三菱電機が手がけてきた炊飯器が50周年を迎えました。そのタイミングで発表となった新製品は、フラグシップ機の「本炭釜 紬(つむぎ)NJ-BWD10」です。粒感のある「もちあま」ごはんを炊き上げるという新しい炊飯器、メディア向けセミナーからお届けします。

NJ-BWD10は5.5合炊きで、50銘柄のお米に対応した豊潤炊きメニューを搭載。炊飯メニューは、白米や無洗米をはじめとして、玄米、胚芽米、発芽米、雑穀米、おかゆ、中華がゆ、おこわ、おこげ、麦飯など全16メニューです。本体サイズは幅261×奥行き14×高さ257mm、重さは約5.8kgとなります。発売は5月21日、価格はオープン、推定市場価格は121,000円前後。カラーは月白(ホワイト)と黒曜(ブラック)の2色です。

※中国・上海のロックダウンによる影響で、発売が延期されました。2022年5月17日時点で未定となっています。
※発売日が2022年7月8日に決定しました。

  • 本炭釜 紬(つむぎ)NJ-BWD10、本体カラーは月白(ホワイト)と黒曜(ブラック)

    本炭釜 紬(つむぎ)NJ-BWD10、本体カラーは月白(ホワイト)と黒曜(ブラック)

炊飯工程は3つ。美味しさのポイントは高火力沸騰・連続沸騰

10万円を超える高級炊飯器は、炊飯時に高い圧力を用いる製品が多数派。しかし三菱電機の炊飯器は、そうした圧力機能を使わずにごはんを炊いています。

「圧力機能を使うと水の沸点が100~105℃に上がり、ごはんは柔らかめに仕上がります。当社では、柔らかいごはんではなく、昔ながらの羽釜で炊いた『粒たつ』ごはんを炊きたいという思いで、研究を重ねてきました」(三菱電機 松村眞介さん)

羽釜で炊いたごはんを目指して三菱電機が注力したのは、「連続沸騰」と「断熱構造」でした。

炊飯器の炊飯工程は、吸水などを行う「仕込み」、高火力で炊き上げる「本炊き」、そして「むらし」の3つの工程があります。新製品では、まず「仕込み」の工程でしっかりとお米に水を吸わせてから沸騰。従来比で約23%アップしたという火力によって、沸騰を開始するまでの時間を短縮して急速沸騰を実現しました。

  • 炊飯の工程は大きく3つの工程に分かれます

  • オレンジ色の線が従来機、赤い線が新製品。新製品はグラフのカーブが急角度になっています。つまり加熱を始めてから短時間で水が沸騰するということ

その後は火力を維持しながら連続して沸騰させていくのですが、ここでひとつ課題があります。羽釜で炊くときは吹きこぼれても大丈夫ですが、家電製品の炊飯器はそうはいきません。そこで内釜の形状を改良しました。

「一般的な炊飯器では、電気をオンオフして吹きこぼれないよう火力を調節しています。そのため沸騰状態を維持させるのは難しいことでした。NJ-BWD10は内釜の形状を工夫し、沸騰時の泡を消して吹きこぼれないようにしました」(松村さん)

  • 内釜の縁の部分に注目。段があることで泡を消し、沸騰による吹きこぼれを防ぎます

  • 吹きこぼれしない連続沸騰を実現

「むらし」工程でもひと工夫。断熱材と空気層で構成する「新・エア断熱 5層」を導入しました。熱を逃がさずに「むらし」工程でも高温を維持し、お米にしっかりと熱を届けます。こうした工夫によって、甘みと粒感のあるごはんが炊き上がるわけです。

  • 空気の層と断熱材で熱を逃がしません

  • カットモデル。白い部分が断熱材。全体に配置されています

「炭の釜」にこだわる理由は、IHと相性がいいから

NJ-BWD10は「本炭釜」という名前のとおり、内釜の素材は炭。一つ一つ削り出して約100日かけて完成させるという、とても手間のかかる内釜です。

  • 本炭釜の内釜は100日もかけて作るんだとか……

「炊飯器の熱源はIH。炭はそのIHと相性の良い素材です。ステンレスなどほかの素材と比べて、IHのエネルギーが釜の素材に深く浸透するため、内釜全体が発熱して高い火力を実現します。すばやく発熱するため、一気に高温に達します」(松村さん)

ちなみに、内釜の内面はコーティングしており、コーティングのメーカー保証は3年。内釜でお米を研いでも問題ありませんが、洗い桶の代わりに使うのはオススメしません。また、陶器のお皿と同じように、強く叩きつけないようにしましょう。

  • ステンレス、鉄、炭という異なる素材で作った3種類のプレートを、IHで加熱して温度変化を観察するデモ

  • ステンレス製のプレートは24℃前後、鉄製のプレートは38℃前後だったのに対し、炭製のプレートは100℃を超えました

  • 内釜の重さは約1kg。片手で持つにはちょっと重いかもしれません。この内釜はかなり頑丈で、100万回は内釜で洗米しても大丈夫だそうです

  • NJ-BWD10の天面。大きめの液晶表示とボタン、ボタンの文字によって、操作感は良好です

  • こちらは月白(ホワイト)モデルの天面。電源が入っていない状態です

和食と相性ばっちり。おかずをひきたてるごはん

今回のメディア向けセミナーには、五つ星お米マイスターの佐藤貴之さんがゲストで登場。

「美味しいごはんは、ひとつではありません。お米の持ち味が際立つごはんこそ、美味しいごはんといえます。ツヤ、香り、甘み、粘りなど、ごはんを構成する味が複合的に演出されることが大切です。ごはんは何千粒も一緒に食べるものなので、粒感とおかずの調和を楽しむことが醍醐味」(佐藤さん)

  • 粒感のあるごはんは、日本人の食べ方と相性が良いそうです

佐藤さんの話の後は試食タイム。今回の試食は、料理研究家の小田真規子さんが監修したメニューです。

あっさりしたおかず、ピリ辛のおかず、味の濃いおかず、香り豊かなおかずなど、多彩なおかずが用意されました。

  • 左上から時計回りに、「塩鮭のごま油漬け」「根菜のハーブきんぴら」「鶏のオレンジ中濃ソース焼き」「彩り魚介の手まりすり」「和風キーマカレー」「ピリ辛肉じゃが」

  • ハリのあるおいしいごはんでした

  • 試食するマイナビニュース・デジタルの林編集長。「個人的にはあっさり系のおかずが好みでした。ごはんの味がよくわかる! おかわりすればよかった」(林)

NJ-BWD10で炊いたごはんは粒感があり、噛むほどに甘みがじわっと伝わってきます。味が濃いおかずを食べると、塩気をちょうど良く中和してくれました。一方、あっさりしたおかずは風味をサポートするような存在に。粒感と歯触りがとても心地よく感じました。

ごはんの存在感だけを主張するのではなく、おかずを一緒に食べることで、おかずの味をしっかりとひきたてて受け止めるようなごはんです。今回のような和食にとても合うごはんではないでしょうか。

炊きたてのごはんが美味しいのは、いわば当たり前。近年は各メーカーの炊飯器が「冷めても美味しいごはん」を打ち出しています。NJ-BWD10で炊いたごはんも、冷めても美味しいことに驚きました。炊いてから3時間ほどたった状態のごはんを食べたのですが、粒感ともちもち感はそのまま。これはおにぎりにしたら絶品だろうな! と期待させられる味でした。

  • Aが三菱のNJ-BWD10。弾力があり、粒感もばっちり。メーカーCのごはんは水分が多めで柔らかい食感、メーカーDのごはんは柔らかくふわっとしますが、ちょっとくっついているような歯応えでした

50周年の記念モデル。日々の使い勝手にも配慮

三菱電機がジャー炊飯器を発売したのは1972年のこと。同社の炊飯器は2022年で50周年を迎えます。

2006年の「本炭釜 NJ-WS10」は、当時としては異例の「10万円炊飯器」として市場に登場。高級炊飯器市場が広がっていきました。2009年の「蒸気レス NJ-XS10J」は、炊飯時に出る蒸気を約95%カットした炊飯器。画期的なアイテムとして話題になりました。

  • 三菱の炊飯器は50周年を迎えます

50周年記念モデルとなる今回の「本炭釜 紬(つむぎ)NJ-BWD10」は、ごはんの美味しさにこだわったのはもちろんですが、使い勝手にも配慮しています。炊飯後のお手入れは「内釜」と「内ふた」の2点のみ。圧力機能を備えていないため、フラットな形状で洗いやすい点がポイントです(圧力機能があると、圧力を受け止めるために立体的な構造になることが多いのです)。また、「ふた開きボタン」には「SIAA認定抗菌」を施し、清潔性も高めています。

このほか従来モデルから搭載している、早炊きでも美味しいごはんを炊ける「うま早」メニューや、0.5~2合という少量でも粒感があってほぐれるごはんに炊き上げる「少量名人」メニューなどを継続しています。

粒感のあるごはんは、しっかりと味わうごはん

繰り返しになりますが、NJ-BWD10で炊いたごはんは、ゆっくり噛んで味わいたくなるごはんでした。美味しいごはんは毎日の満足度を高めてくれます。「粒感のあるごはんが好き」「和食をよく食べる」という人にオススメしたい炊飯器です。