ランサーズは11月12日、同社の新たなビジョンとともに、仕事連動型・教育サービス「Lancers Digital Academy」を含む3つのサービスを軸にした新事業戦略発表会を開催した。発表会では、同社が2015年より実施している「フリーランス実態調査」の2021年度版の内容も発表し、海外フリーランス市場の動向の解説も行われた。

新事業戦略の推進にあたって、同社は「すべてのビジネスを『ランサーの力』で前進させる」、「誰もが自分らしく才能を発揮し、『誰かのプロ』になれる社会をつくる」という、企業と個人それぞれに向けたデュアルビジョンを新たに掲げた。

ランサーズ 代表取締役社長 CEOの秋好陽介氏は、「創業以来、『個のエンパワーメント』をミッションとしているが、2つのビジョンで企業の中の個人と働く個人、2つの個をエンパワーメントしたい。当社はこれまで、フリーランスの報酬獲得の領域にコミットしてきたが、今後はフリーランスが報酬を得る前、そして得た後も誰かのプロになり続けられるようなサービスを提供していきたい」と語った。

  • ランサーズ 代表取締役社長 CEO 秋好陽介氏

ビジネスサイド(企業)がフリーランスとビジネスを推進していくにあたっては、「優秀なビジネススキルを有するフリーランスになかなか出会えない」「ディレクション、プロジェクトマネジメントが難しい」「大規模で継続的なチームを組めない」という3つの課題があったという。同社はそれらの課題の解決に向けて、既存の「Lancersパッケージ方式」や「Lancers Teams」に加えて、「Lancers Digital Academy」を新たに提供し、3つのサービスを軸に事業を展開する。

  • ランサーズは3つのサービスを軸に事業を展開する

「Lancers Digital Academy」は2022年1月から提供を開始する仕事連動型の教育サービスだ。同サービスでは、受講生に対してデジタルスキルの習得やスキル向上につながる教材の提供から、得られたスキルに関連する仕事の紹介までを実施する。

ランサーズプラットフォームデータベースにおける200万件以上の案件データを元に、独自の市場調査部門によるリサーチと、需要予測アルゴリズムにより、需要が拡大していくデジタルスキルを選定。受講生が使用する教材は、さまざまなデジタル分野の業界トッププレイヤーが監修・制作する。

また、受講生がスキルを習得したことを示す「デジタルバッジ」も付与する。バッジは課題やレポートの総合成績によってランク分けされるため、バッジがスキルの習熟度を示しつつ、クライアント企業への直観的なスキル訴求にもつながる。

仕事・案件の紹介にあたっては、受講生ごとにパーソナライズされた専任コンシェルジュがサポートを行う。

  • 「Lancers Digital Academy」の特徴

2020年5月からはShopfyでモデルケースが稼働しており、同サービスの教育プログラムを受け、「Shopifyエキスパート」のデジタルバッジを獲得したフリーランスエンジニアが2021年1月から案件を継続受注している。

「Lancersパッケージ方式」は11月8日にフルリニューアルした、Webシステム開発、SNS運用、印刷物・DTPなど、ビジネス領域の案件に特化したスキルシェアサービスだ。350種類以上のビジネスカテゴリーとともに、「ベーシック」「スタンダード」「プレミアム」といったように作業内容と金額ごとに分かれたパッケージプランが用意されたので、フリーランスが自ら要件定義や金額を設定せずにスキルの出品を行えるようになった。また、パッケージプランにより企業もスキル確認や見積もりを行わずに案件を発注できる。

「Lancers Teams」は、企業が必要とするスキルや要件に応じたエンジニアをあらかじめ同社の人材データベースから抽出し、プール(確保・管理)しておけるサービスだ。企業はプロジェクトの運営状況に合わせて、人材プールを基に自社専用の第2、第3の開発チームを外部に構築できる。面談を通過している人材をストックしておき、数時間からの稼働も依頼できるうえ、、面談プロセスや契約履歴も残せる。

同社が実施した「新・フリーランス実態調査 2021-2022年版」と米国のフリーランス市場の動向については、ランサーズ 取締役の曽根秀晶氏が発表した。

  • ランサーズ 取締役 曽根秀晶氏

曽根氏は、「米国では労働市場の流動化が進み、企業側のフリーランス活用以降がコロナ前より拡大したこともあり、労働人口の36%がフリーランスとなっている。驚くことに、18歳から22歳のZ世代の過半数が、副業・兼業含めてフリーランスとして働いた経験があることがわかった。米国ではフリーランスとして働く選択がマジョリティになりつつあると言え、今後もその傾向は続くと考える」と述べた。

『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』は、同社がインターネット調査にて約4万人の市場調査を事前に行ったうえで、2021年9月30日から10月4日にかけて3094人に行った調査結果と、総務省が毎年出している労働力人口とインターネット利用率からフリーランスの人口や経済規模などを推計したものだ。

同調査結果によれば、2021年10月時点で日本のフリーランス人口は1577万人、経済規模は23.8兆円になるという。また、調査対象者のうちオンラインで働くフリーランスの方が、そうでないフリーランスより報酬が10万円ほど多く、働く時間が週に1時間短かった。

また、「過去や現在にマネジメント経験がある」と回答した人は30%いて、20代から40代の多くがプログラミングや動画編集、Webデザインなどのデジタルスキルの習得を希望しているという。一方で、現在仕事に活かしているスキルとして接客スキルを挙げる人が多かったため、曽根氏は「習得を希望するデジタルスキルを身に付けている人はまだ少数派であり、今後はデジタルスキルのリスキリング(学び直し)が広まると考えられる」と結論づけた。