タイガー魔法瓶(以下、タイガー)は、真空二重構造の魔法瓶や炊飯器をはじめとした製品を手がけ、熱制御に関する高い技術力でも知られるメーカー。そんなタイガーは2023年で創業100年をむかえます。これを記念して、同社のプレミアム炊飯器「ご泡火炊き」シリーズに、100周年記念モデルの「<炊きたて>土鍋ご泡火炊き JPL-S100」(以下、JPL-S100)が登場しました。

「持てる技術の粋を集めた」(タイガー)という最高峰モデル、ごはんの味はどうでしょう? メディア向けの試食会で体験してきました。JPL-S100の本体カラーはスレートブラックとミストホワイトの2色、推定市場価格は140,800円です。

まずは新モデルをチェック、旧モデルとはどこが変わった?

タイガーのプレミアム炊飯器は、内釜に土鍋を採用しているところが大きな特徴。炊飯器はとても精密な設計なので、焼きによって形が微妙に変わる土鍋を内釜に使うには高い技術を必要とします。

  • 四日市の萬古焼を使ったJPL-S100の内鍋。一般的な土鍋の2倍以上という強度があり、割れにくくなっています。もし割れてしまった場合も、5年の保証があるので安心です

ちなみに、タイガーが語る土鍋ごはんが美味しい理由は3つ。ひとつは金属釜の2倍以上の最高温度である約280℃まで加熱できること。これにより米のアルファ化(でんぷんが糊状になること)が促進されて甘みを引き出します。次に、土鍋は金属釜の約4倍以上という遠赤効果を持ち、お米のうまみも出やすいとのこと。

最後の3つめは、土鍋表面にある細かな凹凸が沸騰時に大小の泡を作り出し、沸騰時に泡で米を包み込みます。これにより、激しく沸騰しても米表面に傷がつくのを抑え、表面がつややかで弾力あるもっちりとした食感のごはんが炊き上がるそうです。

  • 会場には、加熱沸騰中の炊飯器内部をカメラで撮影する特殊モデルも。沸騰中に内釜内が泡だらけになる様子を確認できました

【動画】音声が流れます。ご注意ください

本物の土鍋を使ったタイガーの炊飯器は、前モデルのJPL-G100も同じです。新モデル(JPL-S100)との違いは、ズバリ加熱方法。プレミアム炊飯器を開発するメーカーの多くは、昔ながらの「かまどで炊いたごはん」を理想としています。しかし、炊飯器では沸騰したおネバが吹きこぼれるため、かまどのような長時間の高温加熱は難しいとされてきました。

新モデルのJPL-S100は、加熱時にフタの内部に風を送ることで吹きこぼれを抑制し、長時間の高加熱という理想的な炊飯を実現しています。そうめんを茹でているとき、吹きこぼれそうになったらフーフーと風を送ると泡が落ち着きますが、それを炊飯器の内部で再現したわけです。

  • こちらは前モデル(JPL-G100)のフタ内部構造。半透明の管は、余分な蒸気を逃がすための「ハリつやポンプ」

  • 新モデルのJPL-S100ではポンプの管が1本増え、沸騰時におネバを受けるパーツに接続されています。沸騰するとここから風が送り込まれ、強制的に沸騰時の泡を静めます

  • 釜内に空気を送って、吹きこぼれをおさえます(左側)。画像の右側では、黄色い丸で囲ったところから内部の泡が出ています

この新機構「連続ノンストップ加熱」によって、前モデルと比べて1.5倍の時間、約106℃の釜内温度を維持できるようになりました。炊き上がったごはんの甘みは従来モデルから約17%アップし、うまみも向上したといいます。

また、土鍋ご泡火炊きシリーズは保温も得意な炊飯器です。炊飯後はハリつやポンプが余計な熱や蒸気を放出し、温度をきめ細かく制御。長時間保温しても、保温時の独特なニオイや黄ばみが抑えられます。

  • 炊飯時に内釜内の高温を長時間維持する「連続ノンストップ加熱」のイメージ

  • AI味覚センサー「レオ」を使ってごはんの甘みやうま味を計測。前モデルのJPL-G100をはじめ、同じ価格帯の他社製プレミアム炊飯器とも比較して、JPL-S100で炊いたごはんは甘みの数値が高い結果に。青いバーは12時間保温した後の味を示しており、JPL-S100は保温しても甘みが落ちにくい結果となりました

実食!

続いて試食の時間です。新製品のJPL-S100で炊いたごはんのほか、他社製プレミアム炊飯器で炊いたごはんも食べ比べ。

  • 試食のお膳。一番左がJPL-S100のごはん、右の3種類は他社製プレミアム炊飯器で炊いたもの

  • 真剣に味わう林編集長

試食したごはんはすべて同じお米を炊いているのですが、ほどよい量を口に運び、ゆっくりかみしめながら食べていると、味も香りも「本当に同じお米を炊いたの?」というくらい違います。いずれもプレミアム炊飯器だけに美味しいのは当たり前ですが、プレミアム炊飯器はメーカーのこだわりが詰め込まれているため、普及価格帯の炊飯器よりも味や香り、食感の個性が際立つのです。

そんななかJPL-S100は、比較的さわやかでおかずに合わせやすそうな香り。味は一口めからドンと甘みが主張し、じわじわとうまみが強くなります。甘みだけが突出しているわけではなく、うまみとバランスが取れている印象です。弾力ある食感ですが、シャッキリ系というよりモッチリふっくら。筆者は数カ月ほど前モデル(JPL-G100)を自宅で使ったことがありますが、味や食感の系統は同じながら、前モデルよりも甘みの主張が強くなっていると感じました。

  • ツブ立ちがよく、お箸で持ち上げると一粒一粒の形がしっかりしています

ごはんには「美味しさの正解」というものはありませんが、JPL-S100で炊いたごはんは多くの人が美味しいと感じる、大道の味だと思います。

美味しさ、デザイン、お手入れのしやすさいずれも優秀! でも……

使いやすさやお手入れのしやすさも優秀です。最近のプレミアム炊飯器は多機能化していますが、そのぶんボタンが増えたり、メニューの選択回数が増えたりと、操作が複雑になっている場面もあります。JPL-S100は大きなタッチセンサー液晶画面に必要な情報だけを表示するため、操作もわかりやすく簡潔です。

  • 業界最大級の液晶画面サイズは文字も大きくて見やすく、明るいバックライトで視認性もバッチリ。なお、以前から備えていたお米の銘柄炊き分け機能は、JPL-S100では70銘柄に対応するようになりました

  • 圧力IH炊飯器の場合、炊飯後に洗うパーツが5~6点あることも珍しくありませんが、JPL-S100は内釜と内ぶたの2点だけですみます

ただ、これらの機能は前モデルも搭載していたもの。JPL-S100と前モデルJPL-G100との大きな違いは「連続ノンストップ加熱」くらいです。「100周年記念モデル」と銘打ったにしては、マイナーチェンジという印象もあります。

とはいえ、前モデルまでのJPLシリーズは、さまざまな家電系アワードで累計8冠を達成したほど完成した炊飯器。新モデルのJPL-S100も同じシリーズとして、使い勝手もデザインも優秀、そして味がブラッシュアップされて甘みの強い美味しいごはんといったように、魅力的な炊飯器であることは間違いありません。

  • 会場には7月20日発表のJPV-A100も展示。JPL-S100は推定市場価格140,800円となかなか高額ですが、JPV-A100は想定46,800円と比較的手が届きやすい価格帯です。内釜は土鍋コーティングを採用しており、上位モデルのJPLシリーズで培った炊飯技術を生かした炊飯プログラムを搭載しています