三菱電機は6月27日、高齢の親を持つ子ども世代(東京・大阪在住の男女600名)を対象に実施した「親のエアコンの使用状況」の調査結果を発表した。あわせて、なかなかエアコンをつけない高齢の親に伝えたい3つのポイントと、エアコンをつけてもらうための具体的なコミュニケーション方法を紹介した。
調査によると、夏場、積極的にエアコンを使用していない高齢者は13%いた。そんな高齢の親に「使うように促したことがある」という回答は74.4%、「親が夏にエアコンをつけたがらず、悩んでいる」との回答は63.8%に上った。
高齢者がエアコンを使いたがらない理由は、「節電、 電気代がもったいないから」(33.3%)が最多であったが、「エアコンを使用するほど暑くないから」(29.5%)、「エアコンは寒いから」(28.2%)など、そもそも「暑いと感じていない」と思われることも判明した。
また、「エアコンは体に悪いから」(26.9%)などエアコンを使うことにネガティブなイメージを持っていたり、「昔はエアコンを使っていなかったから」(9%)と過去のイメージをそのまま持っている回答も見られたという。一方で、「ご両親が、夏場エアコンをつけず自宅で過ごしているときに、具合が悪くなったことはある」と回答したのは10.8%と、10人に1人がエアコンをつけていなかったために体調を崩していたことがわかった。
高齢の親に伝えたい「3つの意識改革」
看護師・主任ケアマネジャーの寺岡純子氏(カサージュ代表)によると、高齢の親がエアコンをつけたがらない理由は、老化で皮膚の感覚や内臓の機能が低下して暑さを感じづらくなっていることが原因。暑い中でも平然と過ごしている高齢者も多いとのこと。
高齢者のエアコンの利用を促すには、「エアコンをつけることが重要である」と正しく理解してもらうことが大切。そのためには家族など周囲のサポートも重要になる。
高齢者にエアコンをつけてもらうためには、以下の3点の意識改革を行い、理解してもらうことが必要だという。
(1)「環境の変化」への理解
今は昔よりも気温が上がっていると認識してもらう。気象庁によると、東京では年間の平均気温が100年あたり3.3度上がり、最低気温は4.5度、最高気温は1.9度上がっている。
(2)「感覚の衰え」への理解
高齢者自身に、暑さを感じにくくなっていることを理解してもらう。高齢者は暑いと感じたときに汗をかく体温調節機能が低下し、体温が上昇してもうまく体が対応できず、体温を下げることが難しくなる場合が多い。
(3)「電気代」への理解
「つけっぱなしにしていると電気代がもったいない」と考えている高齢者もいるため、エアコンはつけ始めに一番電力を消費することを理解してもらう。
また、「入り切り」を繰り返すような場合も、すぐに室温が上がり熱中症のリスクが増加するため注意が必要。三菱電機は、エアコンを「入り切り」と「つけっぱなし」にした場合で、消費電力と室温の変化について実験した結果、電気代に換算すると両者の差は0.81円とほぼ変わらなかった。
途中で30分間運転を停止した「入り切り」では、運転再開時に一気に消費電力が上昇し、最終的に「つけっぱなし」と電気代の変化はあまりなかった。さらに「入り切り」では、エアコンを切ってから約30分で室温が3°C以上も上昇し、熱中症のリスクが増加する結果となった。
高齢者にエアコン利用を促す3つのコミュニケーション法
最後に、寺岡氏は高齢者にエアコンをつけてもらうための具体的な「3つのコミュニケーション方法」を紹介した。
(1)デジタル温度計と注意書きを目につくところに設置し、家族で室温を気にする習慣をつける
冷蔵庫やテレビなどよく目にする場所にデジタル温度計を設置し。「室温28度以下」、「エアコンはつけたままにする」といった注意事項を書いて目につくところに貼っておくことで、高齢者が視覚的に理解しやすくなる。
(2)「エアコンはつけ始めに電気代がかかるからつけっぱなしでいいんだよ」と周囲の人から何度も伝える
高齢者の意識を変えることは簡単なことではなく、周囲の人たちが繰り返し伝えていくことが大切。言ってもすぐに変わらないからといって、相手を責めると意固地になって逆効果になることがあるという。
上記の実験結果を見せたり、かかりつけの医師からの「つけっぱなしにすることが大事」というメッセージを文字にして枕元に貼り付けたりするなど、視覚で訴えながら「入り切りを繰り返すよりもつけっぱなしがよい」ことを、さまざまな人から繰り返し伝えてもらう。
また、(1)でデジタル温度計を設置したことにより、エアコンを消すと室温が上がっていく様子が視覚的にわかるため、そうした視覚情報を提示しつつ、繰り返し伝えることを推奨している。
(3)「エアコンをつけないとダメ」ではなく「いつまでも元気でいてほしいからエアコンをつけてほしい」と伝える
主治医やケアマネジャーさんやヘルパーさん、お孫さんの言うことは聞く傾向にあるという。「エアコンをつけないとダメ」ではなく、「いつまでも元気でいてほしいから、エアコンをつけてほしい」といったポジティブなメッセージを伝えることを勧めている。