楽天グループは4月5日、フリマアプリ「楽天ラクマ」のリブランディングを実施した。ロゴやアプリアイコンなどのデザインを刷新するとともに、リユース事業者との連携による「ラクマ公式ショップ」の本格提供を開始する。

  • 楽天が「ラクマ」のリブランディング/新サービスを発表

    楽天が「ラクマ」のリブランディング/新サービスを発表

安心感を求める購入者のための「ラクマ公式ショップ」

ラクマはこれまで、ユーザー同士が使わなくなったものを譲り合うCtoCのサービスとして展開する一方、安心感を求める購入者に寄り添う施策として、「ラクマ公式中古スマホショップ」「ラクマ公式ブランドショップ」など専門スタッフによる検品を経る売り方も試験的に導入してきた。

今回スタートした「ラクマ公式ショップ」は、実績のあるリユース事業者がラクマに出店して自社商品を販売できる仕組み。4月5日の開始時点で130社以上が参加する。アパレル・ブランド商品を中心としており、以前からの試験販売の流れをくむものだ。

  • 楽天ラクマ「ラクマ公式ショップ」

    楽天ラクマ「ラクマ公式ショップ」

ラクマ公式ショップは、リユース/海外輸入/ブランド公式という3種類に区分される。古着や中古ブランド品を扱うリユース事業者のほか、海外からの並行輸入品を扱う事業者も参加する。そして、有名ブランド自身がアウトレット品などを直接販売するブランド公式ショップも年内半ばに開始する。

また、二次流通という文脈からは外れるが、ECサイトのノウハウを持っていない事業者でも扱いやすいフリマアプリの特性を活かし、「産直・こだわり食品」ショップも開始する。農産物や水産物の生産者や加工業者が、産地直送の食材などを消費者に直接届けられる。

  • ラクマ公式ショップ リユース

    ラクマ公式ショップ リユース

  • ラクマ公式ショップ 海外輸入

    ラクマ公式ショップ 海外輸入

  • ラクマ公式ショップ ブランド公式

    ラクマ公式ショップ ブランド公式

  • 産地直送・こだわり食品

    産地直送・こだわり食品

BtoC/CtoCの両方をカバーする二次流通プラットフォームに

個人間の売買を中心とするフリマアプリにおいて、業者による出品を加速させるというのは意外な戦略にも思えるが、これは成長目標と市場分析に基づく合理的な展開だ。

ラクマは、2012年に日本初のフリマアプリとして登場した「フリル」が前身。のちに、楽天が2014年から自社展開していた旧ラクマと買収されたフリルを統合し、楽天経済圏の一部としての強力な会員基盤を持つフリマアプリに発展して現在に至る。

  • ラクマの歴史

    ラクマの歴史

ラクマ事業に長らく携わってきた楽天の松村氏によれば、楽天グループ全体のEC事業(楽天市場や楽天トラベル、楽天西友ネットスーパーなどの合計)は5兆円規模に到達。10兆円規模への倍増を中長期の目標として掲げている。

リユース業界全体の市場規模は約2.5兆円。コロナ禍で家にいる時間が増えたことでため込んだ物を整理して売りに出す人が増えたり、SDGsなど環境意識が高まる社会であらためてリユースが意識されたりと、追い風の吹く業界である。フリマアプリの勢いが盛んではあるが、まだ市場規模の半分はBtoCが占めているという。

楽天のEC事業の具体的な売上比率や数値は公表されていないが、全体目標と同じくラクマの目標も倍増だと仮定すれば、リユース市場の残り半分を攻める、つまりCtoCだけでなくBtoCも取りに行くという考えは自然な流れだろう。

  • リユース業界におけるBtoC/CtoCの市場規模はほぼ同じ

    リユース業界におけるBtoC/CtoCの市場規模はほぼ同じ

中古商品を検討しつつ個人売買に不安を感じている購入希望者にとっては、専門業者による真贋判定やメンテナンスなど、プロの目と手を経た安心感のある商品を同じプラットフォーム上で比較して選べるようになる。

また、現在のラクマの前身となったアプリのひとつ、フリルはファッションに特化したフリマアプリでもあった。背景的に古着やファッションに興味があるユーザー層が厚く、そういった点でもまずアパレルやブランド品から公式ショップを展開していくという方針とは相性が良い。

  • BtoC/CtoCの両方をカバーする二次流通プラットフォームに

    BtoC/CtoCの両方をカバーする二次流通プラットフォームに

個人の出品者はライバル出現で厳しくならないのか?

BtoCとCtoCどちらの買い方もできるプラットフォームになることは、規模拡大を目指す楽天、そしてより良い物を選びたい購入者にとってのメリットは理解しやすい。

しかし、これまでラクマを支えてきた個人の出品者にとっては、強力なライバルに購入者を取られてしまうことにならないだろうか? その点についても松村氏は、カニバリゼーションが起きるとは考えていないとフォローした。

  • 楽天グループ 上級執行役員 新サービス事業 ヴァイスプレジデント 松村亮氏

    楽天グループ 上級執行役員 新サービス事業 ヴァイスプレジデント 松村亮氏

個人対企業の奪い合いが起きないとされる理由は、大きく分けて2つ。まず奪い合いのリスクよりも規模拡大のメリットが上回ること、そして出品事業者側も価格競争で個人と張り合おうとは考えていないことだ。

公式ショップの登場によって商品数が増えればラクマというプラットフォーム自体の魅力アップやユーザー増加に繋がるほか、そもそもリユース事業者の商品しか買わないつもりでやってきたユーザーも個人出品の商品が目に留まって比較検討の上で買ってくれるという可能性はある。

2点目については、新サービス発表会に登壇したいくつかのリユース事業者の代表者に取り組み方を聞いた限りの印象とはなるが、個人と公式ショップが同じものを同じ値段で(あるいは公式ショップのほうが安く)売るという事態は考えにくい。

コスト構造の違いもあり、個人出品と企業出品の商品が同じプラットフォームに並べば、個人のほうが安くなるのは自然なことだ。その点はリユース事業者もよく理解しており、個人出品に合わせた無理な値下げなどはせず、審査を経た企業相手ならではの取引の安心感、専門業者ならではの品質に対する安心感を前面に出す。

安さ重視の人はこれまで通り個人売買をし、フリマアプリに不安のある初心者や奮発して高価な買い物をするときなどは公式ショップを選ぶといったすみ分けに落ち着くことが予想できる。

  • ブランディアの「ラクマ公式ショップ」出品例

    ブランディアの「ラクマ公式ショップ」出品例

上の写真は、ラクマ公式ショップのひとつ「ブランディア」が出品する商品の例だ。いくらフリマアプリを使い慣れた人でも、このクラスのハイブランド商品を相手の見えない個人売買で買うのは「偽物だったらどうしよう」「届かなかったらどうしよう」という不安がよぎるのではないだろうか。

ラクマ公式ショップで販売される商品のすべてがこのような高価な商品というわけではないが、とにかく安く買えれば良い物、安心できるところで買いたい物という線引きは多くの人の中にあると思われ、一般出品とラクマ公式ショップの使い分けは十分にあり得る。

リユース事業者にとっての「ラクマ公式ショップ」のメリット

新サービス発表会には楽天の担当者のほか、実際に試験導入時から出店しているリユース事業者から、ユーズド・セレクトショップ「RAGTAG」を展開するティンパンアレイ、オンライン宅配買取「ブランディア」を展開するデファクトスタンダード、ヴィンテージ・ブランドショップ「ALLU」を展開するバリュエンスジャパンの3社の代表者が出席した。

それぞれ自社ECや店舗を運営し、楽天市場や他社ECサイトにも出店している彼らにとって、新たにラクマ公式ショップという販売チャネルを増やすメリットは何だろうか。

試験販売で感じられた最大のメリットは、自社ECや他のEC出品とは違う層にアプローチできたことだという。3社とも主な顧客層は30~50代だというが、ラクマは10~30代の利用者が約6割を占めており、これまでアプローチできていなかった若年層との接点を持てる。

  • 左から、ティンパンアレイ(RAGTAG)桜庭氏、デファクトスタンダード(ブランディア)植松氏、楽天グループ 松村氏、バリュエンスジャパン(ALLU)藤本

    左から、ティンパンアレイ(RAGTAG)桜庭氏、デファクトスタンダード(ブランディア)植松氏、楽天グループ 松村氏、バリュエンスジャパン(ALLU)藤本氏

また、楽天市場でモール型ECサイトの運営ノウハウを豊富に持っている楽天が運営するサービスだけあって、出品ツールなどの受け入れ態勢が整っており、さほど大きな労力をかけずに新たな販売チャネルを増やせたことも評価した。

ここ数年のリユース業界の変化や消費者の意識の変化について、RAGTAGの桜庭氏は「(以前は)リユースのファッションというとお洋服がすごく好きな方で買い逃したアイテムを探されている方などがメインだったが、ここ数年は一般化してきた」、ALLUの藤本氏は「中古というとネガティブな印象を持たれがちだったが、ラクマのようなCtoCアプリの普及や(SDGsなどの流れで)環境に貢献できることが訴求できるようになったおかげで、リユースへの抵抗感が少しずつ無くなってきていると感じる」とコメント。そのようなリユースを好む人々が増えている中心地ともいえる、フリマアプリに販売チャネルを持つ意義は大きそうだ。