アドビは2月8日、サブスクリプション型クラウドサービス「Adobe Creative Cloud」を構成するアプリのうち、ビデオ製品を中心に最新アップデートをリリースした。既存ユーザーは無償で最新版にバージョンアップできる。
ここでは、なかでも大きな機能追加があった「Adobe Premiere Pro」を中心にアップデート内容を紹介していこう。
ユーザー層の広がりに合わせ「Adobe Premiere Pro」が機能強化
もともとはハイエンドユーザーが業務で使用することの多かったAdobe Premiere Proだが、近年は企業の動画内製化や、YouTubeのようなソーシャルメディアに投稿する動画の作成などにも使用されるようになり、ユーザー層が急速に広がってきている。
そうしたなか、多くのユーザーから「より効率的にクオリティの高いものを作りたい」という要望が寄せられるようになったそうだ。今回のアップデートでも、効率化や高速化に主眼を置いた新機能の追加や機能強化が数多く行われている。
3倍高速化した音声のテキスト化
そのひとつが、「音声のテキスト化」機能。いわゆる自動文字起こし機能で、2021年7月に正式リリースされた。今回のアップデートではその機能強化が図られ、オフラインに対応してより高速に処理できるようになっている。
従来の音声のテキスト化は、いったん音声データをクラウドにアップロードして文字起こしをした上でPremiere Proに返すという手順を踏んでいた。そのため文字起こしを行う場合、インターネットに接続している必要があった。
新バージョンではあらかじめ言語パックをダウンロードしておけば、オフラインでも文字起こしが可能。言語パックは1言語につきおよそ650MBで、必要なものだけを選択してダウンロードできる。サポートされる言語は英語や日本語、中国語(簡体字/繁体字)、スペイン語、ドイツ語、フランス語など全部で13言語。
オフライン対応によって文字起こしの精度や速度も改善されており、Intel Core i9やApple M1などのプロセッサーは3倍、そのほかの現行プロセッサーでは2倍程度高速化しているという。ビデオのキャプション作成には非常に便利なので、ユーザーの方はぜひ試してみてほしい。
Adobe Senseiを活用した「リミックス」正式版
2021年10月に開催されたクリエイター向けの年次イベント「Adobe MAX 2021」で発表され、話題を呼んだ「リミックス」機能。先行してベータ版がリリースされていたが、今回のアップデートでベータが取れ、晴れて正式版となった。
リミックスは、AIと機械学習を組み合わせたアドビ独自のテクノロジー「Adobe Sensei」を活用した機能で、映像コンテンツに合わせて音楽クリップの尺を自動で調節することができるというもの。Adobe Senseiが曲を分析して指定した時間に収まるようにアレンジを生成してくれるため、まるで最初から映像に合わせて作曲されたかのように自然な仕上がりになるのが大きな特徴。
より自分のイメージに近いものにしたいときは、エッセンシャルサウンドパネルのスライダーを使ってカスタマイズし、さまざまなアレンジを試すこともできる。
GPU高速化に対応した機能も
このほか、ハードウェアエンコード機能もアップデートされ、IntelやNVIDIA製GPUを搭載したWindowsマシン上のフッテージのHEVC(10bit、4:2:0)の書き出しが最大で10倍高速化した。また、リニアワイプやブロックディゾルブなどもGPU高速化に対応している。
サポート機種も拡充され、今回新たにキヤノンの8K・RAW撮影に対応したデジタルシネマカメラ「EOS R5 C」(3月上旬発売予定)への対応が行われた。
ちなみにアドビではPremiere Proのユーザー層の広がりに伴い、事例紹介やウェビナーの開催などの施策を行ってユーザーをサポートしている。
2月18日 20時からは、クラウドワークスとの共同セミナー「今、動画制作が熱い!2022年こそ動画制作で副業を。」が開催され、動画制作での副業の現状やトレンド、具体的な事例などが紹介される予定だ。興味のある方は、こちらもチェックしてみてほしい。