一時は希望小売価格の2〜3倍に高騰していたビデオカード価格が落ち着き、3DCenter.orgによると、欧州市場では実売価格がメーカー希望小売価格(MSRP)を下回る製品が増えている。
3DCenter.orgはドイツとオーストリアのビデオカードの小売り価格を分析しており、欧州全体の価格・流通動向を知るのに有効な分析の1つと見なされている。6月19日のアップデートによると、NVIDIAのGeForce RTX 30シリーズの最低実売価格は希望小売価格の+2%(前回5月29日から4ポイントダウン)。そしてAMDのRadeon RX 6000シリーズが希望小売価格の-8%(同10ポイントダウン)と、希望小売価格を大きく下回った。
Radeonに比べるとGeForceの下落が小さいが、ハイエンド製品に絞り込むと、「RTX 3090 Ti」の最低実売価格は希望小売価格の-16%、「RTX 3080 Ti」は-13%である。ミドルクラスやエントリー帯の製品が今も希望小売価格より高く、「RTX 3060」が+11%、「RTX 3050」が+13%となっている。Radeonは、「RX 6900 XT」が-16%、「RX 6500 XT」が-23%。「RX 6800 XT」が+6%というようにばらつきはあるものの、ほとんどの製品が希望小売価格を下回っている。
ビデオカードは、暗号資産のマイニング(採掘)需要、新型コロナ禍における半導体不足と巣ごもり需要で品薄になり、その影響で実売価格が高騰した。2021年5月のピーク時は、GeForce RTX 30シリーズの実売価格が+318%、Radeon RX 6000シリーズが+216%だった(3DCenter.org調査)。その後、市場の混乱が収まってから+150〜180%前後で推移する状態が続き、今年に入って下落が続いている。
上のグラフにあるように、NVIDIAやAMDによるサプライチェーン改善の成果が昨年後半から表れ始め、そして昨年11月に暗号通貨の価格が下落に転じた。そうした供給の回復と、暗号通貨のマイニング需要の減速が重なって、ビデオカード価格が正常化に向かったと見られている。
米国市場に目を向けると、Tom's Hardwareのビデオカード小売り価格調査でも同様の傾向が報告されており、米国でも店頭実売価格が希望小売価格を下回る製品が増えている。日本の場合、急速な円安の進行で価格が下がりにくくなっているものの、入手性の向上から市場正常化が進展している。