アップルが、第5世代のiPad Airを3月18日に発売します。上位のiPad Proと同じ高性能なApple M1チップを載せて、Wi-Fiモデルは74,800円から購入できる良質なスタンダードモデルの実力に迫ります。
Proと“無印”の中間、薄さと軽さが魅力の「Air」
iPad Airは、iPadファミリーの中で最も性能の良いフラグシップのiPad Proと、最新モデルは第9世代になるエントリーモデルの“無印”iPadの中間に位置付けられる、スリムで軽いiPadです。現行のiPadファミリーには、可搬性の高い8.3インチのコンパクトなiPad miniもあります。
iPad Airは、2020年秋に登場した第4世代機から、フロントパネルにホームボタンを持たないオールスクリーンデザインの10.9インチLiquid Retinaディスプレイを採用しました。本体側面のトップボタンにTouch IDによる指紋認証センサーを載せた最初のiPadです。当時の最新鋭だったA14 Bionicチップを搭載して、全5色の鮮やかなカラバリ展開を図ったこともあり、多くのユーザーに選ばれるヒットモデルになりました。
10万円以下で買える“Pro並み”に高性能なiPad Air
第5世代のiPad Airも、オールスクリーンデザインの10.9インチLiquid Retinaディスプレイ、Touch ID内蔵のトップボタンを受け継いでいます。本体の質量が2~3g前後増えたこと以外、外形寸法は変わらず。カラーバリエーションはグリーンがパープル、シルバーがスターライトに入れ替わり、ブルーの色彩は少し濃くなりました。
新旧世代の価格差はWi-Fiモデルが5,720円、Wi-Fi+Cellularモデルが5,020円ほど第5世代機が値上がりしましたが、それぞれストレージサイズが少ない方の64GBモデルを選べば、依然としてアンダー10万円で購入できます。
iPad Proと価格を比べてみましょう。ストレージサイズが同じ256GBのモデル同士では、Wi-FiモデルとWi-Fi+Cellularモデルがともに49,000円ほどProの方が高価です。いろいろな機能差を考えれば「Proの誇り」ともいえる価格差なのでしょう。iPad Airは、これから本格的にiPadをノートPCの代わりにリモートワークに活用したり、Apple Pencilによるイラスト制作など、さまざまな用途に使い倒せるハイスペックなオールラウンダーです。性能はiPad Proに肉薄しているうえ、コストパフォーマンス的にも優秀な第5世代のiPad Airが、その真価を発揮する場面を以下に紹介します。
Wi-Fi+Cellularモデルはリモートワークに最高の相棒
iPad Airは、アップル純正のiPad用Magic Keyboard、Smart Folio Keyboardに対応しています。キーボードのタイピング感が心地よく、Bluetoothのペアリングや別途充電が要らないので、使い勝手がとても簡単。iPadのカバーも兼ねるマルチなアクセサリーです。価格は34,980円(税込)。iPad Airを入手後、余裕があればぜひ買い足すべきだと筆者は思います。
モバイル通信ができるWi-Fi+Cellularモデルであれば、iPad Airがリモートワークにも最高の実力を発揮します。第5世代機はSub-6周波数帯の5Gネットワーク通信とWi-Fi 6にも対応しているので、FaceTimeなどビデオ通話アプリの動作が安定します。動画によるセミナーの視聴、学校の授業のストリーミング配信などが軽快に視聴できます。Wi-Fi単体モデルとの価格差は18,000円ほどありますが、Wi-Fi+Cellularモデルは常時ネットワーク接続ができるノートPCのような使い方もできるので、思い切って自分に投資したいところです。
ビデオ通話に関連するところでは、iPad Air以外のiPadファミリーは先に「センターフレーム」の機能に対応しました。FaceTimeなどのビデオ通話アプリによる通話時に、フロント側の超広角カメラが被写体として捉えた人物を、常時画面のセンターに配置されるよう機械学習処理により自動調整する機能です。筆者は、部屋が散らかっている時にはついこの機能をオフにしてしまいますが、例えばこちら側が複数人数で参加するビデオ通話の時などにあると便利です。
Apple Pencilを使わない手はない
iPadのユーザーならば、Apple Pencilを使わない道はありません。イラストを描いたり、手書きでメモを取る用事がなくても、iPadOS 14から搭載され、iPadOS 15から日本語入力にも対応した「スクリブル」の機能を試してみましょう。Apple Pencilを使って、iPadのあらゆるテキストボックスに書いた文字が自動で素速くデジタルタイピングに変換され、Web検索などが素速くできるようになります。
Apple Pencilによる手書き入力の「書き味」については、iPad AirとiPad Pro、および無印iPadとの間でだいぶ違いがあると筆者は思います。そもそも無印iPadが対応しているのは、本体がやや重くて大きい初代のApple Pencilです。iPad ProとiPad Airは液晶ディスプレイからカバーガラスまでのギャップを最小化するフルラミネーションディスプレイを搭載しているので、Apple Pencilのペン先とiPadの画面に記録される手書きのデータとの間がズレない、自然な書き味が得られます。
iPad Proにはさらに、画面表示の書き換え速度を最大2倍に高速化する120Hz駆動のProMotionテクノロジーを搭載しています。iPadOS標準の「メモ」アプリなどで書き味を比べると、iPad Proの方がiPad Airよりも筆運びがより軽く速やかに感じられると思います。ただ、人によってはiPad Airのゆったりとした筆運びの方がより安定感があって好ましく感じるかもしれません。iPadを本格的にイラスト制作などに使う予定がある方は、ぜひ一度店頭に足を運んで両方のiPadを比べてみることをおすすめします。できればいろんなアプリでペンの種類を変えたり、細かな線やベタ塗りなど描き方を試すと、それぞれのiPadの特徴が分かると思います。
ゲームや「テキスト認識表示」にM1チップの高い処理性能が活きる
第5世代のiPad Airには、第5世代の12.9インチiPad Pro、第3世代の11インチiPad Proと同じ「Apple M1」チップが搭載されています。8コア構成のCPU/GPU、16コアのNeural Engineによる高速で安定したグラフィックス描画、ARコンテンツのスムーズな操作感にM1チップの真価が現れます。
iPadOS 15にも、カメラを向けた被写体の中のテキストをコピーしてそのまま検索・翻訳をしたり、住所として認識された文字をタップすると「マップ」アプリによる地図検索ができる「テキスト認識表示」機能があります。設定アプリを開き、一般>言語と地域を選択、「テキスト認識表示」をオンにします。M1チップによる機械学習処理の賢さがよく分かる機能です。
Apple Arcadeにそろうモバイルゲームは、なるべく画面の大きなデバイスで遊びたいものです。iPad Airはゆったりとした画面サイズでありながら、デバイスを長い時間手に持ちながらプレイできるギリギリのサイズ感だと感じました。筆者が最近ハマった「ファンタジアン」のようなRPGゲームは、Magic KeyboardにiPad Airを載せて、iPadの2スピーカーオーディオで音を出しながらプレイすると没入感がグンと高まりました。
エンタメ性能も充実。いま一番お買い得なiPadかもしれない
iPad Airが搭載する横向きの2スピーカーオーディオシステムは、空間オーディオ再生にも対応します。Apple TV+のドラマや映画、Apple Musicの人気楽曲に続々と増える空間オーディオ対応のコンテンツを、自宅などで思う存分に音を出して楽しむ贅沢をぜひ味わってみてください。Magic Keyboardがあれば、画面の角度調整も自在にできて便利です。
アップルのAirPodsシリーズや、Beats by Dr.Dreのワイヤレスイヤホン「Beats Fit Pro」があれば、空間オーディオに対応するコンテンツの再生中に顔の向きを変えても、デバイスで再生するコンテンツの音が元のあるべき位置に定位して聞こえる「ダイナミックヘッドトラッキング」が利用できます。リッチな音の広がりと臨場感はひと味違います。
デュアルレンズカメラとLiDARスキャナ、よりパワフルな4スピーカーオーディオシステムに、最大2TBまでの大容量ストレージの選択肢など、iPad Proにはフラグシップモデルならではの魅力が詰まっています。ただ、これらiPad Proのアドバンテージを差し引いても、第5世代のiPad Airはとてもバランス良くハイスペックな機能を揃えた「いま一番お買い得なiPad」だと思います。