ワコムは11月16日~17日の2日間、年次イベント「コネクテッド・インク 2021」を開催。東京・新宿の特設会場では多様なジャンルの企業がブースを出展していました。
中でも目を引いたのは、文具メーカーのパイロットが展示していた開発中のデジタルペン。ロングセラーの筆記用具「Dr. Grip(ドクターグリップ)」がベースになった「Dr. Grip Digital」です。
手書きの疲れを軽減するドクターグリップが“デジタル対応”
近年、三菱鉛筆の「Hi-uni DIGITAL for Wacom」やステッドラーの「ノリスデジタル」など、ワコムの液晶ペンタブレット(液タブ)で使える文具メーカーコラボのデジタルペンが続々と登場しています。
前述の2製品は鉛筆を再現した「デジタル鉛筆」でしたが、パイロットが提案するのはシャープペンシル(ボールペン)型のペン。ドクターグリップの特徴である太めのボディと弾力のあるグリップで、しっかりホールドできます。
今年30周年を迎えるドクターグリップ。まだパソコンが普及していなかった開発当時、事務作業による手書きの疲れを軽減するため、医師の協力のもと生み出されたことがその名の由来となっています。
文具メーカー発のデジタルペンとしては初の太軸ということもあり、ペンタブや液タブをハードに使うクリエイターはもちろん、業務や授業のデジタル化が進むオフィスワーカーや学生も含め、手書き動作の疲れに悩む人すべてに優しいデジタルペンになりそうです。
筆者にとって、ドクターグリップは学生時代の相棒的な存在。ノートに書き込んでいた懐かしい握り心地のペンで、液晶ペンタブレットに書き込めるのは何とも不思議な体験でした。
Dr. Grip Digitalは本家ドクターグリップと同様、ノックでペン先を出し入れ可能!スタッフの方は「本当は(デジタルペンには)必要ない機能なんですが」とほほ笑んでいましたが、細かなこだわりが文具好きにはたまりません。機材を持ち歩く人の場合、運ぶときにペン先をしまえる機能は重宝しそうです。
ペン先の種類と「音」が書き味に影響?
パイロットは展示スペースに加え、体験ブースの「書き味研究所」を設置。ペン先や描画に伴う音の違いによって、ユーザーの体験がどう変わるのか、白衣を着た研究員さんがヒアリングを行っていました。
ペン先は4種類。一般的なペン先の「ハード」、柔らかい「ソフト」、筆のようなしなりのある「ブラッシュ」、摩擦の大きい「フェルト」がありました。ハードやソフト、フェルトは、ワコム純正のペン先の選択肢としてはメジャーな存在です。
個人的に、筆ペンを再現したブラッシュの感触が目新しく、何度も試し書きしてしまいました。筆ペンといっても穂の長いタイプではなく、宛名書きなどに使う細字タイプに近い書き味。気持ちよく文字を書けました。
液晶ペンタブレット画面の下半分にはペーパーライクフィルム(ケント紙タイプ)が貼ってあり、合計8パターンの書き味を体験できました。もともとペン先の摩擦が大きいソフトやフェルトは、フィルムと合わせて使うと引っかかりが強すぎるように感じられました。
ペン先の感触だけでなく、書くときの「音」も再現して、書き味に影響するかどうかを実験。鉛筆、ボールペン、万年筆の実際の筆記音を元にした音源を、描画のストロークにあわせて再生する機能を使うことができました。
会場のメインステージで講演が行われていたこともあり、紙とペンで字を書くときのようなさりげない音量とはいきませんでしたが、自分の筆跡に音が付くことで、通常の状態よりも軽やかに感じたのは不思議でした。環境音の影響が少ない個室で、ヘッドホンなどを使って聴いたらまた違った体験になりそうです。
今のところ発売時期は未定で、「鋭意開発中」とのこと。文具メーカーコラボのデジタルペンの新たな選択肢として、今から完成が楽しみです。