Photo09: SPECCPUとかでなくアプリケーションベンチ、という辺りがいかにもである。

  • Photo10: Branch Predictionだけで従来比6%程度の性能改善があったらしい。

  • Photo11: Intelは逆にAlder LakeでAVX512のサポートを切っているあたり、両社の対比が面白い。

また5nmプロセスも性能/消費電力比の向上に大きく貢献している(Photo12)。消費電力が低いほど性能/消費電力比は向上するが、65W枠に抑えると実に74%もの効率向上が見られるあたり、Underclock動作を狙うと面白いことになりそうだ。

  • Photo12: これを見ていると、Ryzen 9 7950Xも105W TDPで運用するのが一番幸せになれる気もしなくもない。

エリアサイズ比較を行ったのがこちら(Photo13)。Zen 4はAlder LakeのGolden Cove比でほぼ半分の面積と、47%もの効率向上を実現しているとする。Zen 3 vs Zen 4という比較でいえば、同じ性能なら62%省電力、同じ消費電力なら49%高性能とされる(Photo14)。

  • Photo13: まぁIntel 7は実質10nm+++だから、TSMCの世代でいえばT7P+相当な訳で、この程度の差があるのは致し方ないだろう。

  • Photo14: この辺は測定条件次第のところはあると思う。もう少し細かい前提が知りたいところだ。

次がプラットフォーム。AMDはこの世代でDDR5をサポートするSocket AM5を投入する(Photo15)。具体的にはX670/X670 Extremeが9月に、B650/B650 Extremeが10月にそれぞれ製品投入される予定だ(Photo16)。このExtremeが付く付かないの違いはPCIeのサポートで

Extreme:StorageとGPUが両方PCIe Gen5対応
無印 :StorageのみPCIe Gen5対応

という事だそうである。確かにGPUは既にPCIeの高速化のメリットとほぼ無縁になっているから、ある意味リーズナブルではある。もっともGPU向けのx16スロットに、NVMe SSD×4のライザーカードを挿して使うようなケースもあるから、そういう用途を考えているのであればExtremeの方を買ったほうが無難だろう。PCIe 5.0対応のSSDも今年11月位は出揃うとの事であった(Photo17)。

  • Photo15: LGAで1718"Pin"はちょっと変だとは思う。230Wという数字は以前もアナウンスがあったが、これはプラットフォームとしての最大値である。

  • Photo16: B650 Extremeはちょっと予想外だった。

  • Photo17: 殆どのメーカーはPHISONのPCIe Gen5対応コントローラを使うだろうが、他にMarvellのコントローラを搭載した製品とかも出てくるかもしれない。

またメモリ回りでいえば、現在はDDR5-4800が一番普及しているが、今年はDDR5-5200が主流になるとしている(Photo18)。ただAMDはコンシューマ向けに関してはOC Memoryを積極的にサポートしていくつもりのようで、ここに向けてAMD EXPO(EXtended Profiles for Overclocking) Technologyを投入した(Photo19)。要するにIntelのXMP 3.0(DDR5対応のXMP)の向こうを張るもので、よりOCに最適化したものとされる(Photo19)。Ryzen 7000発表時には、このEXPO対応のDDR5-6400メモリが15製品以上出荷される予定との事だった(Photo20)。

  • Photo18: まださすがにDDR5-5200をOCなしで実現する製品はちょっと少ないが。

  • Photo19: XMPもサポートはするが、EXPOはXMPよりもっと優れているとの事。

  • Photo20: 流石にOCなしでDDR5-6400をサポートするメモリは現状存在しないから、まぁOCメモリのみになるのは致し方ないところ。

AMDはこのAM5 Platformを2025年以降まで継続サポートすることを明確にした(Photo21)。ちなみに"2025年ならもうPCIe Gen6対応製品が出てくるのでは?"と振ったところ「まだPCIe Gen5対応製品が出てきたばかりなので、現状PCIe Gen6についてはまだ何とも言えない」との事だった。実際Signalingでいえば据え置きだが、変調方式がNRZからPAM4になる関係で、特にRetimerは異なるものになる。なので、可能性としてはAM5そのものでPCIe Gen6まではカバーできるが、マザーボードそのものは変更になる(搭載されるReTimerが切り替わる)感じになりそうに思える。それにしても一番安価なマザーボード(多分B650ベース)は$125程度と、そこそこ安価に抑えられそうだ。

  • Photo21: PCIe Gen7はもう全然無理だろうが、こっちは標準化完了が2025年以降だし、DDR6の標準化ももう暫くかかるだろう。AM6はなので2026~2027年位になりそうで、そこまでAM5で頑張る感じになりそうだ。

最後にまとめであるが、Zen 3世代との比較(Photo22)及びAlder Lakeとの比較(Photo23)、それと価格(Photo24)が示された。ただ円安の折、国内での価格が幾らになるのかちょっと怖いところである。ちなみに製品パッケージの写真も示された(Photo25~30)。

  • Photo22: 正直、ここまで性能が上がるとは思わなかった(性能/消費電力比は向上すると思ったが)。

  • Photo23: この数字はRaptor Lakeと比較しても良い勝負(で、より消費電力が少ない)と思われる。

  • Photo25: 新しいパッケージ。

  • Photo26: Ryzen 5 7600X

  • Photo27: Ryzen 7 7700X

  • Photo28: Ryzen 9 7900X

  • Photo29: Ryzen 9 7950X

  • Photo30: パッケージを展開するとこんな感じになるらしい。

最後にOne more thingとしてRDNA3の動作デモも示された。こちらの詳細は今年中に明らかにされる、との事である。