炊飯器を買うときは、美味しいごはんを食べたいと思うものですが、メーカーによって炊き上がりが違います。今回は象印マホービンの圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き」新モデル(NW-FA型)で炊いたごはんを試食してきました。弾力と甘みがあって、おかずの味をしっかり受けとめる力強い味わいです。炊き上がりの秘密は内部構造の進化にありました。

圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き」(NW-FA型)は、6月21日発売。価格はオープン、推定市場価格は5.5合炊きの「NW-FA10」が143,000円、1升炊きの「NW-FA18」が148,000円です。

  • 象印マホービンの圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き」(NW-FA型)。黒釉(くろゆう)モデル

  • こちらは絹白(きぬしろ)モデル

象印の炎舞炊きシリーズは、熱源となるIHヒーターを複数使って高火力を維持する炊き方が特徴。6つのIHヒーターを底部に配置し、対角線上にある2つのヒーターを同時に加熱することによって、かまどの火のゆらぎを再現したというものです。大火力とゆらぎによる対流でお米をかき混ぜ、まんべんなく加熱して甘みのあるごはんを炊き上げます。

「お米は水と火力によってデンプンが分解され、甘みのあるごはんになります。美味しいごはんには、水と熱が必要なんです。炊飯時にかき混ぜることでお米のデンプンが水中に溶け出し、デンプンが水と熱に触れる機会が増えるため、早く甘み成分になります。甘み成分は最終的にお米の表面にコーティングされていきます。ごはんを口にしたとき、まず舌に触れるのはお米の表面なので、ごはんは甘く美味しく感じるというわけです」(象印マホービン 三嶋一徳氏)

さて、象印の炊飯器を購入した人に対する満足度調査では、95%が満足と回答していますが、さらに100%を目指して美味しを追求。新モデルでは「対流によるかき混ぜ」に注目し、炊飯性能を向上させました。

  • 象印の炊飯器ユーザー、約95%が満足しています

まずは従来モデルで炊飯するときの、対流の様子を観察。釜内でお米がどのように混ざるのかを確認です。着色した玉こんにゃくを使い、対流の様子を再現した映像を見てみます。玉こんにゃくは上下には動きますが、釜内の真ん中に玉こんにゃくが届かず、釜の側面をぐるぐる回っていました。

続いて、お米を赤と青の2色に着色して炊飯し、混ざり具合を確認。釜の周囲は赤と青の米がしっかり混ざっているのに対して、真ん中はほとんど青いお米です。赤と青のお米を交互に配置して観察すると、炊飯時のお米で横方向の動きが少ないことがわかりました。

  • 従来モデルのIHヒーター。コイルを6つ並べています

  • オレンジ色の玉こんにゃくの軌跡を黄色の線で表します

  • 中央部分が混ざっていません

  • 横方向の動きがあまりありません

そこで象印は、釜の中心部でのお米の動き、そしてお米の横の動きを強化するため、IHコイルの構造と配置を見直しました。新たに「3DローテーションIH」と名付けたこの構造、ポイントは2種類のコイルを配置したことです。

縦方向の対流を生み出す円形のコイルと、横方向の対流を生み出す楕円形のコイルを採用しています。従来はすべて同じ形で左右対称に並んでいましたが、新モデルではコイルを真ん中に近づけて配置し、複雑な対流を起こせるようにしました。縦・横・斜めの激しい対流によって、しっかりとお米をかき混ぜます。加えて「単位面積当たり4倍以上の大火力」を実現したそうです。

  • 新モデル(NW-FA)の「3DローテーションIH」

  • 新モデルの3DローテーションIH(写真右側)は、中央にもIHコイルを配置しています

  • 温度センサーを中央から側面に移動し、コイルを中心部近くに配置できるようにしました。ポチッとボタンのようなものがセンサーです

  • 縦方向と横方向の対流を生み出すIHヒーター

  • 複雑な対流で釜内をかき混ぜます

  • 横方向も中央部分もしっかりとお米が混ざっています

炊き上がったごはんは弾力と甘みが印象的。口に入れたとき、粒の感触がとても心地良く、最初から最後まで甘みを感じるごはんでした。

  • 弾力のあるごはんで、歯応えが楽しい!

  • 「おかずがなくてもごはんだけでパクパクいけそう」と話すマイナビニュース・デジタルの林編集長

人の好みに近づける炊き分けメニュー

使い勝手も向上しています。釜内の温度を検知するセンサーを中心部から側面に移動したことで、お手入れしやすくなりました。洗うパーツは内ぶたと内釜の2つだけ。圧力タイプの炊飯器は洗うパーツが多くなりがちなので、これはうれしいですね。

また、大型のバックライト液晶は、タッチパネルで直感的に操作できるほか、文字を大きく表示することも可能です。

  • 従来モデルもそうでしたが、象印の炊飯器は洗うパーツが少ないのがポイント。これは内ぶた

  • 内釜も毎回洗います

  • 標準の文字はこの大きさ

  • 液晶の文字を大きくできます

高級タイプの炊飯器では標準化されつつある炊き分けメニューですが、象印はお米の銘柄ではなく、食べる人の好みに合わせた炊き分けメニューを搭載しています。

「お米は毎年できあがりが違いますし、生産地や生産者によっても味が変わってきます。そこで、人の好みに合わせることを意識して炊き分けメニューを設計しています」(三嶋さん)

今回の新モデルでは、炊き分け範囲を拡大。本体の液晶に表示されるアンケートに答えながら、自分の好みに合わせていく操作です。

「121通りは従来のまま、炊き分けの範囲を広げることで、より早くお好みに合わせられますし、より味の違いをはっきりさせます。潜在的な好みに対して合わせていくイメージです」(三嶋さん)

ちなみに「今日はカレーだから硬めがいい」など、料理や気分に合わせたいときは「わが家炊き」メニューは不向き。そういうときは「かたさ」3段階、「粘り」5段階で炊き分けられる「炊き分けセレクト」機能がおすすめです。

  • 人の好みにあわせて炊き分け

このほか、新モデルでは新たに「冷凍ごはん」メニューを用意。炊飯時に1.3気圧をかけて、お米の中に水分を閉じ込めて炊く機能です。ほどよい粒感と粘りのあるごはんに仕上げるとのこと。

同じようにお米に水分を閉じ込める「お弁当」メニューとの違いですが、お弁当メニューは6時間後に美味しく食べられることを想定し、冷凍ごはんメニューよりも含水率を高くしています。一方で冷凍ごはんメニューは、解凍して食べるときの水分の出方などを見ながら開発しているため、目的にあわせてメニューを変えるのがよいそうです。

炊飯器市場の中で、象印は高いシェアを持つメーカーです。弾力と甘みが引き立つごはんの炊き上がりには、象印の研究と技術力が生きています。もちもちとした甘いごはんが好きな方はぜひ注目してみてください。

  • 「舞え、炎。舞え、お米」というキャッチコピーを感じさせます