サードウェーブは、2021年11月18日、一般向けのPC「THIRDWAVE」ブランドとクリエイター向けのPC「raytrek」ブランド両方でほぼ共通の設計を使用する新製品「THIRDWAVE F-14TG」と「raytrek X4-T」を発売しました。発表前に行われた説明会の様子をお伝えします。
共通設計にすることで「コスパ」以外のポイントを生み出すゆとりが生まれた
説明会ではまず、製品・マーケティング統括本部 本部長の佐藤和仁氏が今回の施策の背景を紹介しました。
BTOメーカーのパソコンに求められるものは「コスパ」。とはいえ、パソコンのメインパーツの価格はほぼ同じですから、コスパを高めるには、設計・開発や流通コストを抑える必要があるでしょう。佐藤氏は、設計・開発のコストダウンを追求するばかりに「デザインや見栄え、そして『所有する愉しさ』が取り残されがちだった」と言います。
今回は、2つのブランドでほぼ同じ設計を採用。開発コストを抑えたうえに、快適な操作感と所有する愉しみを提供することを目指しました。
なお、「THIRDWAVE F-14TG」の価格は、ストレージ256GBモデルが99,980円、512GBモデルが104,980円。「raytrek X4-T」の価格は109,980円です。
引き続き、THIRDWAVEとreytrekブランドの責任者が、それぞれの製品の特長を説明。THIRDWAVEブランドのF-14TGは、ストレージ容量(256GB/512GB)による2モデル構成で、カラーは標準のラピスブルーと限定色のSAKURAをそろえます。
raytrekブランドのX4-Tは、イラスト制作などのデザイン用途を考慮して、sRGB 99%対応の液晶と上位CPUであるCore i7-1165G7を採用(F-14TGはCore i5-1135G7)します。ストレージは512GBのみ。カラーはブラックとローズゴールドを用意します。
両製品に共通なのは、天板が3方向のアルミヘアライン加工「トリニティ・ストライプ」を採用していること、等ピッチ19.6mmのJIS配列準拠キーボード、16GBのメインメモリ、65W USB PDの電源など。付属するACアダプタは携帯性を考えたケーブル分離タイプです。
USB PD・Thunderbolt 4・Displayport Alternate Mode出力対応のType-C×2基に加えて、USB 3.2 Gen1・Gen2とUSB 2.0のType-Aが3基の計5ポートを搭載。それ以外にHDMI 1.4a、ヘッドセット端子、microSDカードリーダーと、インタフェース類は本体サイズの割に豊富です。
両人の話を伺っていると、それぞれの譲れないポイントが見えてきました。一般的なノートPCとして考えた場合は、見た目のオシャレ感と使いやすいキーボード(電源ボタンをキーボードエリアから外すことを含む)でしょう。クリエイター向けは、色域の広いディスプレイが必須。また可能な限り上位のCPUとストレージ(外部も含む)も重要です。そのためにThunderbolt 4は必然でしょう。今回の製品は、液晶とCPU以外が共通で、両者の要求を両立させていることがわかります。
価格を抑えることを考えると、メインメモリを減らすのが有効策のひとつですが、開発中に「Officeを使うなら16GBは欲しい」という助言があって今回のスペックに反映したとのこと。本製品はメインメモリがマザーボードに直接取り付けられているので、メモリ増設はできません。その意味では16GBというスペックは非常に良いと思います。
製品開発のコンセプトは「剛匠美友」
最後に、開発担当者である製品・マーケティング統括本部 品質プロダクト本部 開発部 営業開発課 課長の永田博志氏が、開発コンセプトとして、長期使用を想定した過酷な試験に合格された製品である「剛」、キーボードの操作性を極限まで追求した機構設計の「匠」、多種の加工技術を取り入れた洗練された外観品質の「美」、製品設計/開発から製造にいたるまで、海外サプライヤーとの協力および管理体制の構築による高品質製品を実現した「友」の4つを紹介します。
所有するよろこびを追求するには「美」が重要ですが、ノートパソコンとしての基本機能の底上げには「剛」と「匠」も欠かせません。この点をしっかり押さえているのは好印象です。また、コロナ禍で出張もままならない状況でのパソコン開発は、メーカー各社が苦労しているところ。その中できちんと製品を発表できているのはすばらしいと感じました。
サードウェーブは、今回14インチ製品でプラットフォームの共通化を図りましたが、この方向は今後も続くようです。この方針は、CPU・GPUともに高性能が要求されるハイパフォーマンス製品の方向性として、ゲーミング製品とビデオ編集主体のクリエイター製品は親和性が高いのではないかと感じました。
今回の発表会は、製品発表会としてだけでなく、記者の目から見た改善ポイントを聞く場でもありました。そこで新製品ながら気になった点を、いくつか記述しておきます。
まずは本体左サイド。抜き差し頻度の多いコネクタは手前に配置してほしいところ。USB-Cポートは電源端子になるので、せめて片方は一番奥にしてほしかったです。今後のUSB-Cポートの利用が増えることを考えると、2ポートが左右に配置されているのがベスト。ちなみに一番手前側に見えるのは「Webカメラとマイクを強制無効にするスイッチ」です。
続いて本体右サイド。右側でマウスを使う人が多いので、ヘッドセット端子は左にしてほしいのですが、そうすると左側が混雑するので致しかたなしといったところ(L字アダプタを使えば回避できます)。クリエイター用途を考えるとフルサイズのSDカードスロットも欲しいのですが、スペースを考えるとこれも厳しいかもしれません。ちなみにチルトアップ式液晶ではないのですが、ほぼ180度開けられます。
ヘアライン加工はパネルを専用の加工機に入れて行いますが、マークは一方向にしか付きません。つまり、このトリニティ・ストライプを実現するために3回のヘアライン工程をしており、コストもかかります。高級製品だとパネルをCNC加工で「削り出し」ていますが、今回の製品はコスト的に優れるプレス加工なものの、1回のプレスでは実現できない曲げ加工をしていました。さらに切削加工でのダイヤモンドエッジも施されてていて、限られた範囲で見栄えを気にした製品です。写真は試作サンプルなのでカラーが製品版とは異なります。ちなみにホワイトカラーがないのは、今回のヘアライン加工が映えないためとのこと。
キーボードは、かなりたわみ感の少ないものでした。これはキーボードの底に補強の鉄板を敷き、ビスもかなり多めに使っているため。一方、標準配置と等ピッチにこだわった結果、スペースバーが短めなのは好き嫌いが分かれそうです。極端な意見を言えば、JISかな入力をしている人は少ないので、カナ印字を削ったほうがデザイン的に有利ですが、これも賛否が分かれるところでしょう。