2022年6月3日に発売されたモトローラのSIMフリースマートフォン「moto g52j 5G」を試用しました。防水やおサイフケータイにもしっかりと対応した日本仕様の機種で、そこそこのスペックを持ちながら価格は4万円以下。バランス良くおすすめできる機種に仕上がっています。
モトローラ初の防水/おサイフケータイ同時対応
携帯電話/通信機器メーカーとして非常に長い歴史を持つモトローラ。Android黎明期の日本市場再参入から数えても10年以上、キャリア向けおよびオープンマーケット向けで多数のスマートフォンを出してきましたが、実はIP68相当の防水/防塵性能とFeliCa(おサイフケータイ)に同時対応した機種はmoto g52j 5Gが初です。
これまではどちらかといえば日本市場向けのローカライズは控えめで、通好みのブランドという印象がありましたが、ついに本腰を入れて日本仕様で作り込み、ボリュームゾーンを取りにきた戦略的な機種と言えるでしょう。発売直前に開かれた記者説明会でも、世界全体でのモトローラのシェアや販売台数は順調に伸びており、日本市場は今後力を入れていく重点地域に含まれていると語られました。
大容量メモリ/バッテリー、120Hz液晶などスペックも魅力十分
あらためてモトローラ製スマートフォンのラインアップをおさらいしておくと、まずフォルダブルディスプレイを採用するプレミアム路線の「razr」があり、通常のスマートフォンとしては、高価格/高性能なものから順に「motorola edge」ファミリー、「moto g」ファミリー、「moto e」ファミリーがあります。
今回の日本専用モデルは、ミドルレンジのmoto gファミリーに属します。価格は39,800円で、オープンマーケット(SIMフリー)では売れ筋のクラス。基本性能に目を向けても、価格相応、あるいはそれ以上の内容となっています。
moto g52j 5Gの主な仕様を以下にまとめました。
- OS:Android 11
- SoC:Qualcomm Snapdragon 695 5G(オクタコア/2.2GHz×2+1.8GHz×6)
- メモリ(RAM):6GB
- 内部ストレージ(ROM):128GB
- 外部ストレージ:microSDXC対応(最大1TB)
- ディスプレイ:6.8インチ IPS液晶 2,460×1,080ドット(フルHD+/20:9) 120Hz対応
- アウトカメラ:約5,000万画素 F1.8(広角)+約800万画素 F2.2(超広角/深度)+約200万画素 F2.4(マクロ)
- インカメラ:約1,300万画素 F2.2
- 対応バンド:5G n3/n28/n77/n78、LTE Band 1/2/3/8/18/19/28/38/41/42、W-CDMA Band 1/2/5/8/19、GSM 850/900/1,800/1,900MHz
- SIM:nanoSIM/eSIM
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
- Bluetooth:バージョン5.1
- バッテリー:5,000mAh
- 急速充電:15W(TurboPower)
- 外部端子:USB Type-C(USB 2.0)
- 防水/防塵:IPX8/IP6X
- 生体認証:指紋認証/顔認証
- その他機能:NFC/FeliCa(おサイフケータイ)対応
- サイズ:約W171.0×W76.8×D9.1mm
- 重量:約206g
- カラー:インクブラック/パールホワイト
- 価格:39,800円
SoCは今夏のミドルレンジスマートフォンの多くに採用されている「Qualcomm Snapdragon 695 5G」。メモリは6GB、ストレージは128GBと普段使いには十分な余裕があり、5,000mAhの大容量バッテリーもうれしいところです。
価格の近い競合機種と比べると、ディスプレイが有機ELではなく液晶という点は残念に思われるかもしれません。しかし、有機ELの上位機種「motorola edge30 PRO」と並べて見比べる機会があり、液晶モデルでありながら有機ELのような鮮やかな発色傾向のため、見栄えはさほど見劣りしないと感じました。また、リフレッシュレートがミドルレンジ機としては高く、120Hzまで対応していることも長所です。
スペックの参考までに、ベンチマークアプリ「Geekbench 5」「3DMark」の計測結果を以下に掲載します。SoCやメモリなどのスペックが近いOPPO Reno7 Aのレビュー記事と見比べていただくと分かりやすいかと思いますが、Snapdragon 695 5G搭載機としては平均的なスコアです。
ユーザーインターフェースは他のモトローラ製スマートフォンと同様、メーカー独自のカスタマイズは控えめでシンプルな作りです。設定や操作のクセが少なく、他のメーカーのAndroidスマートフォンを使ってきた人でも比較的馴染みやすいでしょう。
外見上は独自要素が少なく目新しさに欠けるようでも、「moto」アプリを開くとジェスチャー操作などの便利な機能を発見できます。たとえば、暗い場所でスマートフォンを懐中電灯代わりにしたい時、縦に2回振るだけでカメラ横のLEDライトを点灯できたり、画面の中央を左右に往復するようになぞるだけで分割表示ができたりと、かゆいところに手が届く機能が揃っています。
カメラはシンプル操作で見栄え良好、夜景が弱点か
性能的にはどの機種を選んでも大きな不満はなく使える昨今、スマートフォンを選ぶ際に重視するポイントとしてカメラの写りを挙げる方は多いでしょう。実際にmoto g52j 5Gで撮影した作例を見つつ、カメラ性能をチェックしていきます。
moto g52j 5Gのアウトカメラは、約5,000万画素 F1.8の広角カメラ、約800万画素 F2.2/画角118度の超広角カメラ(深度センサー兼用)、約200万画素 F2.4のマクロカメラが並ぶ3眼構成です。
メインの広角カメラ(約5,000万画素)はクアッドピクセル技術を採用しており、通常は4画素を1画素として扱うことで仮想的に受光面積を増やし、画質やノイズ耐性を高める仕様です。
カメラアプリの機能はシンプルで、凝った撮影モードを駆使してこだわりの1枚を撮るというよりは、おまかせでシャッターを切るだけで手軽にきれいに撮れるタイプ。あえて何か操作をするとすれば、AI機能のON/OFF程度でしょう。
以下の2枚は同じカレーを撮った写真ですが、上は通常モード、下はAIによるシーン検出機能で料理モードが適用されています。
シーン検出機能の設定そのものは基本的にONにしておけば良く、料理など特定の被写体を認識した際には自動的にモードが切り替わって画面上に表示が出るため、気に入ればそのまま撮影、不要だと思ったらバツ印を押して通常モードに戻すという流れになります。
晴天の屋外や料理写真に関しては、この価格帯の機種としては十分きれいに撮れていると思います。惜しい点としては、夜景ばかりはやや性能の限界を感じました。「ナイトビジョン」という夜景モードを備えてはいますが、明るく撮れるもののハード/ソフトのどちらにもブレを抑える工夫があまり見られないため、失敗しやすい印象でした。
「日本仕様」のライバル機種と比べてもコスパ良好
最近のミドルレンジスマートフォンのトレンドとして、海外メーカー製かつ携帯キャリアを通さず販売される機種でも、防水やおサイフケータイなど、ハードウェアにも手を加えるレベルで日本市場のニーズに合わせたローカライズを行う機種が増えています。
十分なCPU/GPU性能やメモリ容量、防水/防塵、おサイフケータイ対応といった要素を踏まえ、今これを買っておけば当分困らないだろうと評価できる機種は他にもいくつかありますが、性能的に近いライバル機種は4万円台中盤のものが多いです。何かと出費がかさみがちな昨今、ツボをおさえながら数千円安く買えるmoto g52j 5Gは有力な選択肢といえます。